第72話 久しぶりのステータス
「ふぅー……」
俺はずきずきと痛む頭に手を当てながら息を吐く。今すぐにでも横になりたいところだが、ここは宿屋の廊下なのでそうもいかない。
ん? なんで廊下にいるんだ、だと? 話すと長くなるが聞きたいか? 面倒だろ? え? 聞きたい? えー、面倒くさ……。ま、聞くって言ったんだから聞けよ?
俺がアイナから渡されたデザインを基に、頭に浮かんだレシピに必要な素材を錬成し、計4着を製作した。ついでにスクロールや思い浮かんだ装備品を一通り作って、俺の魔力が底をつく。同時にアイナが服を着たいと駄々をこねて、結果、俺は部屋の外に追い出されてしまったわけだ。
「ふぅー……」
一気に説明したら疲れた。俺はいつまで廊下に立たされていればいいんだ。俺は授業中寝たり、テストで0点取ったことないぞ。
俺は手持ちぶさたなので、ここ最近見ていなかったステータスを見ることにする。結構な修羅場をくぐり抜けてきたのだから、そこそこ上がっているだろう。やっぱりステータスは期間を開けて見る方がワクワクする。
―
レベル:17/30
種族:ヒューマ
基礎魔力:C-
基礎物理攻撃:E
基礎物理防御:E
基礎魔法攻撃:D
基礎魔法防御:D-
基礎俊敏:D
スキル:剣術Lv.3 槍術Lv.4 斧術Lv.3 棒術Lv.3 鎌術Lv.3 槌術Lv.3 体術Lv.4 身体強化Lv.5 呪い耐性Lv.2 痛覚耐性Lv.3 魔法陣Lv.6 錬金術Lv.6 魔力操作Lv.4 気配探知Lv.7 隠密Lv.6 料理Lv.1 言語理解 生活魔法
―
お、おう。反応に困るぜ。レベルは折り返しを越えたが、Eが2つも残ってやがる。これは頑張ってもDが限界か……。そして、あれだけ伸びていた魔力も陰りが見えるな。1つランクが上がるのに必要なレベルが大きくなっているんだろう。体感だが、C+も行けば上等だろうな。
「はぁ……」
スキルは増えたなー。と言っても武器系統ばかりなのは納得できる。料理もまぁ、わからんこともない。だが、痛覚耐性とはなんだ? 俺が痛みを伴うような怪我をしたのって、それこそ空飛ぶ即死トラップの爆撃から逃げた時に刺さったガラス片くらいだぜ? はっ! まさか……アイナの脛蹴りが原因か? あり得るな。あれクソ痛いし。
俺はアイナの脛蹴りを思い出して、ぞわっとした脛を擦る。すると、着替えが終わったのか、アイナが俺を呼ぶ声がした。俺はステータスのことを思考の隅に追いやって、ノックをしてから部屋に入った。
「どうかしら?」
俺に気の利いた言葉を求めるとか正気か? と思った諸君。甘い、甘すぎる。それは対策済みさ。
「可愛さと大人っぽさを両立したデザインと、アイナの髪色が良く合っているぞ」
「うふふ、そうでしょう?」
アイナはクルクルとその場で一回転するくらいに上機嫌だ。しかし、よく似合う。衣装もそうだが、着ている素材が良すぎる。何着ても似合うんじゃなかろうか。
俺は新しいアイナの衣装を鑑定すると、かなりの高性能なものだった。最初に製作した衣装とタメを張るレベルだ。そう考えると、あの衣装も強化できそうだな。
「アイナ、最初に作った方の衣装を貸してくれ」
「え? な、何する気?」
何でそんなに警戒すんだよ。言っておくが、俺は異性が脱いだ服を見て発情する変態じゃないからな?
「強化しようと思ってな」
「できるの? そんなこと」
「できる。錬金術に不可能はほとんどない」
今のところ何でもできるから、錬金術マジ有能。素材と魔力がなければゴミだが、それだけだ。
俺はアイナから衣装を借りると作業台の上に置く。そして、品質を上げた金属繊維やメタボゴブリンから追い剥ぎした鎧と魔石、今の俺が用意できる最高品質の素材を乗せる。魔力が足りないので、魔力回復ポーションをがぶ飲みして錬成開始だ。
「で、できたぞ……」
「少し豪華になったかしら?」
見た目はほとんど変わっていない。だが、よく見ると素材そのものの発色が良くなり、手触りが段違いだ。スキルも大幅に強化され、様々な耐性が付与されている。おまけに魔力のリジェネ効果もついている。
俺はほぼ全快だった魔力が底をつき、さっきよりも酷い頭痛に襲われる。でも後悔はない。心の中でサムズアップだ。ぐはぁ……。
「すごいわ、この衣装!」
満天の笑顔を振りまくアイナをみて、俺の薄汚れた心が浄化されていくようだ。でも頭痛はなくならない。ぐぼぁ……。
しばらくは嬉しそうに衣装を抱きしめては見てを繰り返すアイナと、頭痛で横たわっている俺という混沌空間だった。
「アイナ、そろそろご飯食べに行くぞ」
「……そうね」
名残惜しそうに衣装をしまったアイナを連れて、一階の食堂に向かう。いつもより少し遅めだったからか、人が多いように感じた。俺たちは適当な席に座って給仕に晩飯を注文し、すぐに運ばれてきた。
「おー、パンにスープ、肉、サラダ。バリエーションは豊富だな」
俺は適当にフォークを肉にぶっさして食べる。意外と悪くない。美味い部類に入るぞ。パンは相変わらず固いが、あっちよりはマシだな。
「……悪くないけど、榊原さんの料理が恋しいわ」
「同感だ」
あー、アイナも出てきちゃったからシェフとの接点が薄くなった。どうしよう。どうにでもなるか。後で考えよっと。
俺たちは晩飯を楽しんだ後、素直に就寝する。尚、俺はアイナが寝息をたてはじめてから、錬金術で色々作業しましたとさ。
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