第15話 現れし者
「そう……中身を見たのね……」
それを聞くと女は部下の一人に向けて手のひらを見せた。
スッ……
部下から先端に色んな物が付いた杖を渡された。
それを見て、純の顔が凍り付く。
(闘杖を出してくるなんて!)
純の顔が変わったのを見て、サディスティックに笑う美女。
「
魔法とは科学とは対を成す技術体系の一つで、文字通り魔法のようなことが出来る技術である。
やれることは科学と大差無いのだが、その技術においてもっともよく使用するのが『杖』である。
魔法技術で様々な能力を入れ込んだ道具で、それがあると杖に刻み込んだ魔法が使えるようになる。
そして闘杖に刻み込む魔法とは……
「闘杖には様々な戦闘用の魔法が刻み込んであるわ。その中には人を殺す魔法もね……」
そう言って闘杖を純の頬に突き付ける美女。
「中身を見たなら仕方ないわねぇ……」
「ひっ!」
完全におびえる純。
すると、男たちの間から声が上がった。
「キュラ様。そいつは良いケツしてますから、死ぬ前に味見させてくだせぇ!」
そう言って下卑た笑みを浮かべる男たち。
するとキュラと呼ばれた美女は闘杖を引いた。
「良いわよ。その代りちゃんと始末しなさいよ」
「「「いやっほぉぉぉ♪」」」
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
泣いて叫ぶ純へと殺到する男たち!
(何でこんな事に……)
今から起きる地獄へ純が絶望したその時だった。
『そこまでだ』
静かだが良く通る声がガレージの中で響き渡る。
その声に男たちも思わず凍り付いてしまった。
「何で……?」
男たちが凍り付くのも仕方が無い。
声がしたのは男の一人からだ。
「えっ!? 今どこから!?」
慌てて自分の体をまさぐるその男。
すると、もう一度声が聞こえた。
『どこを見ている。ここだ』
その声を聴いてぎょっとする男。
自分の携帯端末から聞こえてきたのだ。
慌てて携帯端末を取りだした男は周りに見せる。
『しょうがない奴だな。ようやく気付いたのか』
携帯端末の画面には一人の男が映っていた。
頭の上からぴょこんと出た触覚にヒーロー衣装のような
そして虫を思わせるような漆黒の仮面。
キュラはそれを見て顔を醜く歪ませた。
「英雄の……
『そんな御大層な呼ばれ方をしてるみたいだな』
画面の中の漆翅は飄々とそう言ってのけた。
その様子を見てキュラは完全に凍り付くのだ、画面の中の漆仮面は気にしない。
『無駄な抵抗は止め……』
パキャン!
キュラは男が持っていた携帯端末を壁に叩きつけた!
派手に砕け散る携帯端末。
「あんたたち! 持ってる携帯を全部壊しなさい!」
慌てて指示するキュラだが、部下たちはキョトンとしている。
「えっ? 何で?」
「良いから! 急ぎなさい!」
キュラが慌てて命令するのだが、部下たちは命令の意図をわかりかねていた。
戸惑うばかりで何もやらない部下を見て舌打ちをするキュラ。
(くそっ!
戸惑ってばかりいる部下には見切りを付け、慌ててガレージの出口へと向かうキュラ。
彼女がガレージの出口を開け、外に出ようとして……
「ぐがぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
凄い叫び声を上げて慌ててガレージの内部へと戻って来た!
「ぐぅぅう……」
キュラは苦悶の表情を浮かべて床を転がるが動けそうにない。
彼女が開けた出口からカツンと言う
「……こんばんは」
入って来たのは漆黒の仮面を着けた完全武装の漆翅だった。
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