第5話 少女、城を出てギルドへ向かう
目の前の少女から発せられているとは思えない、濃密な殺気に兵達は怯んでいた。
「で?私と殺り合う覚悟のある人はいるのかしら?」
その言葉に動けるものはいない。動けば殺られるのがわかっているからだ。
ふーん、動いたらダメなのがわかっているのね。だけど、
「殺り合う気が無いのならさっさと下ろしてくれる?でないと、死んじゃうわよ?」
先程より、強めに殺気を放つとようやく下げた。
「下ろすなら早くしてくれればいいのに。余計な労力を使ったじゃない。で?私は自由にしていいのよね?」
私がそう言うと王様は、怯えながら口を開いた。
「う、うむ。良いだろう。」
よし。許可が出たわね。これで心置き無く出れるわ。じゃあ早速外に、
「待たれよ!」
声を掛けられた。この状況で止める人物がいるのかしら?
「何?私今から城を出ようとしていたんだけど?」
私が不機嫌そうに言うと
「すまない。私はこの国の騎士団の団長をしているもので、アーサーという。私のわがままで申し訳ないが手合わせを頼めないだろうか?」
なるほど、武人気質の人ね。さっきの殺気で私が強いと感じたのね。
「いいわよ。ただし殺す気で来なさい。」
私はそう言うとアイテムボックスから愛刀の茜吹雪を取り出した。
「かたじけない。」
アーサーはそれだけ言って背中の大剣を構えた。
そして、
「疾っ!」
先にアーサーが動いた。大剣とは思えないスピードだ。だけど私にとっては遅い。
私は右手に持った茜吹雪をアーサーの剣に当てるように振り抜いた。
カランカラン
金属質の音が部屋に響く。
「いい剣だったけど、あなたの技術が追いついてないわね。騎士団長という立場で甘えてないで、もう一度自分を見直しなさい。」
アーサーの持っていた剣は真ん中から切断されていた。それに対して私の持っている大太刀には傷一つ付いていない。
「それじゃ私は行くわね。これ以上関わりが増えないことを祈るわ。」
そう言って私は城を出た。
城を出るとそこは賑やかな城下町だった。
王国アルテミア
この世界で1、2を争う大国である。過去アルテミスという神がこの地に降り立ったことからこの名がつけられた。行商等が盛んであるが、戦略としても騎士団の力が強く他国の侵略を阻止してきた。
「さて、ここが本当に異世界なら冒険者ギルドくらいあるわよね。まさか部下からの知識が役に立つとは思わなかったけど。」
「えーと、ここら辺で大きな建前は・・・あっちね。」
スキルのひとつの千里眼を使いながら、この辺で1番大きな建物へと歩き出した。
歩いてる最中、いつくかの発見があった。
ひとつは奴隷だ。世界が違うので当たり前といえば当たり前だが、元の世界には無かったもの。奴隷など反吐が出るが、ここでは合法となっているので手を出すことが出来ない。
もうひとつは魔法だ。ここでは科学ではなく、魔法が発展している。そのため色々なところで魔法が見られる。そのうち私も覚えようと思う。魔力はあるはず・・・
などと考えていると目的の建物に着いた。予想通りここが冒険者ギルドのようだ。王都なのか分からないが大きい建物だ。
ちょっとした興奮を抑えつつギルドの扉を押した。
中に入ると様々な装備をつけた冒険者らしき人達が見られた。やはり異世界なのか見た事のない素材で作られているものが多々ある。
ここで生活する上でお金は欠かせないので、受付へ移動した。
「すみません。冒険者になりたいのですが?」
そう言うと、猫耳の受付が
「新規の方ですね!では登録致しますのでこちらの水晶に手を置いてください。」
「分かりました」
言われた通りに水晶に手を置くと、
水晶が砕け散った
「「え?」」
受付嬢と声が被ってしまった。
しかし、この水晶高そうだったけど大丈夫かな?弁償とか今無理よ。
「えっと・・・これって、弁償ですかね?」
「えーと私の方もこんなことは初めてでして、ちょっとギルマスに確認してきますね。」
まさかのギルマス行きである。
それからしばらくして
「お主が水晶を砕いた本人であってるかね?」
ギルマスが階段から降りて来た。
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