第15話 バイトNo.9 burden burden タウン誌のスタート
谷町四丁目が地下鉄の出口からすぐ出て、少し西に行った先のビルの4階がタウン誌をスタートすると言う出版社の編集部だ。
ハヤシさんと数ヶ月ぶりに会い、編集部に紹介された。
社長は電気設備の会社をやっていて、他にもいくつも企業を持つ金持ちで、今回はタウン誌もやる事になったらしい。ハヤシさんが社長と話しているうちに作る事になったとか。
ハヤシさんに誘われて来たのは
長年タウン誌で働いていた編集長アオキさん。
たまに編集を手伝ってくれるプロの編集集者の女性。
で、私の役割はバイトの管理や自分自身でもタウン誌の取材やデザインや広告取りもすることらしい。
カメラ撮影は編集長がやってるので、最初は広告部長のハヤシさんに広告取りを教えてもらい、編集長について取材を教わる。
正社員は部長と編集長の2人だけ。
私はバイトのリーダーという扱い。
これまた、初めての仕事ばかりだが、心機一転でやる事にした。
まあ、T子ちゃんとの別れが引きずったこともあり、いったんは内定してた企業を辞退したのもあり、今までの人生最大の不幸に見舞われた時期だったから、ちょうど良いタイミングでハヤシさんの誘いに乗ったのだ。
◇◇◇
まずは、紙面の作り方などの編集会議を何度も行った。
すでに先行しているぴあや、プレイガイドジャーナルに少しでも勝てる要素として、うちでは割引チケットが全ての紹介ページにつけてあり、何かの割引がなければ掲載をお断りするという事。裏面に地図があり場所が分かりやすいこと。ただ問題があったのは、一冊の料金をいくらにするかが一番紛糾した。
結局、最後に営業部長のハヤシさんが折れて、表紙裏と、裏表紙、裏表紙裏(広告料金で一番高い表2・表3・表4)の押さえる権利を勝ち取った。
編集長はそれ以外の裁量権は編集長が勝ち取った。
正社員でもない私が無料を訴え、二人を納得させるのは時間がかかったが、先に自分の利益を取っている二人に対して、ぴあのような知名度の高い相手に半額でも売れるとは思えなかったことと、ハヤシさんは広告だけでも2万部あれば利益は出ると判断していて、編集長も掲載ページとは別枠で記事広告(一見記事に見えるが実は広告料が発生するタイプ)を隠し玉で持っていた。
ということで当初は無料で。媒体の持つ力が高くなれば価格を見直すことで落ちついた。
◇◇◇
集長が呼んでくるいろんな職業の人からレクチャーを受けて、編集部のスキルなど何も無かった私にいろいろ教えてくれた。
もちろん、デザインは出来るので、編集会議では私がメインになる。でも出版の事は全くの素人なので教えてもらう事のほうが多い。
この後、グラフィックデザインの事務所を始める基礎をここで勉強することになった。
私が原稿を書き、編集長がrewriteする。編集長の原稿をrewriteするのはたまに来るプロの編集者の女性。
写真や店のロゴはコピー機でコピーするか、紙焼き機でサイズを調整して印画紙に撮影する。
文章は専用原稿用紙に書き込み、先頭の記号と共に写真屋さんに依頼して、写真植字を印画紙に打ち込んでもらう。
写植の印画紙をカッターで切って、ゴムのりでページ割用の台紙に貼り付ける。これで文章はほぼ完成。
タイトルなどはロットリングで書くか、レトラセットのアルファベットやスクリーントーンなどで作成する。
◇◇◇
編集部のバイトも募集する。
まずは取材のバイトだ。
なぜか応募に来るのは女子高生が多い。
たまに女子大生も来る。
誰でもお気に入りの店があり、そこの店長とも知り合いのパターンが多い。悪くても2〜3軒は紹介してくれる。才能がある子ならその地域の何か面白い店を探してくれる。
そうやってバイトの子も入れ替わり新しい情報とともに才能も増えてくる。
数少ない女子大生が二人いて、編集部専属のバイトとして採用した。
一人目はアメリカ村大好きで全身がカウガールのような服装、ジーンズにブーツとテンガロンハットの女の子はアメリカ村周辺エリアの取材を担当する事になった。
二人目のイラストが得意な可愛い子は紙面で寂しい空きを埋める事で才能を発揮してくれた。
◇◇◇
うちの編集部が入ってるビルの一階に、京都弁の少し年増の女将がやってる割烹によく行った。肉じゃがは名人級や!と女将を讃える編集長は肉じゃがともう2品。私とハヤシさんは本日の定食。この本日の定食がすごい。炊き込みご飯だけでも日によって鮎ご飯や、タケノコご飯、フキ、ニンジン、しめじ、子鮒の甘辛煮をほぐしたご飯だったり、毎回変わるのが嬉しい。
社長は編集部に顔を出して、進捗状況を聞くために、時々飯に連れて行ってくれる。
で、たまに社長が運転する高級車に乗せてもらってのホテルの高級料理。まあ、レストランのマナーは知ってるけど、見たことない料理はどうやって食べれば良いか困るよね。元々庶民だし。
あと、社長の持ってるビルが、いくつか有るけど、南森町ビルは2階から4階まで全部、社長のやってるレストランで、変わった名前のレストランばかり。ピザが美味しいイタリアンレストランは「パスカルの定理」。ボルシチが美味しいロシア料理の「ブルータスの真実」後一つは忘れましたが、そこも変な名前の店でした。でもどの店も美味しかったです。イタリアがパスカルはまだいいけと、ロシアがなぜブルータスなのかは会えてツッコまないようにした。
この、1階には社長がデザインしたと言う(アルファキュービックのモロパクリ)高級洋服店がありました。
5階には社長の秘書室だけで広いワンフロアがあり、そこには美人さんが3人いるだけの秘書室。。。
本業は中小企業ではあるものの、アメリカなどでも仕事を受注している、電気設備の会社でミサイル基地の電気関係もやっているらしい(当時の話ね)
で、このタウン誌の収益はまだ無いので全部社長のポケットマネー。
部長と編集長は給料はあるものの、私は月に10万程度。でも編集部に寝泊まりしてて、ご飯は社長たちから奢っってもらえるのでタダ。なんでしょうかねぇ。待遇が良いのか悪いのかわかりませんでした。
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