第6話 戦利品確認

「しかし、俺以外にも転移者がいたとはなぁ。鍵が閉まるのなら、鍵付きドアは全部人が居るのか……」




 俺は一階の探索をしながら、しみじみと呟く。一人ではない事が分かって嬉しい反面、人と関わる事が決定したのは、嬉しくない。




「鍵付きドアって幾つあったっけ? 10や20ではきかないくらい多かったと思うが……」




 数十もの人が一斉に転移してきたのだろうか。俺の住んでたい安アパートごと、とかではなさそうだ。あの顔に見覚えはない。ならば周辺地域ごと、かな。




「分からんことが多すぎる。情報収集は必須か……人と関わりたくねぇなぁ」




 はぁ……と盛大にため息を吐いた俺の心を慰めるように、レアアイテムが手に入る。




「マジックバッグ二個目か。スペアとして使わせてもらおう」




 少しテンションの上がった俺に、今までの階層とは違うものが視界に飛び込んできた。




「玄関……一階だから当然と言えば当然だが……。ドアは開くな。合法的に外に出られるわけか」




 出口のない建物でサバイバルだったら危なかった。確実に凄惨な殺し合いになるだろう。


 いざとなったら外に逃げることも選択肢に入れ、俺は探索を続ける。




「ん?」




 一階の探索も半分が終わったあたりで、俺は再び何かの気配を感じた。曲がり角の向こうからやってくる気配に、俺は手近な部屋に隠れる。今度はドアをしっかり閉じて、バレない様にしている。俺は学習しているのだ。


 その気配は曲がり角に来ると一度止まり、こちらに歩いてくる。


 おいおい、向こうも気配探知持ちか? 


 俺は再び棒を構えてドアを睨む。そのまま、その気配は俺の潜んでいる部屋の前を通り過ぎていった。




「はぁ、一安心」




 俺は額の汗をぬぐう動作をする。しかし、汗は出ていない。


 探知外まで気配が去っていくと、俺は探索を再開する。




「今の気配は茶髪君ではないな。となると、誰かが部屋から出て来たか。急いで探索を終えないとな」




 何度もあのやり取りをするのは面倒だ。それに、俺が資材を独り占めしている事がばれたらもっと面倒だ。考えるだけで嫌になる。


 気配が去ってからすぐには部屋を出ず、敢えて時間をおいて外に出る。周囲には誰も居ないようだ。




「一階が終わったら引き上げるか……」




 茶髪君と合流する約束はしていないから、問題ないだろう。かなり資材も集めたし、戦利品を確認したい。


 そこから俺はいたって真面目に資材回収に精を出した。一階は玄関が複数あったことからも、探索自体は想定より早く終わる。そしてその頃になると、複数の気配が徘徊するようになっていた。後姿を見たが、どうやら人間らしい。耳と尻尾が生えていたり、耳がとんがっていたがな。


 気配探知と隠密を駆使して、人目を避けて俺の部屋に戻り、一息つく。鍵を閉めて、バックパックを置き、ベッドにダイブした。




「最近、運動してなかったからなぁ。走ったわけでもないのに疲れたぁ」




 あー、と声を出していると、ぐぅ~、と別の声が聞こえた。




「そう言えば朝から何も食ってなかったな。あれ食ってみるか」




 ちなみに俺は、朝は食べない派だ。力が出ないとか皆の言うことが分かる。でも、朝何か食べると吐き気がするんだ。そう言う体質なんだよ。


 バックパックを開けて、金属の缶を取り出す。そして、カ〇リーメ〇トを一本手に取って齧る。




「口の中の水分、全部持ってかれる」




 やべーわ、これ。乾燥剤かってレベルで口が乾燥する。水必須だ。


 水筒を取り出して水を飲む。砂漠に恵みの雨が降ったかのようだ。




「味は微妙だな。食えるけど、好き好んで食べたくはない」




 意外と一本が大きく食べきるのも大変だったが、お腹はふくれた。もう一本食べたいとは思わない。




「さてと、戦利品を確認しますかね」




 俺はベッドに座り念じると、マジックバッグに入っているアイテムがリストアップされて出て来た。




「かなりあるな。我ながらよく頑張った。偉い、偉い」




 片っ端から確認するのは流石に骨が折れるので、武器や食料、雑貨といったものに大別してから確認していく。


 武器だけでもかなり多いが、俺が使えそうな武器は少なかった。そもそも武器なんて使った事の無い平和な時代の人間なのだから、どうしようもない。




「使えるのは各種ナイフと、あの剣だけか」




 美的センスの皆無な俺でも美しいと思った直剣があったはずだ。それ以外は大きかったり、形が歪だったりと、素人には難しそうなものばかりだ。


 マジックバッグから例の直剣を取り出す。そして、鞘から抜こうとしたが、どうあがいても抜けなかった。




「アァ! なんでだよ。武器に人を選ぶ権利でもあるってのかよ!」




 悪態をつく俺だったが、あ、と自身のスキルを思い出す。錬金術のスキルに良いものがあったはずだ。


 マジックバッグから小さな魔石を取り出した俺は、剣に魔石を押し付けた。すると、頭の中に直剣のデータが流れ込んでくる。


 フッフッフ、これぞ正に鑑定のスキル。魔石が必要で、直接触れさせなければ発動できないし、人間や魔物は鑑定できないという欠陥があるが、それでも十分だ。本来は製作品と素材の品質、属性の確認用だが、そんな些細なことはどうでも良い。




「ほぅほぅ。成長する剣か。ファンタジーらしいじゃない。で、えーっと、認められた者のみ、剣を引き抜くことができる、だと……」




 この世界では剣に人を選ぶ権利があるらしい。

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