第17話 電脳獣は外に出られた
『あんたと同じでわたしも『虚人』よ。電脳空間を自由に動き回ることが出来るのよ』
「くそっ!」
キュラの言葉に漆翅は思わず叫んでしまう。
「な、何すか! 『虚人』って何のことっすか!」
純が不思議そうに叫ぶと、キュラが嬉しそうに言った。
『電脳空間を自由に動き回れる『英雄』よ。そして虚人は電脳空間で作った物を現世空間に出すことが出来るのよ。私のビューナもそれで外へと出してあげたのよ』
虚人は電脳空間にある物を現出させることが出来る。
その異能力を利用して彼女は携帯を
「うわぁぁぁぁ!」
「化け物!」
慌てて逃げまどう警察たちと捕まった犯人たち。
そんな彼らに向けて、漆翅は叫ぶ!
「落ち着いて! あれはこの場から動けないはずです! 距離を取ってください!」
慌てて叫ぶ漆翅の言葉を聞いて少しだけ正気に戻る警官たち。
「落ち着け! あれが虚人の能力ならこの場からは動けん! 総員! 犯人を捕まえたまま撤収!」
警察のおえらいさんらしき小太りおじさんの声に警官たちは慌てて対応する。
だが、その指示に一人だけ抜けていた人物が居た。
「あわわわわ!」
純は逃げようとして炎に囲まれてしまった!
純は縛られた縄からは解放されたものの、すぐに立てなかったので、その場で一息ついていたのがまずかった。
「ど、どうすれば……」
逃げようにも完全に炎に囲まれてしまい、どうにもならない。
「ちぃ……」
助けに来ていた漆翅も舌打ちをして状況を探っている。
彼は純と同じように炎に囲まれているが、彼自身は
逃げようと思えば炎の壁は簡単に越えられるが、その場合は純だけが取り残される。
漆翅はドラゴンと純を交互に見て唸る。
「とりあえず炎を消すか……」
そう言うと漆翅が手をパンと叩く。
ポン♪
目の前に氷で出来た剣が現れた。
それを見て純はキョトンとする。
(あれ? 何か見たことあるような……)
そんなことを考えている純を尻目に漆翅は氷で出来た剣を振るう。
パシュン!
あっという間に冷却されたのか、炎の壁は瞬時に消えてしまう。
(助かった!……けど、何か見たことあるような……)
そんな事を考えていたせいか、逃げるのが少し遅れてしまった。
漆翅が慌てて叫ぶ!
「何やってんだ! 早く逃げろ!」
「は、はい!」
慌てて逃げ出そうとする純だが、外へ出ようとしたその時だった。
ぐるり……
ドラゴンは純へと顔を向けた!
「まずい!」
慌てて氷の剣を振るう漆翅だが、その時にはブレスが飛んできていた!
ゴボァァァ!!!!
炎のブレスと氷の斬撃がぶつかり合って相殺されるのだが、水蒸気爆発を引き起こし、その衝撃で純が再び壁際に吹っ飛ばされる!
「ぶぎゃぁ!」
思わず変な叫び声を上げ、無様な姿をさらす純。
だが、無様な姿になったのは彼だけでは無かった。
「げふっ!」
同じように壁に叩きつけられてしまう漆翅は、そのはずみで兜が取れてしまう。
カラン……
力なく転がる兜と打ち所が悪かったのか、苦しそうに呻く漆翅。
「ぐぬぅぅぅ……」
起き上がろうとするのだが、頭を打ったせいか、すぐには起き上がれない。
「いててて……」
純の方が先に起き上がって、辺りを見渡すと再び炎の壁に囲まれてしまっていた。
「どうしよう……そうだ! 漆翅さん!」
慌てて漆翅の方を見る純だが、その顔が思わず呆けてしまった。
「……えっ? 悠里さん?」
漆翅の正体は上村悠里だった。
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