第47話

 2人の誕生日会から3ヵ月経ち12月となった。俺も11歳となって、今日から、俺もマルチプレイヤーを目指す為に本格的に魔法と魔法剣を使った実技へ入る。


「それでは魔法剣の説明に入いろうか。私の陛下から下賜されったレッドムーンは希少魔金属の非緋色金で出来ていて、最大で3つの魔石がセット出来るようになっている」


シャロンさんの剣を見てみると、柄の上部には一見ビー玉に見える3つの魔石が埋められていた。剣に嵌める魔石の大きさは統一規格があるそうだ。


『ミスリルがあるのは知っていたけど、非緋色金もあるのか…オリハルコンもひょっとしたらあるんじゃないか?』


「現在、私に適性の無い魔法属性スキルの火、水、雷の3属性の魔石がセットされて、風属性は私が持つスキルだ。それではよく見ておくのだ」


オレは「はい!」と答えると、シャロンさんは一瞥して、鞘から剣を出すと正眼に構え「火炎斬り」と詠唱する。すると剣が赤く光り「ライトエフェクトだと!!」と驚いている間に、シャロンさんはその場で剣を振る。


「ボォー ザッ」


剣は空気を吸い取るように炎となり、一度振りぬくと炎は消える。


「すんげ~!!」


少し興奮する。そりゃそうだろ?アニメで見たフルダイブ型のVRMMOみたなんだからさっ!男のロマンだよ?と、自分でも使えれると思うと心の中で歓喜した。


「ライトエフェクト?なんかカッコいいネーミングだけど、剣に纏っている光の色は魔石を付与した属性によって変わるわよ」


今見せてくれたのは、剣に炎を纏わせ属性攻撃、火炎斬り、威力は魔法で言うと中級魔法のメガフレイム相当だと言う事だった。


「シャロンさん。次お願いします」


「おっ、いつも以上に真剣だな。本当はまだ説明をしたいのだが、後にしようか」


シャロンさんは、それから百聞は一見にしかずとばかりに、


剣に水を纏わせ広範囲で攻撃する水刃斬り。中級魔法のアクアブレイド相当。

剣に雷を纏わせ魔物を麻痺させる雷撃斬り。中級麻痺魔法のパラライズ(麻痺)相当。

風斬剣を剣に風を纏わせ5mの距離を貫通攻撃をする風斬刃。中級魔法のエアスラッシュを実演と効果の説明しながら見せてくれた。


なぜ、魔法は英単語ぽいのに、剣技は和名単語なのかは謎だ。冒険者ランクも英語なのに、魔法のランクは階級と統一性が何一つないが、自分で書いたラノベの設定が反映されているのかも知れないので敢て突っ込むまい。今思うとすんごく恥ずかしいな。


「今見せた、4つの剣技は、属性剣と名付けられていて、魔物に魔法攻撃をされた時に各属性に対応した属性剣技を使えば、魔法を魔法で相殺するのと同じで、剣術レベルに応じて、魔物が放つ魔法を上回る魔力を流せば魔法を斬る事も出来る」


『魔法攻撃を剣でぶった斬るだと!』


「でもそれだと、魔法を使う職業は不利なんじゃありませんか?」


「そうなんだが、まず、魔法剣の素材となる魔金属は高級品で、魔石が1つセット出来るミスリルがBランク冒険者、3つ魔石をセット出来る非緋色金ともなれば、王宮騎士長クラスは陛下から下賜されるが、普通に買おうとするならばAランク冒険者ぐらいの稼ぎが無いと買えない値段なんだよ。それに、魔石も高ランクとなると消耗品で高いしな」


「シャロンの言うとおりです。それに、自分の習得している魔法のレベルつまり【生活魔法1】【初級2】【中級3、4】【上級5、6】【超級7、8】【魔級9】【神級10】までの魔法した使えないですし」


「えっ!マイアが上級魔法を使えるって事は既にマイアの魔法レベルは5に達しているってこと?いくらなんでもぶっ飛び過ぎじゃない?」


「年齢の割にはって言う点ではそうかもしれませんが、上級魔法1発撃って気絶するんですから、冒険者ランクで言えばDランク冒険者にも及びません」


魔法は隙が多いから勉強不足だったが、上級魔法はどうやら、驚くほどの事はないらしい。って言うか階級多すぎだろ…ここまで詳しく設定したつもりはないぞ。


それからシャロンさんに魔法剣を借りて、試してみると中級魔法程度までなら使う事が出来た。


シャロンさんのレッドムーンは所謂ロングソードだったが、相殺する程度に振り回す程度なら問題ない。


そんなわけで数をこなすして慣れるまで、ジュリエッタ、マイアに交互に各属性の初級魔法を放って貰って、魔法剣で相殺する練習を開始した。


「ファイヤーボール」「火炎斬り」


「ウォーターボール」「水刃斬り」


3歳から魔力操作をしていたので魔力切れをおこす事はなかった。賢者や聖女よりも魔力が多いとは、転生してからのスタートダッシュが成功して良かったとつくずく思う。無論、4人からバケモノ扱いされたが…



◇ ◆ ◇


それから3ヶ月が過ぎる…


3月になると王都に来てから約10か月。俺達は3~4年も前倒しをして神託の儀を迎えた。ちなみにひと月前にはオレに妹が出来ている。シェリーと名付けたそうだがまだ会えなさそうだ。


魔法剣は既に中級魔法まで相殺できるようになっていた。成功、失敗に関わらず、この神託の儀が終わればついに基礎訓練も終わって、学園迷宮アタックが出来る日がやってくる。


俺達3人は、陛下の手回しで通常より2時間早く8時に王都の教会へと入ると、いきなり祭壇ではなくて応接室に通された。


具体的な作法は、神父さんからステータスカードを受け取り、順に神様の像のある場所へと移動する。


そして神像の前に跪き、受け取ったカードを挟みこんで手を合わせて祈るとカードにステータスが書き込まれるそうだ。


それから神父さんからジョブの選択ついて説明をされた。自分の書いた小説の設定とは違い、一度神託の儀を受けると後天的に得られたスキルによっては、いつでも転職可能だそうだ。


それじゃただの転職じゃないか?と思ったが、転職次第でその後の得られるスキルの枝分かれ、つまりゲームで例えるとスキルツリーで得られるスキルが変わるそうだ。


「いよいよね。長かった…」


ジュリエッタが、小声でそう言ったのが聞こえた。


「んっ?今何か言った?」


「えっ、ああ、最近の中で一番緊張するわね。って言ったのよ」


「ええ。成功する確率は1%あるかどうか分かりませんが、楽しみでもありますね」


「今まで成功例がないからね。過剰な期待はしないほうがいい。それにたとえ失敗したとしても、この1年間がんばってきたんだから、無駄では無いし後悔はない。あとは神様に任せよう」


そう言うと二人は笑顔で頷いた。


説明が終わると、シスターに案内されて応接室から祭壇の間えと移動。中ではマーレさんが待っていて、笑顔で俺達を出迎えてくれた。


「3人とも、おはよう。とうとうこの時がやって来たな。年甲斐も無く昨日は眠れなんだ。さっ陛下が部屋でお待ちだ。中に入るがいい」


教会の中はステンドグラスを通した日光がキラキラしている。空気が変わったのを感じた。神聖な場所に相応しい。


祭壇に目を向けると、陛下が跪き神像に祈りを捧げていたようで立ち上がって手招きをする。


「3人とも早くこちらへ来るのだ。何せお忍びだからな。急かして悪いが早速儀式を始めよう」


朝の挨拶まで端折る。よほど急ぎのようなので、俺達は陛下の待つ祭壇まで歩いて行くと、さきほどの神父さんの上役だろうか?司祭っぽい人物が扉を開けてやってきた。


司祭は祭壇へと上がる。


「皆様、お揃いになられたようなので、こちらをどうぞ」


司祭が俺達3人に王侯貴族用のプラチナ色のステータスカードをくれた。カードサイズはスマホと同じぐらいで何も書かれていない。


「それでは新しく神託を受けられる皆様。本来ならば15歳で神託の儀となりますが、陛下たっての要望で今ここで執り行うことにします」


『色々言いたい事もあるが、敢て言うまい』


「さぁ、こちらの神の像の前に来て跪き、ステータスカードを手に挟み祈るのです」


本に書いてあった手順どおりなので、俺達3人は神様の像の前に跪き、カードを手のひらに挟みこんで祈りを捧げた。


するとどうだろう。一瞬時が止まりまわりの世界がモノトーンになるとパッと光り周りの世界が真っ白になる。これが神託の儀?


瞼越しの光が無くなると、そっと目を開けた。


「よく来たな。勇者の血を引く者よ」


ここどこだ?俺は神殿ぽい所に立っていた。


「勇者?どこに?って、ここはどこだ!!教会じゃないのか?」


「そう慌てるではない。ここは神界じゃ。ワシがこの世界の創造神オルディスである」


声がする方を見てみると、長い髭を生やした老人が一人立っていた。死んだ時にはこんなイベント無かったのに今頃になって神様に呼ばれたようだ。


すると後方から「ヴェル!!」と言って、長く赤い髪の物凄い綺麗なねーちゃんが、涙を流しながらいきなり俺に抱きついた。


「ヴェル。会いたかった!!」


「どどど…どなたですか?!」


ハッキリとは顔は見えなかったが、ジュリエッタ似の美女に飛びつかれて狼狽しない方がどうかしている。それほどの美女だ。


「私よ。ジュリエッタよ」


どことなく雰囲気は残っていたが、まさかの大人になったジュリエッタ?こんなに美人になるのか?


「僕の知っているジュリエッタはまだ12歳の子供なんですが?」


「ジュリエッタ。そのくらいにしておきなさい。彼、戸惑っているわよ」


恐らく女神様だと思う。神様の隣で立つこれまた凄い美人が、大人モードのジュリエッタにそう声を掛けた。


「ありえないだろこれ。どう言うことだ?」


「驚かせてごめんね。どうしても大人の姿のままで、もう一度あの時のあなたに会いたかったのよ」


そう言えば、視点が高いような気がする…


「ん?ちょっと今何が起こってるのか理解できないってば。それにこちらの方は?」


「私はこの世界の時を司る神、レアリーフ。貴方は忘れてしまっているようですがあなたは一度この世界で亡くなっているのです。赤子の時に言葉が理解出来ることを不思議に思いませんでしたか?」


「それでだったのかっ!と言う事は、今この世界で人生をやり直しをしていると?」


「ええ。そのとおり。合っています」


「それで、なぜ僕は死んだんですか?」


「魔王軍の四天王、シルフィスを倒した直後に、あなたに駆け寄って行ったら、シルフィスが残りの力を振り絞って、私に向かって死の呪いを付与した槍を投げ放ったの。それをあなたが庇って、私の代わりにその槍がヴェルの心臓に…」


俺が日本で死ぬ前に見た夢を思い出した。まさかあれが現実だったなんて…意味が分からん。


「私はこの世界に転生をする前、つまり地球の日本という国に住んでいた時に、これが転生と仰るなら、何度か転生前の夢を見た事があります。あの夢は本当にあった事と言うわけですね」


「ええ。完全には魂から記憶は消えなかったようですね。恐らくはシルフィスの魂に掛けた呪いが原因だと思われます」


「なるほど。それで…」


客観的に夢を見ていた筈だが、全ての謎は解けた。あの夢は全て現実に起こった事で、それを俺は小説に書いたのである。


「それでは、今の体に戻しましょう。それと今生で死ぬことが無かった賢者であるマイアにも色々と説明しておいた方が良いでしょう」


「やっぱり、マイアが賢者だったのか」


女神様はそう言うと、俺とジュリエッタの体は元に戻り、隣にはきょとんとしたマイアがいた。


「ヴェル、ジュリエッタ。ここはどこなの?」


「神界と言えばわかるかしら」


ジュリエッタが説明をするとマイアが固まる。そりゃそうだろ。いきなり神界だぜ。神様に女神様だぜ。俺もびびったよ!


「本当なんですか?」


「ああ。本当の事らしい。正直言えば俺もまだ追いついてない」


「そっ、そうですね。明らかにここは教会ではありまえんものね」


マイアは自分のほっぺたを引っ張ると痛くないのか、変顔になっている。オレも試しに引っ張ると確かに痛くない。


別に笑いを取る為にやっているのではないのだが、ジュリエッタは大笑い。神様達は苦笑いをしている。


「それでは今から、ジュリエッタの記憶を再現したものを見てもらいます。予め言っておきますが、これは時を戻す前に、現実に起こった事です。目を逸らさないで見て記憶に留めるのです」


女神様はそう説明をすると、まるで映画を見るように、目の前に映像が流れ始めた。

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