第14話 謎の黒服
純を連れ去った車はそのまま伊岳市の外へと向かい、郊外の山へと入っていく。
伊岳市のある場所は元々過疎化が進んでいた寒村ということもあり、一歩市街地から出るとまだまだ原生林が繁茂する人の居ない地域である。
そうは言っても、宇宙人の先進都市である伊岳市を相手にした会社が続々と集まっていることもあり、少しずつ活気が湧き始めては居るが、それ故に誰が使っているのかもわからないような建物が多い。
車は真新しいシンプルなデザインの建物へと入っていく。
建物には『日本フューチャースペースライフドリーム株式会社』と書いてある。
車が入ると同時にスーツを着た会社員が、辺りを見渡しながらシャッターを閉めた。
プシュゥゥゥゥ……
車は静かにコンクリの床に着地すると、ドアが開いて男たちが出てくる。
「降りろ」
そう言って乱暴に純を引きずり出す男たち。
ドシャァ……
頭から床に落ちた純は痛そうに少しだけ涙が出るのだが、それを気にしている暇はな。
男たちは純の口から猿轡を外すと静かに言った。
「おい。携帯を出せ」
それを聞いてキョトンとする純。
「携帯? 何のことっすか?」
いきなりの言い分に困惑する純。
まごまごしていると、男の一人が怒鳴りつける。
「在原ってやつから携帯を渡されただろう! 早く出せ!」
「ひぃっ! い、一体何なんすかあんたらは!」
完全に困惑した純は、何が起きたのかよくわからない。
すると……
「そんな言い方じゃ、わかるものもわからないでしょ?」
そう言って、男たちを割って一人の女が現れた。
背の高い女で身長は180ぐらいあるだろうか?
均質でしなやかな体つきの女で胸元が開いたライダースーツのような体の線が良く出た服を着ている。
見るからに色っぽい美女が優しく純に微笑んだ。
「ねえ? お友達から携帯端末を貰ったでしょ? あたしたちは在原貴音ちゃんのお友達なの。携帯端末を返してもらえるかしら?」
「い、いくらなんでもおかしいっすよ! 何で貴音ちゃんのお友達が、あんたらみたいな人なんっすか!」
もっともな言い分を叫ぶ純だが、女はふふっと悪戯っぽく笑う。
「あらやだ言い間違えちゃった。貴音ちゃんのお母さんのお友達なの。実はその携帯は貴音ちゃんの物じゃなくてお母さんの物なのよ」
「それにしたっておかしいっすよ! 何でこんなことしてまで取ろうとしてるんっすか!」
当り前の言い分なのだが、美女の方は一切動じることなく、ニコニコ笑顔を崩さない。
「実はね。貴音ちゃんのお母さんは会社の重要機密を奪って他社に売ろうとしてたのよ。だから強引な方法を取っちゃったの。ごめんなさいね」
「そんなのある訳無いっす! 日本の会社の重要機密なんてたかが知れてるっすよ! 宇宙の方がどんだけ技術が上だと思ってるんすか!」
これも当たり前の言い分である。
悲しいかな、地球の技術は先端技術であっても10世代ほど遅れている。
宇宙では学生に教えるようなレベルの技術であり、そんなものを隠匿する理由などない。
それに何よりもこれが貴音の携帯端末である確証が純にはあった。
「さっき見た中身においらとのやり取りもあったっす! これは絶対貴音ちゃんの携帯っす!」
それを聞いた瞬間、女の様子が変わった。
「そう……中身を見たのね……」
それを聞くと女は部下の一人に向けて手のひらを見せた。
スッ……
部下から先端に色んな物が付いた杖を渡された。
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