第5話 バイトNo.2カフェ・ド・アランフェス②
この頃にはJ子ちゃんとはエッチまでいく間柄になっていて週に4回は学校帰りにうちに会いに来ていた。
ある時、J子ちゃんが、
あのな、ないねん。
なにが?
あれが無いねん。
月のものが無いらしい。
モテ期ではあったものの、そう言った仕組みを知らなかった。J子ちゃんが言うままに荻野式を信頼してたのが失敗したのか、と。
まだ2人とも学生で、子供を産み育てるのは私達の親に話して、援助を求めるしか無い。でもそう言うことを話すのも怖かった。
結局は友達から集まるカンパと、私のバイト代で合わせて堕胎の費用も払えるくらいまでになっていた。
婦人科で診断した貰おうか?と考え始めた時に、遅れに遅れた月のものが来た。
ホッとした反面、子供を持つだけの覚悟も信用も無いことに気が付き、これからの2人の関係も変わりつつあった。
◇◇◇
何度かの口喧嘩の後で、別れる事になった。
お互い好きで好きで堪らなかった2人だけど、どこから溝ができたのか分からず、ただただ悲しくて2人で泣いた。
これで終わりなんやね。
せやな。
もしなぁ。したくなったらしてもええで。
それはあかん。
遠慮せんでもええんやで。
それやったら、別れる意味ないやろ?
頭の中ではこのままでええやん。と悪魔が囁いていた。
結局は、別れてひとりで泣いていた。
J子ちゃんは優しい子やから、男の性を考えてそう言ってくれてるんだろうと、格好付けてわざとキッチリ別れた。
初めて出来た彼女で、実家からは離れて自分だけでアパートに住んでるから、何をしても自由だ。
彼女がいるんやから、エッチするのは普通やろ。
心の中からの気持ちももちろん大事や。
でも、ふたりの身体で重なる時はより強く愛を感じる。
多分、J子ちゃんのお言葉に甘えれば元の鞘に戻るかも知れん。
でも、エッチは私ひとりの気持ちよさだけでやってもいいのか?
あまりにもJ子ちゃんを馬鹿にしてないか?
そんなような事を考えてるおバカな自分でした。
◇◇◇
大学では課題がキツくて徹夜も多くて大変だったが、そろそろ講義がない日もあり、アランフェスでのバイトは続けていた。
私の専攻はインテリアデザインで、デザイン科の中でも優秀な者ばかり。クラス全部で25名しかいない。
もうひとつはインダストリアル・デザイン。ここもクラスに30人いない。
両方ともひとりの学生に対して、企業から5件ほどオファーが来て、面接になる。
グラフィック・デザインは3クラス。全部で100名を超えている。
オファーはたいがいが1件。人によっては企業から2件来る人もいるが、逆にオファーが無い学生もいる。
そのための教育実習。
もちろんほんとうに教員になりたい人がいればいいけど、絵画などの純粋芸術は教員になるのが一番楽だ。(早い)
作家をするのには金がかかるので教員をしつつ、どこかで作家活動を始める。もしかしたら死ぬまで目が出ないかも知れない。というか殆どの作家は年一回のグループ展がせいぜい。個展ともなれば最低でも画廊を一週間は貸切にする。案内のためのDMやパンフもいるし、ポスターもいる。
画廊がバックアップしてくればラッキー!
サポートもあり来客が見込めれば、作品の販売にも先行きが分かり出す。
と言う事で、グラフィック・デザイン科を卒業しても、自分の好きな道で仕事が出来ない人がかなりできる。
当時はそんな感じでした。
今はどうかはわかりません。
ただ、インテリアデザイン専攻は課題が多くて大変でした。
皆んなどうやって課題をこなしてたのか?
それと卒論。うちでは論文ではなくて、図面やパースや模型を作り総合的な教授からの評価を待つのだ。
卒論が目前に来る頃には、あちこちで別れ話が起きていた。卒論だけで目一杯。せめて卒論が終わってからまた付き合おうなどと。
◇◇◇
卒論、いや卒業制作だな。
それに取り掛かる頃で、J子ちゃんと別れたのもそう言うタイミングだったんだな。
周りで見かける別れ話を見て、妙に納得した。
バイトと大学で1日が過ぎてる時に、何故か良く会う子が居た。演奏学科のT子ちゃんだ。
私が拠点にしているインテリアデザイン専攻の建物と、演奏学科のピアノ棟の間に喫茶店があり、そこでよくハンバーガーとトマトジュースで休憩していたのだ。
T子ちゃんも演奏学科の友人とここで休憩してたので見たことがあった。
先輩。横いいですか?
?ああ、いいよ。どうぞ。
他にも空いてる席があるのにと思いながら席を詰めた。
何してるんですか?
これ?知り合いから演劇のチラシをもらったんで、内容を読んでた。
可愛い子だし、男としては気になるが、まだJ子ちゃんとの別れからそう時間が経ってないのと、卒業制作の事もあるし、すぐに他の女の子と付き合うのって人間としてどうなんだ?
と、良い子ちゃんの自分と、その裏側で悪魔が良いチャンスやで〜!この子、なんどか会って話してるし、行けるんちゃうか?と、頭の中で戦いがありました。
演劇って見た事ないんで興味あります!
じゃ、今度一緒に観にいくか?
これをキッカケによく会う事になった。
(しかし、悪魔の誘惑に弱すぎるよね、俺。)
演劇科の友人から良く無料のチケットが回ってくるのだ。
ようするにこの演劇を見た感想を書いたり言ったりするのが友人へのサポートになる。
評判が良ければ、この劇の開催期間が延長する。悪ければ早々に終了。他の劇に切り替えられるのだ。
殆ど無料のチケット(関係者枠のチケット)ばかりで観られるのでお金は掛からない。
あ、J子ちゃんとの妊娠疑惑でカンパがあったものは、全て返金した。その時の私のバイト代は卒業制作の資金に変わったので、金欠状態でした。
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