第3話 少女が死神と呼ばれるわけ 2
「え?」
少女の口から間抜けな声が漏れた。すると急い来たのか先程の白衣の男が息を切らしていた。
「はぁ、はぁ、君が急に走るからこっちまで走ることになったじゃないか。」
「ねぇ、あの子達は!?さくらは!?」
少女は白衣の男に問い詰める。すると白衣の男は
「何を言ってるんだい?あそこにいるじゃないか?」
白衣の男は箱を指差しながら言った。そして続けて、
「私はあの子達に何もしないと約束したが、他の者は約束していないからね。我々の夢のために使わせてもらったよ。ただ君がここまで頑張るとは思っていなかったから処分したはずのものを、急いで集めたんだよ。感謝して欲しいね。」
まるでめんどくさいと言わんばかりに白衣の男は言った。
少女は箱に向かった。そんなはずはないと。きっと何かの間違いだと。
だがそんな少女の願いは砕かれた。箱の中にみんなで作ったブレスレットが入っていたからだ。
その瞬間少女は壊れた。
「ああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ!?」
「私ね、ここを出たらみんなで色々なところに行きたいの。」
嘘だ
「ねぇねぇ、おねぇちゃん。わたしね大きくなったらおねぇちゃんみたいになりたい!」
嘘だ嘘だ
「わたし、このおかし?食べてみたい!」
嘘だ嘘だ嘘だ
「わたしは、おはなみてみたい!」
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
「ねぇちゃん、なまえかっこいいだろ?なんかくらいところのなまえらしいんだ!」
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
「え〜なんでくらいところなの?だったらあたしはあかるいところのなまえにする!」
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
「ふむ、お気に召さなかったかね?」
そう白衣の男は言った。
「お前の、お前たちのせいで!」
そう言って少女は掴みかかるが、体格差があるためにすぐに取り押さえられた。
「おっと、荒事はいけないよ。君は我々の最高傑作なのだから。」
そう言いながら白衣の男は少女の拘束を強めた。
そうして少女の意識は闇に落ちていった。
次に目覚めた時、少女は鎖に繋がれていた。手も足も満足に動かせない。恐らく暴れ出さないようにされているのだろう。だがそんなこと少女にはどうでもよかった。生きる意味を失ったのだ。妹達のために耐えていたが自分が知らないうちに、実験に使われていた。そう考えると死にたくもなる。だが死ぬことは少女の身体が許さなかった。実験を耐えきったせいで、少女の身体は不老不死に近いものになっていた。
少女は生きる意味を失っていた。
数日呆然としていた。
少女は組織を恨んだ。
少女は世界を恨んだ。
少女は神を恨んだ。
何故こんな目に自分達があわなければいけないのかと。
そして少女の中には黒い感情しか残らなくなった。ただ1つ
《殺す》
と。
人の脳は自身の身体を傷つけないように制限がかかっている。その制限を外すとどうなるだろう?ましてやそれが傷ついてもすぐに治る身体の持ち主だったならば?
そうして、世界に死神が降り立った。
死神は自らを拘束している鎖を引きちぎった。その際いくらか損傷したがすぐに治った。異変に気づいたものがいたが、その者は吹き飛ばした鉄扉の下敷きになって死んだ。
拘束していた扉が破られたことにより、施設の中には警報が鳴り響いていた。警備隊が駆けつけて来るがそんなものは関係ない。
「何?私を捕まえに来たの?そんなことしなくてもいいわよ。だって今からここにいる人間皆殺しにするのだから!」
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