第8話 バイトNo.3 ADROOM①バーゲン会場

アランフェスをやめて大学のサークルADROOMに参加する様になった。


と言うのも、そもそものバイト先のアランフェスはJ子ちゃんの知り合いから紹介してもらったので、私としても心苦しい部分もあるからだ。


もちろん、私の代わりになる人物を紹介して、いきなり店長が困らない様にはした。


ADROOMは、大学のクラブ活動ではなく、サークルであり、確か広告宣伝企画のサークルで、いくつかの大学の学生サークルが共同で活動している、いわゆるバイトの斡旋などをしている協同組合みたいなもの。


ほぼ、卒業製作にだけ大学に行ってるので、固定しているバイトでは無くてもいいのだ。より単価の高いバイトを短期で稼いで、他にもバイトを探して月の稼ぎを上げるのが狙いだった。


ま、実際にはトータルすると交通費やら何やらで、折角の効率の良い短期のバイトと、アランフェスで毎月固定で貰えるサラリーと対して変わりがなかったのだが、まだ人生経験が少ない若い自分では理解して無かった。



そんな感じで、スタートしたサークルで1人のおじさんと出会った。歳は40半ば、高い声が特徴的でセカセカ歩く人で人の良さそうな人。


うちのサークルと提携している零細広告代理店の課長さんだ。


本業の広告代理店の仕事とは少し離れてる仕事でも何でもこなしてる感じであらゆる仕事に手をつけてる感じだ。


朝から集合する必要から、心斎橋の近くにある雑居ビルの一部屋をサークルで借りているので前夜からの泊まり込みだ。この部屋には私含めて8名が泊まり込んでいる。6畳二間なので雑魚寝状態。


課長さんがハンバーガーとお茶を持ってやって来て、皆に配りながら本日の仕事の概略を説明する。

バーゲン会場の商品の陳列だ。ハンバーガーをパクつきながら説明を聞いて、徒歩で移動する。


この、拠点からすぐ近く、心斎橋のとある百貨店の裏にある搬入口から入る。エレベーターで5階の展示会場まで一気に移動。展示会場ではかなり大きなスペースに段ボール箱が山ほど積み上げてある。


そこに何人もの若い男女が箱から商品を出して陳列をしている。


広告代理店のおじさんが奥のスタッフに


追加の人員連れて来たで〜。


2人のスタッフがおじさんに駆け寄り、待ってた!助かったわ〜。じゃ、こっちに3人来て。あと5人はこの人について行って。


私は5人のチームに入り、まずはダンボールの山の外側に放り上げてるダンボールを潰して捨て場に持って行く。私と2人で捨て場へと何度も往復する。


戻ると開かれてあるダンボール箱の中の商品から品物ごとに、指定場所へと移動させて、その後に上代と下代をチェック。さらに細かい移動をして陳列を進める。


上代と下代?とは品物の仕入れ値と、売値の事で、仕入れ値はひと目では分からないようにしてある。


バージョン会場は数日間行われているので、その間、拠点での泊まり込みになる。


朝早くから陳列したおかげでなんとかバーゲンに間に合いそうだと、スタッフからおじさんに礼を言われている。


ここで初めて意味が分かった。

スタッフは展示会を開催している会社のスタッフ。

それだけでは足りない人員の補給をしたのが代理店のおじさん。

で、私たちは孫請のバイト君ってこと。


拠点に戻った私達に、おじさんは


はい、お疲れさん!また夕方呼びに来るからそれまで適当にしといてな。


と言って、おじさんは帰って行った。


行くと同時に、他のメンバーも部屋を出て行く。聞くとこの後また別のバイトに行くらしい。


この部屋のリーダーが


鍵閉めるから時間になったら戻って来て。


と言ってエレベーターを降りて行く。


なるほど〜。こういうシステムか。

とりあえず、やることが無いからアメリカ村をブラブラするか〜。



◇◇◇



時間になりバイト再開〜。


すごい状況のバーゲン会場。

まずは新人君の私達ふたりはゴミ捨てだ。


戻ったら、品物の仕分け。

上代と下代のチェック。

集計を報告。

集計が終わり、翌日の分の品物の段ボールがやってくる。


追加する分と倉庫行きのものと仕分けして、陳列台近くの決められた場所に積んでいく。

上代と下代のチェック。

集計を報告。


これをスタッフと一緒に終わらせて終了。


はい、また明日お願いしますね。



外はもう暗くなっている。


拠点で泊まるけど、リーダーの提案で少し離れた場所に銭湯があり、皆で銭湯に行くことに。


新人さん、今日はどうだった?疲れた?


重いものは無いし楽だな。とか話しながら銭湯に向かって歩く。


リーダーは同じ大学で8回生だった。実際のところは何年も3回生をやってるので今年で最後。卒業が出来ないので、3回生をやり直すか、グループ学校法人の何処かへ転入するか、このままどこかの企業で就職するか考え中らしい。


そんな方法があるのかとビックリした。


大学生を何年もやってるから、他の大学の同じようなサークルと関係があり、そのままバイト生をまとめてひとつの会社にしても良いな。と話してるらしい。

(今で言えば、派遣会社のハシリみたいなグループでした。)


そう言えば君、大学の体育の授業、単位は足りてるの?


実は、足りてなくて、今年の冬のスキー実習行かなくてはいけないんです。


じゃあ、赤倉だね。確かうちのサークルメンバーにもスキー実習受けるの居たな。今度紹介するよ。確かあいつ運転できたし、車もあるから一緒に行くと良いよ。ガス代の人数割りだから電車で行くよりも安い。


良い情報をもらった。バイトしててこんな情報が入るのか。


さすがリーダー。なんでも知ってる。

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