第25話 大地主の宝

数時間後……


 悠里たちは件の地主の家で説明を聞いていた。

 件の地主は近くの村の大地主らしく、非常に羽振りが良く、成金趣味の服を着てソファに深々と座っている。

 その隣で門脇署長がホワイトボードの横に立っていた。

 そんな彼らがどこにいるのかと言えば、広間と言うか客間と言うか、そんな感じの豪勢な調度品がずらりと並ぶ20畳ほどの部屋で、そこには伊岳市の探偵たちがすらりと勢ぞろいしていた。

 門脇署長が居並ぶ探偵たちに向けてホワイトボードで説明していた。


「三日前の午前8時、メイドの一人が郵便受けを確認した際に、この予告状が入っていました」


 そう言ってビニール袋に入った封筒と手紙を見せる門脇署長。

 ホワイトボードに写真を投影して見せる。


「内容はこれで『23日の午前0時に桃から生まれた金太郎を頂く』と書かれてある。例によって意味不明の謎の暗号文だが、ここから何かを盗むのは確からしい」


 それを聞いて不思議そうに尋ねる探偵の一人。


「桃から生まれた金太郎というのは何でしょう?」


 こうなるのも仕方が無く、宇宙人には日本の民話に疎い。

 とは言え、日本人にとっても不可解な言葉でもある。

 門脇署長も困り顔で答える。


「それは私達も意味不明な所ではあります」


 そう言って、ホワイトボードに二つの絵を見せる。


「日本には桃から生まれた桃太郎が化け物を退治しに行くという昔話があり、そのことを指すのかと思われます」


 そう言って、目の前の机に金で出来た桃太郎像を見せる門脇署長。


「この桃太郎像は黄金で出来ていて、この屋敷の中でももっとも価値が高い物なので、恐らくこれのことでは無いかと思っております」

「なるほど……」


ガヤガヤ……


 周りの探偵が困り顔でざわめく。


「そうは言いますが、怪盗夜鷹は常に斜め上の物を盗んでいきます。果たしてそれで正しいのでしょうか?」


 ここにいる探偵たちは宇宙人の探偵である。

 当然ながら宇宙のことは彼らの方が詳しい。

 

 だが、これに関しては門脇署長も困り顔だ。


「私もそう思うのですが、こちらの地主さんのお話では、それよりも高いものは無いとのことで、これ以外でも確かに価値があるものはありますが、どれも桃太郎とは関係の無い物ですから考えにくいと思っております」

「ふむ……では資産になりそうな物を色々教えていただけますか?」


 探偵の一人がそう提案すると門脇署長の隣で座っている成金デブなおっさんが椅子から立ち上がる。


「あ~困るんだがねぇ。勝手に家の中をうろつかれては。プライベートの空間というのもありますんで」


 彼が件の地主さんに当たるのだが、横柄にソファでくつろぎながら言った。

それを聞いて探偵たちの態度が一変した。


「そうだな」

「無駄骨だったな」


 そう言ってぞろぞろと探偵たちは帰り始めた!



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