第8話

 コブラは中村を担いだまま森の中を進んでいた。

「なあ、どこに行くの?」

「ん?ちょっとな」

コブラはある程度進むと突然止まる。

「どうしたの?」

「これこれ」

コブラは地面から何かを拾うと中村に見せる。それは中村の漫画だ。

「ああ。それか」

「つうことはこの辺が…」

コブラは右手を前に出す。

「よっこらせ!」

その掛け声と共に空中に穴が空いた。その穴からは家や青い空。元の世界へと繋がる空間が開いた。

「これ……俺の家の前じゃん…」

「じゃいくぞー」

2人はその場所から脱出した。


 中村の家の前でコブラは中村を地面に落とす。

「あだっ」

中村は体を起こし自分の家を見る。

「やっと…俺の家に……」

そんな感動の中、コブラは中村の服を掴む。そしてそのまま持ち上げ家の前に止めてあったバイクの後ろに乗せる。

「え?」

「いくぞー」

「え、え?」

中村が困惑するなかバイクを発進させる。

「えーー!!」


 コブラは公道に出てしばらく走った。

「おい、ムラスケ生きてるか?」

コブラが振り返ると中村はコブラの腰を掴んだまま眠っていた。

「着いたら起こすか」


 「……い」

声が聞こえる。

「おーい……」

男の声が聞こえる。

「おーい……か?」

体が動かない。目も開かない。

「おーい生きてるか?」

コブラの声だ。

「殴るか」

は?


 次の瞬間、中村の顔に衝撃が襲う。中村は声も上げれずその場に倒れる。そこで漸く目が覚めた。

 目を開けるとそこは知らない場所だった。広く真っ白い部屋。その場所に自分と2人の人物がいた。

 1人はコブラ。拳を下ろすその姿はいかにも自分が殴りましたと言ってるようなものだ。

 もう1人は女性。後ろ髪を縛った青い髪に水色の瞳。黒いスーツ姿で身長と胸の大きな女性だ。これだけだと普通に見えるがその右手には特殊警棒を握っていた。


 「えっと…どういう状況?」

中村が聞くとコブラは床に座る。

「ああ。質問したいのはわかるがその前にこっちの質問に答えてくれ」

コブラがすうっと息を吸っていると

「貴方はここで働きませんか?」

女性が話しかける。

「ちょっ!レイラさん!?俺が話しかけるところでしょ?」

「長いです」

「あ、すみません」

コブラはその場にシュンと小さくなる。

「それで?貴方はここで働きますか?働きませんか?」

(ここ?働く?何を言ってるんだ?)

中村が疑問に思っていると小さくなっていたコブラが立ち上がる。

「ま、簡単に説明するか。さっきの化け物いるやろ?それをぶちのめす仕事だ。やるか?」

「やりません」

即答。中村は即答で答えるとコブラは「そっか」と言ってポケットからスマホを取り出した。

「これ見てみ」

中村がスマホを見るとそこには1つのニュース画面が出ていた。それは博物館に泥棒が入り逮捕されたというニュースだ。そのニュースを下の方まで見ると2人の犯人が逮捕されたが後1人逃走中と。一見ただのニュースだ。別に犯人が逮捕されなくてもおかしくない。

 「これが?」

スマホを返しながら聞くとコブラはこう答える。

「実はなこの泥棒ってお前がバイトしてたところの博物館の話なの」

「へー…え?」

「でね?犯人2人は俺が銃のスタンガンで気絶させて博物館の前に置いて逮捕されたんだよ」

「うん」

「でね、最後の1人ってのがね。どうやら錆びた剣を盗んだ様なんだよ」

「ん?」

「で、その犯人の候補に中村っていう人物が上がってるんだよなー」

「え、まっ」

「あーあ。こりゃ自首するしかないかなー」

「待って待って」

中村が慌てて止めるがコブラは止まらない。

「さて、ここでお前に残された選択肢は3つ!」

3本指を立てて選択肢を言う。

「1つ目!自首して金を払うor逮捕される!2つ目!逃亡生活する!ラスト3つ目!ここで化け物と戦って暮らすこと!さあどれがいい?」

この選択肢に中村は考える。

(これ?まともなやつなくない?賠償金と逮捕。逃亡生活。あの化け物と戦う……。どうしよう)

「はい、10、9、8、7、6、5、4……」

「え、まっ」

「ちなみに選べなかったら俺が選ぶね」

「あっちょ」

「3、2、1」

「わかったよ!自首するよ!」

と中村は選択肢の1つ目を選んだ。

「じゃ3つ目な」

が、コブラはそれを無視して3つ目を選ぶ。

「選択肢の意味!」

「だって、その選択だと一生物の借金だよ」

「……ちなみにいくら?」

「まあ、その錆びた聖剣だけで……ざっと10億…いやそれ以上かも」

「じゅ、10億!?せめて1000万じゃないの!?」

そんな法外な数字に中村は驚く。

「その聖剣は世界に1本しかない古代から受け継がれた伝説の物だしなー。そんくらいいくよ」

「で、でも…でも戦うなんてそんな」

「まあ言いたいことはわかる。怖いし痛いしな。俺だって右手斬られて首斬られたしな。治ったけど」

(そうだ…こいつは腕が折れても首が切れても治ってる。それに…尻尾みたいなのも生えてたし右手が化け物みたいになってた)

中村は唾を飲み込むと質問をする。

「なあ?お前って何者だ?」

「俺か?俺は俺だ。じゃだめだな。そうだな…俺は化け物だ」

コブラの予想通りの発言に中村は「そっか」としか答えられなかった。

「ま、落ち着いて聞け。俺は人間を襲ったりしないしむしろ人間サイドだ。ウィーアーフレーンド!」

「わかったわかった」

「じゃこれにサインして」

コブラがそう言うともう1人の女性、レイラが1枚の紙とペンを渡してきた。その内容は『私、中村はバリアント(化け物)と戦うことをここに誓います。』と。

 「これ書いたら後戻りできないけどどうする?」

「……ちなみに給料とか休み聞いていい?」

「1ヶ月なにもしなくても最低10万。戦えばプラスで貰えてボーナス、有給あり、ケガをしてもその分の金は保証するしすぐに治してもらえるよ。休みは最低でも週に2、3回。ま、化け物が出なかったらずっと休みやな」

「……用はケガを速攻治して兵士のして戦えってか?」

「そゆこと」

中村はフウッとため息をつくと紙とペンを受け取る。

「……これ、何を書けばいいの?」

「……あ、やっべサインの欄書き忘れた」

 こんなぐだぐだな形で中村はコブラ達の仲間になりました。

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