狐の嫁入 その①

 狐さんはどうしようもない男である。まず、狐さんは車椅子ユーザーで、それ自体は良いのだが、軽い冗談でさえも車椅子ごとツッコんでくるのだ。普通に痛い。今すぐ止めてほしい。

 次に、狐さんはよく梳かれた漆黒の長髪を後ろで束ねて(自分で梳いているわけがない。事実、今日は僕が梳いた。)シルバーアクセサリーを身につけ、衣服の隙間から見える肌には模様が入っていた。

 見た目からしてガラの悪い狐さんは、あまつさえ職業が占い師だというのだ。それもほとんど売れていない。見た目は良いので、数人の固定客はつくのだが、それさえも関係をもって破綻する。

 狐さん曰く、車椅子ユーザーになったのも客と関係を持つのも、ひとえに怪異を祓う為だと言うが(そもそも怪異を祓うのは占い師の仕事ではない。)、はたして顧客を妊娠させるのが必要な行為なのか。あまつさえ、その人から逃げ出す様をまざまざと見せつけられて、(ぼくも手を貸した時もあるので同罪である。)信用できる要素がない。

 顔が良いだけのトラブルメーカー。口から出てくるのは嘘ばかり。胡散臭さの数え役満。それが狐さんという人間だった。

 長い付き合いとまでは言えないまでも、決して短い付き合いではないぼくでさえ、狐さんの本名はわからない。

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