第13話 白いハイエース

 30分後……


 純は歩きながら携帯端末の中を見ていた。


「えーと……SNSの様子はみれないかな?」


 純自身は自殺の原因が虐めだと考えていた。


(SNSで集団虐めをするとか良くありますからねぇ……おいらもやられたし)


 悲しいかな、純は立場が弱い故に虐められ慣れしていた。

 それ故に真っ先にそっちから探っていったのだが……


「多分これだよね?」


 端末に表示されるアイコンを一つ選んで開いてみる。

 SNSのアイコンで、純がよく彼女との連絡用に使っていたやつだ。


「オイラとの連絡もこれでやってたから、ここに虐めの証拠があると思うんだけど……」


 そうぼやきながら調べてみる純だが、誹謗中傷らしき言葉は見当たらない。

 どちらかと言えばインフルエンサーとして人気のように見える。

 と言っても結構可愛い子なので、おっさんのフォロワーが多いのだが。


 そんな様子を見て、少しだけ顔を顰める純。


「変っすね。履歴から見ても、これをメインで使ってるはずなんっすけど……」


 頻繁に利用しているぐらいは純にもわかった。

 だが、特に粘着質に虐められたとかの発言は無い。

 調べれば調べるほど、インフルエンサーとして割と人気だったことがわかる。


「じゃあ何で自殺するんだろ? うん?」


 よく絡んでいるSNS友達の一人との会話が気になって読んでみる純。


「……ワイファイが三本欲しい? えっ? 今の世の中にワイファイ?」


 この時代は宇宙先進国の様々な技術が導入されている。

 ワイファイも無きにしも非ずだが、もはや時代遅れの産物になっている。

 と言うのも、この世界の通信回線は量子通信が主流なのだ。

 量子通信はその特性上、電波を必要としないとしないので、ワイファイのような電波通信は必要性自体が無い。

 しかも……


「……ワイファイで飛ぶ? どういう意味?」


 不思議そうに首を捻る純だが、その時だった!


ガラッ!


 純の後ろで突然車のドアが開く音がした。


「へっ?」


 不思議そうに振り返る純だが、そんな彼の目に移ったのは数人のヤバそうな大人たちだった。


ガシガシガシガシ!


 あっという間に男たちに縛り上げられる純。


「もがー! もがー!」


 暴れる純だが、必死の抵抗もむなしく男たちによって車内に引きずり込まれる。


(助けて!)


 純はなすすべもなく車に乗せられた!


 ガチャ!


 ドアを閉められると、車はまっすぐ進むと思いきや……


 フォーン……


 宙へと浮かぶ。

 この世界では空飛ぶ車が主流である。

 一応、昔ながらのガソリン車もあるが、廃れ始めている頃だ。


ビュォーン……


 車はある程度の高さに達すると、どこへともなく去って行く。

 それを見ていた通行人が叫んだ!


「おい! ヤバいぞ! 警察だ警察!」


 通行人の何人かが慌てて携帯端末で警察に連絡している。

 そんな様子を静かに見ている者がひとり居た。


「……………………………………」


 一人で空飛ぶバイクに跨っていた悠里だった。

 彼は携帯端末を取りだして、ぼそりと呟く。


。これより追跡に入ります」


 それだけを言って、悠里はバイクを発進させた。

 当然ながら、そのバイクも空を飛んだ。



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