第44話

「んんー、美味しい! このパン、凄く甘いですね」

「小麦粉ではなく、米粉というのを使っているんですよ」

「もちもちにゃあ」

「うん、もちもちしてるね」


 この地方では、米農家が比較的多いらしい。

 だけどこの国の主食はパンで、米の価格は低い。そのせいで米から小麦栽培に変更する農家が増えてきたんだとか。


「私の父が米農家で、何か出来ないかと思って」

「そうなんですか。お米の価格は小麦より低いですし、低価格で提供するならきっと繁盛しますよ」

「そう言っていただけると、自信が湧きます。実は米粉パンを人に食べさせたのは、あなた方が初めてなんですよ」


 そう言って奥さんは嬉しそうに笑った。

 お世辞抜きでこれは本当に美味しい。噛めば噛むほど甘味が増していく。

 小麦粉を使ったパンも焼くそうで、こちらのパンもいくつか頂いた。


「ではお気をつけて」

「はい。お店、頑張ってください。そうだっ、帰りにまた寄ります。随分と先になるだろうけど。その時にまた、米粉パンを頂けますか?」

「えぇ、お待ちしていますよ」


 フリーンウェイへ戻る時にパンを貰って、ダンジョンへ持っていってやろう。


 バスケットごとパンを貰い、それを空間収納袋へ入れて出発した。

 お昼が待ち遠しい。


「お昼はまだかにゃ~」

「お昼はまだもなにも、今朝ごはんのパンを食べたばかりだろ」

「うにゃあぁぁ」

「ほんと、もちもちして美味しかったわ」


 ルナが普通に喋ってくれた!

 いや、ここは普段通りにしなきゃな。


「そそ、そうだね。ほ、他の町のパン屋さんでも、ここ、こ、米粉パンが流行るといいねぇ」


 ぐああぁぁぁぁ。これじゃあ挙動不審者だよ!

 

「……ぷっ」

「え、ルナ、笑った?」

「!? べ、別に笑ってないもんっ」


 笑ったじゃん。


「ふふ。嘘、笑った」

「やっぱり!」

「ごめんなさい。私がひとりで浮足立ってるだけなの。ロイドは気にしないで」

「浮足立つ? なにかいいことでもあったのかい?」

「ひゃっ。え、あの、その……い、いいことがあった訳じゃないんだけど、あの……内緒っ、教えないんだからねっ」


 教えてくれないらしい。

 そう言われてしまったら仕方ない。無理に聞き出そうとすれば、機嫌が悪くなるだろうし。


「あぁ、でもほんと、あのパン美味しかった。ねぇ、袋の中に入れてたら焼き立てのままなのよね?」

「え、うん。そうだと思う、よ?」

「硬くならなきゃいいんだけど」

「もちもちがいいにゃ~」


 まぁそれはお昼になったら分かるだろう。


 町を出て南東の方角へ伸びる道を進む。乗合馬車が寄る町まで二日の距離だ。

 来た道を一日引き返してレゾの町に向かえば、その分早く馬車に乗れる──とも行かない。

 ギルドマスターがコポトの故郷、ポポロの町までの工程を調べてくれたけど、引き返してレゾの町へ行っても、馬車の到着まで一日待つことになるって。

 だったら二日歩いて次の町まで行った方が、運賃が安くなって良い。


 そして待ちに待ったお昼!

 草の上に敷物を敷いて、バスケットを──


「待ってロイドっ」

「え?」


 突然ルナが俺を制した。もしかしてモンスターが近寄る音でも?


「袋から出したら、堅くなり始めるかもしれないわ。夜の分も柔らかいままの方がいいもの。パンだけ掴んで取り出せない?」

「あ、あぁ、そういうことか。ビックリした」

「え?」

「いや、急に待てっていうから、モンスターが来てるのかと思って」


 するとルナは耳をパタパタと動かして「いないわよ」と。


「パンだけ、パンだけっと。あった」


 取り出したい物のことを考えると、勝手にそれが手に触れる。

 だけどパンの種類までは流石に選べないな。


「まだ温かい」

「ほんとだわ。ね、バスケットごと取り出して、食べている間に冷めちゃったら勿体なかったでしょ?」

「うん、その通りだ。俺だと気づけなかったよ」


 俺だけだった場合、次に食べるパンは硬くなっていただろうな。

 

「小麦のパンも美味しい。これならきっと、繁盛するわね」

「でもあの場所じゃーダメにゃ」

「にゃびが、あの場所だとダメだろうって」

「そうね。通りは狭かったし、薄暗かったもの。あそこじゃ、あの通りに住んでいる人の目にしか付かないもの」


 でもブレンダが残したお金で、少しでも大きな通りで店を構えればきっとうまくいく。

 こんなに美味いんだもん。

 

 昼食後はすぐに出発し、夕方には暗くなる前に野宿する場所を探す。

 一日目はモンスターと遭遇することもなかったが、その夜の野宿ではさすがに出てきた。

 交代で見張りもしていたし、にゃびは夜でもよく見える夜目を持っている。ルナも人間族よりはやや見えやすいそうだ。

 おかげで一方的に襲われることもなく朝を迎えられた。


「夜に出てくるモンスターの方が、経験値が多いのかな。一晩で二人のレベルは3上がったよ」

「経験値って、弱い敵を倒しても貰えるのかしら?」

「うぅん、そこは分からないんだけど、ただ弱い敵だとレベルが上がりにくくなるよ」


 実際、スライムでは限界があったし。

 弱いモンスターからは経験値が貰いない、もしくはレベルアップに必要な経験値が多すぎてなかなか上がらない。このどちらかだろう。

 後者の場合、モンスターから貰える経験値も、多い少ないがあるってことにもなる。

 ま、その両方ってこともあるんだけどね。


「おいにゃは二刀修練を上げて欲しいにゃ」

「了解。これで9だ。レベル10で上限かな、それとも15かな」

「スキルによって上限になるレベルがまちまちね」

「うん。プチ・バッシュが15で上限だったし、それが最大なのかなとは思うけど」


 確かめる手段はある。


 俺のスキルポイントを使って、プチ・魔力強化を3上げる。


「あれ? 上限って文字が付かない」

「強化系はまだ上げられるってことかしら」

「スキルポイント、全部振るにゃか?」


 おいおい、さすがにそれは……。

 でももう5振ってみよう。


 ……うん。レベル20でも上限にならないようだ。





【名 前】ロイド

【年 齢】16歳

【種 族】人間

【職 業】見習い魔術師 レベル39 +


【筋 力】392+140

【体 力】392+140

【敏捷力】392+140

【集中力】392+140

【魔 力】392+140

【 運 】392+140


【ユニークスキル】

 平均化


【習得スキル】

『プチバッシュ レベル15上限』『プチ忍び足 レベル10』『プチ鷹の目 レベル1』

『プチ・ヒール レベル10』『プチ・ファイア レベル10』『魔法操作・味方認識 レベル1上限』


【獲得可能スキル一覧】+


【獲得スキル】

●強化系スキル

『筋力プチ強化 レベル10』『魔力プチ強化 レベル20』

『体力プチ強化 レベル10』『敏捷力プチ強化 レベル10』

『集中力プチ強化 レベル10』 『運プチ強化 レベル10』


●アクティブスキル

『プチ・バーストブレイク レベル10』『プチ・スラッシュ レベル10』

『プチ隠密 レベル10』『プチ・ブレッシング レベル10』

『プチ・アイス レベル1』『プチ・サンダー レベル5』

『プチ・ロック レベル10』『プチ・カッター レベル10』

『プチ・ファイアストーム レベル10上限』

『プチ・ロックウォール レベル10上限』


●パッシブスキル

『見習い職業時の獲得経験値増加 レベル10上限』

『魔法操作 レベル5』『スキルポイントアップ レベル1上限』



【ステータスポイント】0

【スキルポイント】60


*******●パーティーメンバー*******


【名 前】ルナリア

【年 齢】16歳

【種 族】兎人

【職 業】斥候 レベル6 +



【筋 力】57

【体 力】60

【敏捷力】491

【集中力】495+50

【魔 力】26

【 運 】13


【習得スキル】


【獲得可能スキル一覧】+


【獲得スキル】

『射速 レベル5』『標的認識 レベル5』『ツインアロー レベル10上限』

『集中力強化 レベル10』『インパクトアロー レベル10上限』


【ステータスポイント】0

【スキルポイント】5


------------------------------


【名 前】にゃび

【年 齢】35歳

【種 族】ネコマタ

【職 業】ロイドの従魔・斥候レベル6 +


【筋 力】187

【体 力】85

【敏捷力】560

【集中力】50

【魔 力】479

【 運 】443


【習得スキル】

『月光の爪 レベル15上限』『夜目 レベル10上限』『忍び足 レベル10上限』

『弱点看破 レベル1上限』『爆連 レベル4』


【獲得可能スキル一覧】+


【獲得スキル】

『風のマント レベル10上限』『紅い月 レベル10上限』『鋭利な爪 レベル5』

『影 レベル10上限』『肉球もみもみ レベル3』『二刀修練 レベル9』


【ステータスポイント】0

【スキルポイント】0




 俺のレベル……上がらないなぁ。

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