第148話 策を練り 装備を整え いざ行かん
フフ、フハハ、フハハハハハ! ついにこの時がやって来たぞ。これさえ完成すれば俺は無敵だ。地上にのさばる愚かな者共を須く滅ぼし、この世界を我が手中に治めるのだ。俺は世界の覇王として君臨する!
「何言ってんだテメーは」
「覇王ごっこ」
「ついに壊れたか」
「褒めんなよ」
「せめてもの情けだ。オレサマが殺してやるよ」
ワァオ、お前そんな剣持ってたのかよ。グネグネしてひん曲がってるし、俺の性格みたいだな。……おい、誰が性格のねじ曲がった禿げか。まだ生えてるわ。
レヴィアタンは俺のおふざけにまともに取り合う気がなくなったらしく、空中に寝っ転がって大欠伸をした。
「で、アレをぶっ殺しに行くんだろ? 何でダンジョンに潜ってんだよ」
「アレ相手に今の俺の装備で大丈夫か? 大丈夫じゃない。大問題だ」
今、俺たちはアレを倒すために装備や魔道具を揃えている最中なのだ。今のままでは俺の“気杖”も性能が追い付いていない。あぁ、“気杖”っていうのは俺の武器ね。あの魔力で刃とか作れちゃうあの棒のこと。気丈をもじって付けたんだけど、気丈ってしっかりした気持ちって意味があるのさ。魔力で形作るのはしっかりとしたイメージを持たないといけない。なんか似てたから、そこから名付けたの。俺にしてはよく考えてると思わない?
「そーだな。オメーにしては、よく考えていると思うぞ」
「褒めんなよ」
「ソーダナー」
褒められちまったよ。さすが俺。なんて茶番はどうでもいいんだよ。アレをぶっ倒すためにはいろいろ足りない。何より魔道具以上に俺自身の強さが足りていない。ダンジョン攻略のついでに自身のステータスを下げる魔道具を使ってスキル上げもしたが、ちゃんと上がるようになったんだ。ちょっと感動したよ。
「そこまでして強くなろうっていう執着心は何処から来るんだろーな?」
「俺はここから」
「は?」
は? はこちらのセリフだ馬鹿野郎。色とりどりの風邪薬で有名なやり取りだろ? まったく、これだからテレビも見ない世代はさぁ。でもコイツ風邪とか無縁だろうな。魔王だし。
「そんなことはどうでもいいが、アレを倒す作戦はねーのかよ」
「レベルを上げて物理で殴る。以上」
「魔道具は?」
「それはなるべく使わないつもりだ」
何故か。俺が相手をするのはアイナだ。搦め手だけで完勝できる相手ではない。アイナも俺が魔道具を主軸にしてくることは想定済みだろう。少なくとも近接戦闘で戦えなければ俺に勝ち目はない。しかし、相手はアイナだ。生半可な戦闘技術では相手にもならない。だからこそアレに純粋なステータスで勝つくらいの事をしないといけないのだ。
「なるほどな」
「もちろん死ぬつもりはないから、ヤバくなったら魔道具を使う。だが、できる限りアレと接近戦をやるつもりだ」
「へー」
勝つために最善を尽くす。甘く見積もることはしない。甘く見積もって馬鹿みたいな仕事を持ってくる上司がいたからな。あれは地獄だ。ん? さっきから言っているアレってなんだ、だと? あぁ、空飛ぶ即死トラップね。え? 言っちゃうのって? 残念! 言っちゃうんだなぁ、これが!
「じゃ、さっさとダンジョンを踏破しちゃおうかね」
ステータスは減少中。それでも苦戦らしい苦戦はしないのだから、今の俺の強さはトチ狂っていると思う。
俺は目の前の大きな扉を開けた。中はだだっ広い闘技場のような空間だった。そして、中央には何やら白い大きな鎧が大剣を突き立てて仁王立ちしている。
「こりゃー、お誂え向きな相手だな」
「丁度いい。相手にとって不足なし。いざ尋常に勝負なり」
俺が一歩踏み出すと白鎧も動き始め、大剣を構える。俺も白鎧から少し離れたところで立ち止まり気杖を構えた。両者の間につかの間の沈黙が流れる。そして、まるで示し合わせたかのように、同時に武器を振るったのだった。
「あー、強かった」
「余裕だっただろーが」
そうでもないよ。白鎧のスキルレベルはたぶんかなり高かったと思う。ステータスでごり押ししながらずっと攻撃を受け流しつつ観察して、見様見真似で2日ほど戦い続けてようやく競り勝ったのだから。寝食を忘れて没頭したぜ。久しぶりの二徹だぁ。
「疲れたけど昔ほどじゃねぇな。人間やめた実感が湧いてきたぞ」
「今更か」
「今更だ」
いやー、ステータス云々じゃなくて人間やめた実感を得るのが徹夜とか変な気分だ。トイレとかの生理現象すら無視できるって相当よ。
俺は白鎧をマジックバッグに放り込んで、ついでに出てきた宝箱の中身も手に入れてダンジョンから出た。外は空が夕日色に染まっていた。
「今日はここで休むか。疲れたし」
明日は装備を整えよう。作戦と保険も考えて、魔道具もいろいろ考えて……。あー、やることたくさんあるなぁ。明日考えよ。明日から頑張るよ。
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