第2話 少女が死神と呼ばれるわけ 1

 その瞬間、兵たちにこの世のものとは思えない悪寒が襲った。それもそのはず、彼らが武器を向けた相手は死神と言われ恐れられていた存在だからだ。


 物心ついた時には既に、彼女は実の両親に売られていた。彼女が売られたのは、人体実験を繰り返す非人道的な組織だった。組織の夢はを生み出す、ただそれだけだった。そのためには何人死のうが関係ない、そんな狂人が集まっていた。


 その中に少女ないた。周囲には自分と似たような子もいる。孤児だった者、拐われた者、自分と同じ親に売られた者、そんな者達がここにはいた。そして少女達は家族のようになっていた。そんな関係になって数年がたった。


 少女達はいつものように何気ない会話をしていた。ここを出たら何処に行こう、何を食べよう等そんな内容だ。だが、少女達は知らなかった。ここで何が行われているかを。そして、過去実験に使われた子達は帰って来ていないことを。


 ある日、横の部屋の子が連れて行かれた。話を聞くに実験に使われるらしい。


 次の日、また1人連れていかれた。前に連れていかれた子は処分されたと話しているのを聞いた。


 また次の日、今度は2人連れて行かれた。


 次の日もまた1人連れて行かれた。


 少女達は不安を抱くようになっていた。横の部屋の子達が居なくなれば次は自分達だと気づいたからだ。夜泣き出す子が増えた。怖いのだ。連れて行かれた子は戻ってこない。自分も同じようになるのではと。


 少女達の部屋には2人、姉のような存在がいた。そのうちの1人がある日、こんなことを言った。


「大丈夫だよ。私がみんなの分まで頑張るから。私があの人達に言うから。」


 その少女は笑っていた。狂ったからでは無い。自分を姉と慕ってくれる子達を不安にさせないように。自分の中にある恐怖を消すように。


 少女達に名前は無い。いつも番号で呼ばれていた。ある日、1人の子が本を読んでいる時に自分も名前が欲しいと言い始めた。それに賛同する子達が多かったため、みんなで名前を付け合った。


 こおり


 さくら


 ひまわり


 すみれ


 ひなた


 よい


 あかり


 図鑑が多いためか花の名前が多くなったが、初めての名前でみんな喜んでいた。


 そして身代わりになると言った少女はだった。後のことは自分と同じように姉と慕われているが何とかしてくれると思っていたからだ。


 そんなことをしているうちに、少女達の部屋の番が回ってきた。白衣を着た男が部屋に来た時、こおりが


「私が全部受けるからこの子達には何もしないと約束して。」


 それを聞いた後白衣の男は考える素振りをした後、


「いいだろう、君が我々の実験に耐えている間は何もしないと約束しよう。」


 こうして、地獄は始まった。


 ある時はよく分からない薬品を身体に入れられ、またある時は血のようなものを入れられた。その度に少女は絶叫し、血を吐き出していた。それでも少女は耐えた。自分が死んでしまうと、次は妹達になると分かっていたからだ。何回心臓が止まりかけたか、喉が潰れたか、いつの間にか少女の髪の色は白くなり、身体に入れられた薬品の影響が先端だけ青くなっていた。


 そしてある日を境に少女の身体は、今まで行われた実験に反応を示さなくなった。つけられた傷はどんなに酷いものでも数日で治り、あらゆる毒物に耐性がついていた。その時あの時の白衣の男がやって来て、


「おめでとう。君は実験の最初の成功者だ。我々から君にプレゼントとして、君と同じ部屋にいた子達に会わせてあげよう。」


 それは少女にとって待ちに待ったものだった。妹達に会える。それだけで少女の受けた地獄のような日々は報われるはずだった。少女は急いで自分達の部屋へと向かった。そして部屋を開けると、















 部屋には妹達の姿はなく、6つの箱が置かれていた。

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