第165話 嵐の前の静けさとはこのこと

 レヴィアタンと話ながら魔道具やスクロールの内容を煮詰めていると、いつの間にか身体の重さはなくなっていた。




「おし、ステータスの確認するぞ」


「オメーが何処まで強くなっているか楽しみだぜ」




 俺は楽しみ半分、緊張半分でステータスを確認する。その内容はこうだ。









レベル:594/999


種族:ナレハテ


基礎魔力:SS+


基礎物理攻撃:SS-


基礎物理防御:SS-


基礎魔法攻撃:SS


基礎魔法防御:SS


基礎俊敏:SS


スキル:剣術Lv.8 槍術Lv.9 斧術Lv.7 棒術Lv.9 鎌術Lv.7 槌術Lv.7 体術Lv.8 身体強化・異Lv.8 自己再生・異Lv.7 全耐性・異Lv.9 魔法陣・異Lv.9 錬金術・異Lv.9 魔力操作・異Lv.9 気配探知・異Lv.9 隠密・異Lv.6 料理Lv.5 幻影 飛行 言語理解 生活魔法 嫉妬の魔王


称号:魔王 真なる神の玩具









 はい。言いたいことはわかるよ。「ほとんど変わってねぇじゃん!」って俺でもそう思うもの。ステータスは上昇したけどそもそも基準が不明だから、もうこれわかんねぇわ。レヴィアタン曰く、ステータスは高くなるほど次のランクに上がりにくくなるらしい。かつての俺の予想は大当たりだったようだ。




「恐ろしいほど強いな。今の素のステータスだけで人魔一体時以上のステータスだ」


「マジでか。俺って強くね?」


「少なくともオレサマが知る限り最強だな」


「それは素直に嬉しいわ」




 やったね! 俺は強くなったよ。でも、不思議なことに安心できないんだ。アイナならニッコリ笑って追い抜きそうで怖い。で、スキルはコウモリ君の幻影のユニークスキルとムカデワニの自己再生と飛行スキルが付きました。他はレベル上昇のみです。言っておくけどレベル上昇は俺の努力だからな? 錬成前からこのレベルだったから。本当だよ? 俺嘘つかない。……ごめん、ちょっと盛った。2レベルくらい。




「新しいスキルは試すとして、称号がなぁ……」


「オメー、完全に気に入られたな。」


「愉快犯ド畜生下衆神に気に入られるとか最悪じゃん。疫病神と貧乏神に憑りつかれるよりひどいかもしれん」




 人が死にかけながら苦労してんのに玩具扱いとか、神ってやっぱり人の心とかないんか? え? 神は人じゃない? この神と同種とか最悪なのでナレハテでよかったと思うことにしよう。


 俺はステータスを閉じて立ち上がった。スキルの使用感を確かめようと思ったからだ。他にも魔道具を作ったり、作戦を練ったりしなければならず意外と忙しい。




「そんなに急いでも意味ねーだろ。それとも本気であのガキが来ると思ってんのか?」


「ああ、絶対に来る」


「そーかよ」




 信じられないとばかりに投げやりに言葉を発するレヴィアタンを連れ立って外に出た。まずはステータスの確認だ。そう思って少し駆け出した瞬間からステータスの変化に気が付いた。




「うおっ! はっや。100m走5秒6を切れるな。垂直跳びなら16m80㎝越えも余裕だわ」




 レヴィアタンが言っていたこともあながち間違いではなさそうだ。現時点で人魔一体より強いと思う。これに身体強化が乗るんだからえげつねぇな。これならどんな怪人もワンパンだわ。……やっぱワンパンじゃなくていいわ。禿げたくねぇし。


 ステータスの確認を終えた俺はスキルの確認に移った。飛行はそのまま飛ぶだけで面白みはなく、自己再生は痛いのが嫌なのでレヴィアタンから話を聞くのみにとどまった。残りの一つである幻影がとても面白かった。




「俺やんけ」


「目つきのわりぃ間抜け面が雁首揃えやがって」


「おい」




 自分と瓜二つの幻影を複数出して遊んでいたらレヴィアタンが暴言を吐いてきた。間抜け面じゃなくて愛嬌ある顔とかオブラートに包めよ。言い換えは就活で大事なんだぞ。それがわからない魔王には天罰を与えてやる。




「騙されろ!」




 俺は自身と被せるように複数の幻影を生み出してレヴィアタンの周りをぐるぐると回る。これはさぞかし鬱陶しかろう。




「オメーだな!」


「なぜわかる!?」


「魔力を見れば一発だ」




 レヴィアタンの振りかぶったねじれた剣を真剣白刃取して止めながら俺は気になって尋ねた。全部俺の魔力なので色を見ているわけではないはずなので気になったのだ。




「あん? オレサマは魔力の大きさを見ることができる。見比べれば一発でわかるのさ」




 あー、スライムに転生するファンタジーであったねぇ、そんなの。魔力を気合で引っ込めれば何とかなりそうじゃね?




「そんな簡単にいくわけ……何でできるんだよ!」


「この俺にかかればこんなもんよ」




 転生ものを伊達に呼んでないのさ。身体に流れる魔力を感じて、無意識に放出している魔力を己の内側に押し込めるなんて朝飯前よ。……なんてね。ネタばらしすると魔力操作の影響が大きい。滅茶苦茶精密な魔力の動きができるっぽい。




「あっ。いいこと思いついた」


「……オイオイ、それができたら魔法陣の概念がぶっ壊れるぞ」


「やるっきゃねぇな!」




 ちょっとした悪だくみを思いついた俺は実行してみた。そして、それが実戦に耐えうる代物であると判断できたので大満足である。




「これ超便利だわ」


「オレサマも使うか」


「使用料は高いぞ?」


「オレサマの切っ掛けがあってこその結果だろ?」




 それを言われると弱いなぁ。バチバチの特許云々の話をすると「知ったことか」で通せるんだけど、どうせできる人間なんてほぼいないだろうし勝手に使えばいいと思うよ。それよりも、まだいろいろやらなきゃならないことは沢山あるんだ。あー、忙しい。

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