第4話 少女が死神と呼ばれるわけ 3

 最初に近くにいた警備隊の隊員の頭が吹っ飛んだ。次に盾を持っている者の首がねじれた。銃を向ける者もいたが構えた瞬間に腕が変な方向に曲がっていた。ナイフを振りかざす者もいたが返り討ちにされ、ナイフを奪われた。


 そうして警備隊は全滅した。生きているものはいない。死神はナイフを片手に、


「この程度?私に、妹達に酷いことをしておいて、この程度?」


 その時通路に声が響いた。


「37564番何している!?何故こんなことをした!?」


 そう約束を破ったあの男だ。妹達を殺したあの男だ。


「あら、わざわざそっちから来てくれたのね。探す手間が省けたわ。」


「何をしていると聞いているんだ!」


「見て分からないの?殺してるのよ?」


「何故そんなことを!」


「分からないの?あなた達は約束を破った。私が犠牲になる代わりにあの子達を助けるという。」


「私は手を出していないはずだっ!」


「それ、本気で言ってるの?あなたは手を出さなかったらいいの?あなたじゃなかったらいいの?そんなわけないわよねぇ?あなたは止めるべきだった。そうすればこんなことにはならなかった。この施設の人間全員が死ぬことはなかった。研究とやらが途切れることはなかった。全てはあなたが招いた結果よ。」


「なっ!」


「で?無駄話は終わり?」


「ッ!!撃てっ!最早殺しても構わん!」


 白衣の男がそう言うと後ろに控えていた者達が一斉に撃ち始めた。


 それで終わりだと誰もが思った。だが、急に最後尾にいた者が首から血を吹き出しながら死んだ。


 ありえない、ありえるはずがない。自分達は弾幕を張っていたのだ。どうやってそれを抜けてきた?弾は当たらなかったのか?それとも自分達が標的を間違えたのか?各々がそう思いながら後ろを振り向いた、そしてそこには


 血にまみれた白髪の死神が立っていた


「ひぃっ!」


 誰かが悲鳴をあげた、いやむしろ複数かもしれない、それだけ恐ろしかったのだ。


「もう止めちゃうの?もっと撃ってもいいのよ?それが当たるかは知らないけど。」


 その言葉をきっかけに一斉に逃げ始めた。


 死にたくない。


 そう思いながら、逃げていた。だがその思いは届くことはなかった。


 逃げた先には回り込まれていた。そして


「誰が逃げていいと?言ったはずよ、皆殺しと」


 決して逃げられない。分かっていながらも身体は動いてしまう。そうしている中、1人また1人と消えていく。数刻も経たぬうちに1人を残し全滅した。


「さて、残ったのはあなただけになったわね。」


「わ、私を残してどうするつもりだ?」


「鍵よ」


「は?」


「聞こえなかったの?鍵と言ったのよ。この施設を自由に移動するためのね。言っとくけど拒否権はないわよ?暴れるなら手足を切り落とす。五体満足で死にたかったら大人しくすることね。」


 狂っている。


 きっと男はそう思っただろう。事実、少女は狂っていた。もはや少女の中に優しさ、慈悲といったものは残っていない。あるのは敵かどうか。敵であれば殺す、敵でないのであればどうでもいい。最早、普通の人としては生きていけないだろう。だが、少女にはどうでもよかった。なぜなら、


「さぁ、あなた達の大好きな実験の時間よ。実験の内容は最高傑作をどう殺すか?殺せない場合は死ぬだけよ。あなた達はどうするのかしらねぇ?私という最高傑作を殺すのか?それとも何も出来ずに私に殺されるのか?まぁ、せいぜい楽しみなさい。」


 人では無いことを知っていたから。


 こうして、死神が世界へ放たれた。少女のことが世界に知れ渡るのはもう少し先のことだが、


 白髪の少女を見たら気をつけろ。敵と認識されれば殺される。


 という噂が広がり。いつしか《白の死神》と呼ばれるようになった。

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