第一章 第一話 新皇帝の誕生/始まりの詩

 巨大なヘーデン大陸の上空には、『赤陽』と『青陽』、二つの太陽が昇る。


 一際赤く一際大きな、しかしとても暗い赤陽がほぼ真上、天空の頂点まで昇り切った。

 その赤陽の見た目の姿は年々大きくなっているようで、今や全天のおよそ八分の一を占めるまでとなっている。


 他方、真っ白と言うよりは少し青みがかった、そして見た目の大きさが赤陽の百分の一と、かなり小さめながら、しかし千倍は目映く輝く青陽がもう間も無く、西側の地平線の向こう側に沈もうとしている。


 神話と呼ばれる太古の言い伝え、口伝によると遥か昔、赤陽は今の青陽と同じ大きさ若しくはやや小さく見え、明るさも青陽と同じ、或いはもっと眩しく、色も深い赤色ではなく、爽やかな黄色がかった白色だったと言う。


 しかし人々の文明が、ようやく書物に歴史を刻み遺し始めた頃までには、赤陽は急激に赤く、そして巨大化し、より一層暗くなっていったのだ、と言う。


 だが、その理由を知るものは何処にも居らず、語り示すものは何一つ、無い。


 ◇ ◇ ◇


 巨大なヘーデン大陸の中央から西側に寄せた場所に、豊富な水量を湛えるユングバリ湖が広大な範囲に楕円形で拡がり、その湖上、西側の湖岸に寄り添うように、背の低い円錐形状のレーベンアドレ島が浮かんでいる。



 辺り一面が淡い朱色から深い赤色に染まろうとしているイメルント帝国が治める領土は、ユングバリ湖の周囲、全周の湖岸とその周辺地域に大きく拡がり、その首都に当たる帝都クラリサはレーベンアドレ島に在り、周囲の湖水に護られるようにして繁栄してきた、二万人を超える人の営みがある要塞都市である。


 その帝都クラリサの中央地区、円錐形状のレーベンアドレ島の一番高い頂上には、遥か彼方の大空を衝かんばかりに聳え立つ、『神聖なるブリドドーラ』と呼ばれる石造りの白亜の巨塔が建てられている。


 この石造りの白亜の巨塔は『神の舞台』と呼ばれる、巨塔を中心として南側に扇状に拡がる、人の身丈の十五倍を超える高さ、そして人の身丈と同じくらいの半径を持つ、半円筒形の石造りの建造物、その上に建てられている。


 そして『神の舞台』は『人の舞台』と呼ばれる、巨塔を中心として南側に扇状に拡がる、人の身丈の二倍を超える高さ、そして人の身丈の七倍程の半径を持つ、半円筒形の石造りの建造物、その上に建てられている。

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