第8話 携帯電話の世界

 数分後……


 東山が携帯端末に何やら機材を繋げてスールの準備をする。

 その様子を不安そうに見つめる純だが、そんな彼に悠里は声を掛けた。


「その自殺した友達の名前は?」

「在原貴音って言います。僕と同じ14歳っす……」

「……在原貴音?」


 それを聞いて、悠里は自分の携帯端末で何やら検索を始めた。

 そして、少しだけ顔を曇らせる。


「その子……明るい性格だったのか?」

「そうっす! 孤児院のおいらとも楽しく遊んでくれました!」

「……そうか」


 悲しそうに静かに答える悠里。

 嬉しそうに友達の事を語る純。


「何でもないことにも笑ってくれるいい友達でした!」

「……そういう友達が出来て良かったな」

「はい!……もう死んじゃいましたけど……」


 悠里の言葉に悲しそうに俯く純。

 そうこうする内にスールの準備が完了したようで、東山がヘルメットのような物を被る。


「じゃあ、スールしてみるな」

「お願いします!」

「うっし!」


 東山はそう言ってスールを開始した。


「……………………………………」


 その間にも、悠里はひたすら自分の携帯端末で何やら検索を続けているのであった。

 東山がスールすると同時に緑丸の前にあるディスプレイ画面にはスールの様子が見えるのだが……


「これは酷いわねぇ……」


 思わずエウマが言うのも仕方が無く、辺り一面が瓦礫の山になっていた。

 無残な荒野を不思議そうに見ている純。


「これって酷いんですか?」

「うん。だって、いつもならここに城門が立ちふさがってるはずだもの」


 そう言って完全に壊れている瓦礫の山を指さすエウマ。


「スールでは端末の入り口は城門になってるの。情報は城門の警備を通って出入りするから。ちゃんとセキュリティソフトが警備兵の形で現れるんだけど……」


 エウマが指さした先には無残にバラバラになった警備兵の死体があった。

 と言っても血が出ておらず、人形がバラバラになったように見える。

 エウマは顔を顰めながら様子を確認してぼやく。


「こいつは相当ひどいムハングね。何でも壊すだけの為のタイプだわ」

「……ムハングって何ですか?」

「スール用語で『電脳獣』って意味だけど、簡単に言うとウィルスみたいなものね」

「へぇー……」


 普通に感心する純。

 それに気をよくしたのか、エウマはしゃべり続ける。


「ちなみにこのアバターみたいなのは『化身オリム』って言うし、アプリとかプログラムのことは『電脳具アーリグ』って言うから。その辺はちょっと宇宙語になってるからわかりにくいけど、なれると簡単だから覚えておいてね」

「はーい」


 素直に返事をする純。

 さらに気を良くしたエウマが何かを教えようとした時だった。


「居たぞ!」

「えっ?」


 慌てて画面を見るエウマ。

 画面には大きなドラゴンのような生き物が映し出されていた!




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