第3話:経験値アップ

「『見習い職業時の獲得経験値増加』? 経験値って、レベルを上げるのに必要な?」


 見習い職業の時に限り、経験値が増えるってことか。

 見習いなら俺にとっておあつらえ向きだ。選択できる職業は見習いばかりだしな。


「貴重なスキルポイントだけど、このスキルを取ればレベルが上がりやすくなるだろう」


 レベルなんて神殿で調べて貰わなきゃ分からない。

 調べて貰うのにかなりのお金を払う必要があったけど。

 それがこんなに簡単に分かるとは。


 このステータスボード、ほんと凄いな。

 でもなんでこんな所に?

 ボスモンスターのドロップっていうなら分かるけど。


「とにかくスキルを取るか。それから……」


 この部屋には入口が一つだけ。あー、天井にもあるけどあれは無理だ。

 入り口には扉があって、外の様子は分からない。


「お、のぞき窓があるな。えぇっと……はぁ、マズいな」


 扉の向こうの通路はわりと広い。

 ダンジョンあるある──通路が広い場合、その階層に生息するモンスターのサイズは大型なものが多い。

 大きい奴は強い。これもダンジョンの常識だ。

 この広さの通路だと、大型まではいかなくても、中型は確実に出るよな。


「仕方ない。職業を見習い魔術師にセットして──」


 ダンジョンあるある2。

 どんなダンジョンのどの階層でも生息しているモンスター。

 ──スライムだ。


 スライムは死体を喰う。

 モンスターの死体じゃない。それ以外の生き物の、だ。

 死体を喰うことでスライムは強くなる。


 発見されたばかりのダンジョンだから、ここのスライムたちはまだ何も喰ってない。

 つまり……


 雑魚だ。






「発見。"プチ・ファイア"」


 覗き窓からスライムが見えたら、少しだけ扉を開けて火のスキルを使う。

 予想していたけど、プチ・ファイア一発でスライムは弾けて地面に吸いこまれた。


 ダンジョンモンスターが死ぬと、地面に吸収される。そしてまた、同じ階層のどこかに復活する。

 あのスライム、近くに復活してくれるといいな。


 スライムは移動速度が遅いから、なかなか遭遇出来ない。こっちが移動していれば別だけど。

 でも部屋から出る訳にもいかないし、ひたすら待つしかない。


 ようやく五匹のスライムを倒してステータスボードを呼び出す。

 ステータスボードと言えば出てくるし、閉じるときは枠の右上にある×マークに触れればいい。


「お、見習い魔術師のレベルが5に上がってるな。それにステータスも増えてる」


 レベルが上がると左側の基本数値も上がるのか。

 まぁそうだよな。




【名 前】ロイド

【年 齢】16歳

【種 族】人間

【職 業】見習い魔術師 レベル5 +


【筋 力】30+4

【体 力】30+4

【敏捷力】30+4

【集中力】30+4

【魔 力】30+4

【 運 】30+4


【ユニークスキル】

 平均化


【習得スキル】

『プチバッシュ レベル1』『プチ忍び足 レベル1』『プチ鷹の目 レベル1』

『プチ・ヒール レベル1』『プチ・ファイア レベル1』


【獲得可能スキル一覧】+


【獲得スキル】

『筋力プチ強化 レベル2』『見習い職業時の獲得経験値増加 レベル1』


【ステータスポイント】4

【スキルポイント】4




「スキルポイントとステータスポイントも増えたか」


 増えたのはそれぞれ4ポイントずつ。

 ってことは、職業レベルが1上がると、ポイントも1増えるってことでいいのかな?


 さて、じゃあ検証だ。

 筋力のステータスを1だけ上げる。

 31+4だ。

 文字がぼやけて、元に戻ると全部のステータスが31+4に。

 また筋力を1だけ上げる。今度は32+4。

 そして全部が32+4に。


「面倒くさいけど、1ずつ上げていくしかないな」


 四回やってステータスは34+4。

 次はスキルだな。

 ステータスを底上げするために魔力プチ強化でも取る?


 いや、経験値増加の方がレベルが早く上がっていいかもしれない。

 よし。




【名 前】ロイド

【年 齢】16歳

【種 族】人間

【職 業】見習い魔術師 レベル5 +


【筋 力】34+4

【体 力】34+4

【敏捷力】34+4

【集中力】34+4

【魔 力】34+4

【 運 】34+4


【ユニークスキル】

 平均化


【習得スキル】

『プチバッシュ レベル1』『プチ忍び足 レベル1』『プチ鷹の目 レベル1』

『プチ・ヒール レベル1』『プチ・ファイア レベル1』


【獲得可能スキル一覧】+


【獲得スキル】

『筋力プチ強化 レベル2』『見習い職業時の獲得経験値増加 レベル5』


【ステータスポイント】0

【スキルポイント】0




 さて、スライム狩り再開を行きますか。

 狩りを再開して二匹目のスライムを倒した時だ。


 そいつが死んで地面に吸収されたあと、瓶が一本残った。


「水瓶か!? 死体を一度も消化していないスライムからドロップするってのは、ギルドの講習で聞いたけど」


 本当だったんだな。


 水……欲しい。

 穴から落ちて、たぶん二、三時間は経ってるはず。

 この先の事も考えると必要だ。


 背負い袋はルイックに持っていかれたし、今あるのは腰のポーチだけ。

 中に入っているのはもしもの時用のポーションが一本、非常食の堅パン三つと干し肉の欠片一つ。

 水はない。

 そろそろ喉も乾いてきた。


「周りに他のモンスターは……いないな」


 スライムならいいけど、他のモンスターがいたんじゃ拾いにいけない。

 一定時間が過ぎればドロップアイテムも消えてしまう。

 拾いに行くなら今だ。


 扉を開けて水瓶に向かって駆ける──ん?

 なんか、ブレッシングを付与した時みたいに体が軽い。

 ステータスが上がったおかげか!?


 スライム狩りを再開して、今度はゼリーをドロップ。

 これも死体を消化していないスライムだけが落す、冒険者にとってもしもの時の非常食だ。

 

 元のステータスからだと約15ぐらい上がったんだよな。

 ステータスプチ強化系スキルを上げていけば、ここから出ていくことも出来るかもしれない。

 スキルはどれでもいい。どうせ全部が底上げされるんだからな。


 見習い魔術師を10まで上げて『魔力プチ強化 レベル5』に。




【名 前】ロイド

【年 齢】16歳

【種 族】人間

【職 業】見習い魔術師 レベル10 +


【筋 力】44+14

【体 力】44+14

【敏捷力】44+14

【集中力】44+14

【魔 力】44+14

【 運 】44+14


【ユニークスキル】

 平均化


【習得スキル】

『プチバッシュ レベル1』『プチ忍び足 レベル1』『プチ鷹の目 レベル1』

『プチ・ヒール レベル1』『プチ・ファイア レベル1』


【獲得可能スキル一覧】+


【獲得スキル】

『筋力プチ強化 レベル2』『見習い職業時の獲得経験値増加 レベル5』

『魔力プチ強化 レベル5』


【ステータスポイント】0

【スキルポイント】0




 ステータスボードを弄ったあと部屋の中で動いてみたが、めちゃくちゃ体が軽い。

 このまま続けて行けばダンジョンの脱出も可能かも?

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