第12話 復活した携帯

数分後……


「良かった! みんなと撮った写真だぁ♪」


 純は友人の携帯端末を見て嬉しそうに笑う。

 その様子を見て、東山はあることに気付いた。


「そう言えば、お前さんは何で友達の携帯端末なんて持ってたの? 普通はそんなの渡さないだろ?」


 東山がそう思うのも無理からぬことで、携帯端末は個人情報の塊である。

 特にこの世界では身分証明書の役割もあるので、他人に渡してよいものではない。

 すそれを聞いた純は悲しそうに答える。


「自殺する前に彼女が急に『これあげる』って言って渡してきたんです。遊んでいる時に突然そんなこと言ったもんだから、てっきりトイレに行くのかと思ったんですけど、そのまま居なくなっちゃってて、次の日には自殺のニュースが流れてきたから驚いたっす……」

「……はぁ……」


 東山が何とも言えない顔になる。

 どうとも言いにくい出来事であるし、色々と辻褄が合わない話だが、純に嘘を言っている様子はない。


(何でそんなけったいな真似をしたんだろう?)


 東山が訝しく思っていると、純が悲しそうに俯く。


「だから知りたかったんです。何で自殺したのか全然わからないっす……そもそも何で携帯端末を渡してきたのかもよくわからないっす……」

「そ、それは何と言うか……」


 エウマも不思議そうに困り顔になる。

 どうも自殺前の行動が意味不明であるが、純は嬉しそうに言った。


「おいらはこの携帯端末を彼女のお母さんに渡してくるっす! 警察も中身を見たら自殺の調査をしてくれるかもしれないっすから!」

 そう言って部室から出ようとする純……だが、くるりと後ろを振り返り、鞄をまとめていた悠里に言った。


「悠里さんもありがとうございます! お陰で友達の事がわかりそうです!」

「ああ」


 ぶっきらぼうに生返事を返す悠里。


「皆さんありがとうございました!」


 ぺこりと全員に挨拶して、去って行く純。

 その様子を微妙な顔で見送る二人だが、エウマはあることに気になって悠里の方へと振り向いた。


「そう言えば悠里。何で急にやる気出したの?」


 エウマは悠里の方を見て……顔をしかめる。

 悠里はジャケットを着て外へ出ようとしていたからだ。

 鞄を手に悠里も外へ出ようとする。


「あの……ひょっとして……」

「『有料』でないスールはやっちゃダメなだけだからな」


 それだけ言って外へと出る悠里。

 それを見送って東山は苦笑した。


「つまり、お金が発生するってことか……」

「……純君は大丈夫かしら?」


 少しだけ不安そうにエウマはぼやいた。


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