第17話 社内預金と組合預金(奥の手)

 この辺りでお給料事情をちょっと…

 みなさん、お給料ってのは自分が働いた労働への対価、全額もらえると思うじゃないですかぁ?

 いや、これだと誤解を生むな。もちろん全額払われますが、手元には来ません。

 確か本科生(15から18)は一律2万円、小遣いとして銀行口座に入ります。

 税金その他の経費を除き、あと〇万残っている。

 そこから朝昼晩と提供される食費を除き、組合費(上場企業なので全員組合員です)を除き、さらに組合で内緒で貯金しておいてくれる分を除き、残りは社内預金です。

 会社の経理が預かっていて、申請手続きが通れば下せるという…

 余計なお世話だと思うでしょう?

 でもこれ、ないと困るんですよ。年に2回の帰省費用、それもここから出ます。本人のお金なんで出て当然とはいえ、預かっておかないと使い込んで帰れなくなる人、続出という…

 けれど、給料日前はみんな余裕がなくなるため、適当な理由をつけては社内預金を下ろそうとする寮生と教務との駆け引きが行われていました。

 まあ、ここまでは可愛い話で、これが本科を卒業し専科生になると事情が違います。当時は20歳成人です。20歳過ぎると、カードローンが出来ちゃうんですよ。

 で、年に1人くらい、ちょっとシャレにならない状態になる子が出る。

 社内預金をはたいても返しきれない、なにせカードが10枚くらい出ちゃうんで。

 ここで役立つのが組合預金でした。組合預金は天引きされているのに気づいていない子が多く、途中で引き出せるものでもないのでガッツリ貯まっています。

 これで借金をきれいにして…

 ただここまでいった子は基本退社の方向になりました。

 繰り返す可能性が高く、次は奥の手もないので救えないからです。

 頑張ってくれているといいなとは思います。

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