第13話 ゼントVS不良少年デリック、ストリートファイト!

 俺はしぶしぶ、不良少年デリックの前に出た。この間、俺をいじめた少年の1人だ。

 ところが、デリックの後ろには、いつの間にか、もう1人、見覚えのある少年が立っていた。


(くっ!)


 仲間の背の高いバンダナ少年だ!


 リーダーのゼボールこそいないが、仲間を連れてきていたのか。


「おい、レジラー、見ろよ」


 デリックはクスクス笑って、バンダナ少年に言った。


「こいつ、この間の引きこもりだぜ」


 バンダナ少年はレジラーという名前らしい。くそ、このまま闘うとなると、2対1という構図になる。それでもやるのか!


「まさか、この親父を助けるつもりか? カッコいいねえ~!」

「ぐへっ!」

 

 レジラーは、道端に座り込んでいるブルビーノ親父を、足で小突いた。


「や、やめろ!」


 俺は叫んだ。


「なるほど、なるほど~、小デブ君、君は僕とケンカするってんだね? マジで」


 チョッキ少年のデリックはニヤニヤしながら、背中のさやから木刀を引き抜いた。


「──殴り倒してやらあ!」


 デリックはそう叫びながら、木刀を上段から振ってきた。

 ん? 遅い!


 俺はサッと右にけた。


「チッ」


 不良少年のデリックは舌打ちした。


「生意気にも、けやがって。じゃあ、本気でやるぜ?」


 今度はデリックの木刀、中段斬り! 木刀を中段に──俺の胴に向かって、横に振り回してきた!

 

 しかし、俺は木刀の動きをよく見ていた。


 ここだっ!


 俺は前蹴りを繰り出していた。俺の前蹴りの爪先が、デリックの木刀の刃先に当たり──。


 木刀は吹っ飛び、宙を舞った。


「な、なにいっ! てめええっ!」


 ガランッ


 木刀は、地面に落ちた。周囲の野次馬はシーンと静まり返っている。


「なめんなぁーっ!」


 彼は、あわてて殴りかかってきた。


 ──ここだ!


 ゲシイイッ


 俺はデリックの勢いを利用して、ヤツの太ももに下段蹴りを叩き込んでいた。


 太ももの外──ここを蹴ると相手は痛みをこらえることができず、動きが止まる!


「が、ぐ」


 デリックは案の定、足を止めた。──しかし、痛みをこらえて、ヨロヨロと向かってくる。


「こ、こんなのはまぐれだ……そうに決まってる」とつぶやきながら。

 

 俺は、ギチリと両手を構える。


「う、お」


 彼は瞬間的に、向かってくるのを中止した。冷や汗をかいている。俺から何らかの危機を察知さっちしたのだろう。そう──、俺はカウンターパンチを狙っていた。


「何をやってるんだ、デリック!」


 横で見ている仲間のバンダナ少年、レジラーが声を上げる。


「ビビってんじゃねーぞ!」

「ビ、ビビってなんかいるもんか! ちっきしょおおー!」


 デリックは、「うおおおーっ!」と声を上げながら、右拳を振りかざしてきた。


 がら空き!


 ドゴオッ


 俺はデリックの右アゴに、右掌底みぎしょうていを叩き込んでいた。掌底とは、手の平の下部で打つ打撃技だ。


 す、すげえ……自分で言うのもなんだが、どうしてこんな技が放てるんだ? これが……スキル?


「あ、ぐ、ぁ」


 デリックはそんな声とともに、地面に両ひざをついた。デリックはダウン状態だ。無理もない。アゴに掌底しょうていを受けたのだ。


「う、うぉっ……やるねえ」

掌底しょうてい……つまり掌打しょうだってヤツだ……!」

「見事に当たったぞ」

 

 野次馬たちが声を上げた。


 普通の拳の打撃技より、頭に響いているはずだ!

 俺はデリックを倒した──!

 

 だが、休んでいるヒマはなかった。


「この野郎がああっ!」


 俺とデリックの勝負を見ていたレジラーが、声を上げ、俺の胴に組みついていた。

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