第12話 甲乙丙

 甲乙丙ときて、

 「通知表?」と思えた人、お元気で何よりです。

 私の世代すら数字だったので。

 でも知識としては知っています。昔の通知表、『優良可』と同じ意味の『甲乙丙』だと。

 何をいきなりと思うでしょうが、実はまだこの呼称、使っていたんですよ、企業内高校では。

 さすが昭和の遺物です。

 通知表じゃなくて、働く時の班分けですが。

 働きながら学ぶ企業内高校では、研修が終わって正式に配属される時、新入生を2つに分けます。

 それが甲番と乙番。

 甲番が早番で働く時、乙番は遅番。乙番が早番なら、甲番が遅番になります。

 ここに深夜勤(22時から翌6時)の男性社員を加えて24時間工場を動かしていました。

 研修中に仲良くなっても、番が違えば休みの日以外で会えないと言う無情。

 ちなみに丙番は昼専(8時から16時)で、夜間の短大に通う人たちの番でした。

 しっかし、わざわざ甲乙丙って。

 ABCでも良かったのにさ。

 ただ最初は偶然で入った番であっても、暮らすうちにその色に染まるものです。

 甲はやんちゃ系、乙はおとなしいと言うイメージでした。

 ゆえに甲の方が途中退社率が高い。

 学校もこの番に分かれて学ぶので、基本甲の方がクラス人数が少なかった。

 甲番5人、乙番12人、みたいな。

 ああ、でも最大でも20人ちょっとだったように思う。

 小さな小さな世界ですよ。

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