第11話 反撃

ドゴン!


 画面の中で大きな爆発が起きた!

 大きな音にびっくりしたエウマが慌てて画面を見る。


「一体何が……ええっ!」


 エウマが驚くのも無理もない。

 


「えっ? どうやって?」


 不思議そうにぼやく純だが、エウマには心当たりがあった。


「悠里! やってくれるの!」

「乗りかかった船だからな」


 いつの間にか映像兜マッカを被ってスールを始めている悠里。

 画面には忍者のような悠里の化身オリムが、ドラゴンを睨みながら苦無を持っている。

 純は困惑していた。


「あの……この人は一体?」

「悠里はね。探偵見習いで、実力だけで言えば第一スーラー部よりも上だし、実際にプロと一緒にスールを勉強してるのよ」

「そうなんですか!」


 エウマの言葉で一気に純の顔が嬉しそうになる。

 探偵はこの世界では警察とほぼ同等の権限と腕を持つ。

 それは言い換えると、悠里だけプロレベルのスールが出来るのだ。

 だが、悠里がやらなかったのにも訳がある。


「……じゃあ、何で最初からやってくれなかったんですか?」

「……探偵が無闇に無料でやると、それを頼って安くしようとする輩が集まるから……」


 権限こそ一緒だが、

 有料で捜査をする以上、警察よりも高度な捜査力が求められるのだが、一方でタダ働きは厳禁なのだ。

 だから二人とも最初から悠里に頼らなかったのだ。

 エウマも気まずそうにぼやく。


「まあ、あたしらは同じ第二スーラー部っていう特権があるから技術を教えてもらったりしてるんであって、それだって本来は有料にしないとダメだから」

「プロは大変なんですね……」

「まだ見習いだけどね」


 純の言葉を訂正するエウマ。

 実際、悠里が入った瞬間、情勢が一気に変わる。


 ゴボァァァ!!


 ドラゴンは炎のブレスを吐いて悠里のオリムに攻撃をするのだが、彼は冷静に手をポンと叩く。


 ポン♪


 悠里のオリムの手には氷で出来た剣が出てきて一振りする。


 パシュン!


 東山が呆気なく倒されたブレス攻撃を容易く消滅させている。


「エウマ、東山、二人ともデータの修復の方に手を回してくれ、おれはこいつを片づけるから」

「「了解!」」


 東山はヘルメットを外してサポートに回り、エウマと共に修復作業を始める。

 みるみるうちに壊滅していた都市が修復されていった。


「は、早い……」

「修復ぐらいなら私らでも出来るから」


 一方でドラゴンの方も体中を穴だらけにして倒れ始めていた。


 グォォォォン……


 悲痛な叫び声を上げて少しずつ体を小さくし始めるドラゴン。

 悠里の操る忍者のオリムが小さくなったドラゴンに刀を向け……


 斬!


 一瞬で小間切れにしてしまう。


「やった!」


 嬉しそうに叫ぶ純だが、悠里のオリムはそのまま細切れになったドラゴンの方に向き直り、巻物のような物を取りだすと……


 ボワァ!


 細切れになったドラゴンの身を更に呼び出した炎で焼き尽くした!


「あ、あれ?」


 容赦ない攻撃に少しだけ戸惑う純だが、それで終わらない。

 さらに違う巻物を取りだす悠里。


 ボワァン♪


 大きなガマガエルが現れて口を大きく開ける。


 ヒュゴォォォォォ!


 燃えて煙になったドラゴンを更に吸い込むガマガエル。


「……えっと……」


 微妙な顔になった純だが、悠里のオリムはまだ止まらない!

 さらに巻物を取りだすと……


 バシャン! ドロン……


 ガマガエルに酸のような物を振りかける! 

 あっという間に溶けてしまうガマガエル。

 さらにその溶けたどろどろの液体の上に巻物を広げる!

 すると……


 ヒュゴォォォォォ!


 液体は巻物に吸い込まれていき、完全に消えてしまった。


「……そこまでやる?」


 思わずぼやいてしまう純だが、映像兜マッカを脱いだ悠里がため息を吐いた。


「しつこい電脳獣ムハングだな。ようやく倒し切った」

「……よくわからないっすけど、あそこまでやらないと倒せなかったんですか?」

「当たり前だろ」


 純の質問に、悠里はめんどくさそうに答えた。


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