めがねほしいの

mayopuro

めがねほしいの

自分で言うのもなんだが、私は眼鏡が似合う。

よく「眼鏡を外すと美人さん」みたいな人がいるけど、私はその逆だ。

だから絶対に人前では外さない。外すなら死んだ方がマシだ。


そんな私には今、悩みがある。

いつも帰り道で待ち伏せしてるあの小っちゃな男の子だ。

学校のみんなに聞いたけど揃って「そんな子見た事ないなー」と言われる。

そう、つまり彼はピンポイントで私を狙っているのだ。

狙っていると言うと「ストーカー?」と思うかもしれないが、半分正解、半分間違い。

彼は私ではなく、私の眼鏡を狙っているのだ。


今日も彼の前を通る。学校からの帰り道は1本しかない。

本当は2本あるんだけど、夏休み中に始まった工事が、なんか業者の怪我?で休止期間がどうとかなんとか・・で、とにかく長引いてて、それで1本道というわけだ。


・・・やっぱり今日もいた、彼だ。

小ちゃくて可愛い、でも伏し目がちでどこかミステリアスな男の子。

母性本能をくすぐられないと言ったら嘘になる。

無視できない理由はそこにある。


彼が言う

「おねえちゃん あのね ぼく えーっと めがね ほしいの」

はい、出ました。いつものセリフ。

この通り、彼は眼鏡を狙っている。

しかし私は外すわけにはいかない。「外すなら死んだ方がマシ」でお馴染みの私だ。

私も

「こっちが本体だから、取られたら死んじゃうよー」

とお決まりのヤツをかましてやった。

すると彼は「?」とよく分からないリアクションをする。

うーむ私のギャグはまだ君には早かったかな??・・・はぁ。

毎日毎日このリアクション・・地味に精神力を削られる・・。


3度の飯より眼鏡が好きな私は、眼鏡コレクターでもある。

家に帰ると、自分の部屋で眼鏡たちを崇め奉る日々だ。

この私の眼鏡コレクション・・圧巻である。

・・・・ん?ちょっと待てよ。この中から、適当に要らないヤツを男の子にあげればいいのでは?

なんてこった、こんなに沢山の眼鏡を毎日眺めながら、そんな解決法も見えてこなかったなんて、私の目は節穴だ。

しかし毎日話してるとはいえ内容は固定。彼の好みなど知らない。

機能性重視か・・オシャレ眼鏡か・・

まあ2つ持っていって選んでもらおう。

・・これと・・これ!

よし!やっと明日、終わるんだ・・。


今日も彼の前を通る。

だがいつもの私では無い。

タイプの違う眼鏡を両手に持って、私は彼の前に立った。

「おねえちゃん あのね ぼく えーっと めがね ほしいの」

「うん、あげるよ!ほら、右と左、どっちがいい?」

「おねえちゃん みぎ と ひだり どっちがよくみえる?」

「え? うーん、右の方が機能性高いから・・・右かな!」

「そっか!じゃあみぎをもらうよ!!」




「ありがとう!あのね ぼくね ずーっとね めがね ほしかったんだ!」


私の目は節穴だ。

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