第5話

5話

 そこにいた化け物は1体だけではなかった。その数、なんと5体。命懸けでなんとか1体倒せたのにそれが5体だ。中村は思わず逃げ出してしまう。

 しかし数歩走ったところでコブラが中村の襟首を掴み、そのまま地面に倒す。

「グェッ」

中村は首を押さえて背中から倒れる。

「おいおい逃げんな」

「そりゃゲッホゴッホ…逃げるで…ゲッホ!」

 そんな中村を無視してコブラは中村を立たす。

「いいか?さっきも言ったがアイツらは攻撃が効かんのだよ。俺は見ての通り素手だしな」

コブラは両腕を広げてそう言う。手には漫画を持ってるが意味はないだろう。

「だからお前がやるっきゃないの」

「でも俺運動神経ないから多分負けるよ」

「ムラスケ。本当はこんなこと言いたくないが聖剣と契約しろ」

「え!?」

コブラの予想外の発言に思わず驚く。コブラは中村の肩に両手を置き

「いいか。この状況を生き残るにはそれしかない。時間は稼ぐ。その間にうまくやれ!いいな?」

「契約って……そもそもどうやって?」

「聖剣の声を聞け!それしか言えん!」

コブラは中村から離れ化け物の方へと向かう。

「頼んだぞ」


 コブラは化け物の前に立つと化け物は足を止める。

「待たせたな」

「オォォォォ…」

化け物はうなり声を上げると同時に両腕が変化していった。

 全員の右腕が剣のように鋭くなり左手がボールくらいの大きさのでこぼこした丸いものに変化した。

「へぇ。今回は様子見じゃなくて本気か」

 それに対しコブラは漫画を近くの木に立て掛け、靴下を両方脱ぎ捨てた。

「さて、かかってこい」

そのコブラの掛け声と共に化け物がコブラを襲う。

 化け物の1体がコブラを左手で殴る。コブラはそれをギリギリのところで避けると腹に膝蹴りをしてカウンターを取る。すぐにバックステップで下がるとそこに2体の化け物が右手で斬りかかるがコブラは前転して避けるとさっき攻撃与えた奴にアッパーをしながら立ち上がる。さらに追撃で左手で殴り飛ばす。

 そんなコブラに4体の化け物が囲むように一斉に襲いかかる。

「チッ!面倒な!」

コブラはすぐに正面に奴に走りだす。そこにいた化け物が右手で攻撃してくるがそれも回避しその右手を掴む。

そんなの気にせずに3体の化け物はコブラに右手で貫こうと右手を伸ばす。

「はい残念!」

コブラは掴んでた奴を盾に使いその突きを防ぐ。その化け物は体を貫かれ消滅する。

「これで残り4た~い」



◆◆◆◆◆



 その頃、中村は少し離れた場所で聖剣に話しかけていた。

「聖剣返事しろ~」

念じるように話しかけるが聖剣はピクリとも反応しない。

「この前は声が聞こえたのになんで…」

剣を振ったりするが聖剣は何も反応しない。

 「合言葉か」

そう閃いた中村は剣を置く。

「まずは…開け!ゴマ!!」

しかし反応しなかった。

「じゃあアブラカタブラ!」

しかし反応しなかった。

「ご飯の時間だよー」

しかし反応(ry。

「聖剣よ!起動せよ!」

しかし(ry。

「我に力を!!目覚めよ!!力が欲しいか?…これはコブラみたいだな」

し(ry。

「だめかー」

中村は再び考え出した。



◆◆◆◆◆



 「ほいあぶねぇっと」

コブラは化け物の攻撃を避けて別の化け物にぶつけて倒す。

「残り2たーい。速攻で終わらすか」

 コブラは化け物に向かって走りだしそのまま化け物の顔を殴り、倒れそうになった化け物の腕を掴む。その隙をもう1体の化け物が逃すわけがなくコブラの背後から攻撃をしようと右手を構える

「そう来ると思った!」

コブラは素早く掴んでる化け物を盾にしてその攻撃を防ぐ。さらにコブラは掴んだ化け物の右手をもう1体の体に突き刺す。

「ゲームセット!!」

こうしてコブラは5体の化け物全てを倒してしまった。


 コブラは木に置いた漫画を拾い辺りを探し始める。

「あっれー?靴下どこ行った?」

適当にぶん投げた靴下を探してるとすぐに地面に落ちてるのを見つけた。

「おっ!あった」

コブラは靴下に駆け足で近づいた。

 靴下まであと少しってところで誰かが靴下を踏んで現れた。

「あっ!てめぇ俺の靴下に何を…ヤベッ!」

コブラがそいつに怒るが相手の顔を見た瞬間、コブラはすぐに後ろに逃げ出した。



◆◆◆◆◆



 中村は相変わらず契約方法を探していた。

「う~ん……言葉はダメだったし、ゲームじゃないからイベントゲットじゃないし…う~ん」

 腕を組んで頭を悩ませてると後ろから音が聞こえた。中村はすぐに剣を構える。

「誰?コブラ?」

相手の姿はどこにも見えない。その音がどんどんこっちに近づいてくるのがわかり、辺りを見回す。しかし誰もいない。

 中村は少しずつゆっくりと移動すると足音が一気に近くなり、後ろから音がするのがわかり振り返った時には遅かった。誰かが中村に飛びかかったのだ。

「うわ!」

中村はそのまま仰向けに倒れてしまった。何事かと目を開けるとそこにはコブラがいた。

「コブラ?」

「ムラスケ!ヘルプ!」

コブラからはいつものようなふざけてる感じはなかったのでただ事じゃないことがわかり立ち上がった。

「どうしたの?」

「ヤベーやつがいてな…なんとか逃げ切れたけど腕がやられちまってな」

「え?」

コブラの右腕を見ると服が裂かれそこから激しく血が出ていた。

「ちょっ!だ、大丈夫!?」

「一応深くはないから治るが……もう戦えねえや」

「ってかよく逃げれたね。5体もいたのに」

「ん?あれらは殺したぞ」

「攻撃効かないのでは?」

「それは置いといて、その後にヤベーやつが」

コブラがそう言うのとほぼ同時に正面から足音がした。

 そこにいたのは先程いた化け物とは違った。2メートルはある身長にコウモリのような羽の両腕に、長く大きな耳。そして吸血鬼を彷彿とさせる長い4本の歯。

 そこにいたのは正真正銘のモンスター化け物だ。

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