「ああもう! 最悪!! 何なのあいつ!! ムカつく! ムカつく!! ムカつくムカつくムカつくムカつく!! 超ムカつくーっ!!」

「お、落ち着け一華」

「落ち着いてなんていられないわよ!! どいつもこいつも私を裏切って……どういうつもりよ!! 合唱コンクールで良い思い出? 笑わせないで!! 潰してやる! 明日の本番で、コンクールをめちゃくちゃにしてやるわ!!」


 校舎裏にて荒れに荒れている山崎達を発見。

 荒れるのも当然だろう、自分の事を無敵だと思っていた女王様が、下に見ていた一平民に、見事に出し抜かれたのだから。

 大荒れするのは当たり前だった。

 そして、合唱コンクール自体をめちゃくちゃにしようとするのもまた、当然の事で、想定内だ。


「コンクールをめちゃくちゃにって……どうやって」

「そんなもん、歌唄ってる最中に別の歌唄っちゃえば良いのよ!! そしたら今迄の練習が全てパーに……」


「やめとけ」


「っ!? プリンスっ!? 何であんたがここに!?」


 何でって? 決まってんだろ……。


「そんなテメェらを止める為だ」

「私達を……? ふんっ、やっぱりあんたも前田側に着いてるみたいね……だけど残念、私達を出し抜いた気になってるのかもしれないけれど、明日の合唱コンクールはめちゃくちゃにしてやるから、覚悟しなさい! 私達を敵に回したらどうなるか、思い知るが」

「うわぁ……ドン引きするぐらいの、負け犬ムーブかましてるじゃん……何かいたたまれなくなってきた」

「は、はぁ!? あんた今何て――」

「悪い事は言わねぇよ。お前ら、明日の合唱コンクールには参加すんな」

「はぁ!?」

「めちゃくちゃにしても、お前らの価値を落とすだけだ。そんなものに、何の意味もないから。やめとけ」

「価値を落としても! アイツにはやり返さないと気が済まないのよ!!」

「そんな小さなプライドには何の意味もねぇよ。いい加減気付け、お前は負けたんだ。前田未来の眩し過ぎる前向きな心の前にな。俺達はもう、来年からは高校生だぞ? いつまでも子供のままじゃいられねぇんだ。大人になれ――山崎一華」

「負けたとか勝ったとか、そんな事どうだっていい! アイツは絶対に許さない!!」

「許す許さないとか、程度の低い事言うなよ。分かってるだろ? 未来は、そんな低次元な争いなんて興味ねぇんだよ。それをした所で、糠に釘だ。何の意味もねぇよ……理解しろ。ちゃんとそういうのを学べ」

「でも……でも……!! うぅ……うあぁぁああんっ!!」


 号泣し始めた山崎。

 すまない……と、思う。


「お前をさせたのは、俺だ。だからこそ、俺はお前に厳しい事を言わざるを得ない……分かってくれよ、

「うわぁぁああーーんっ!!」


 これでもう……山崎達が合唱コンクールの邪魔をする事はなくなった事だろう。

 山崎や都築達も、そこまで屑じゃないと信じたい。


「それにしても……」


 俺は、太陽が燦々と輝く大空を見上げ、目を細める。

 目も開けてられないほどの眩さは、まるで――


「眩しいなぁ……」



 そしていよいよ、合唱コンクール当日を迎える。

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