続きそうで続かないかもしれないし続けるかもしれない
悪夢を見ることが増えた気がする。
眠るのが億劫になるほどにだ。
だが、人間は睡眠をとることで心身の疲れをとったり記憶を定着させたりと人として必要なものなのだ。
幼なじみに貰った変わったぬいぐるみを枕の横に置いて俺は布団の中に入った。
幼なじみであるアキヅキが俺の悩みを聞いて渡してくれたものだ。
バグという夢を食べる生き物のぬいぐるみらしい。
これで寝れるのならどれだけ幸せか。
まぁ⋯寝れたらなんでもいい俺は藁にもすがる思いでそのぬいぐるみに願った。
⋯悪夢が消えるようにと。
俺が最近見る夢は誰かに追いかけられる夢だ。
いつもどこかくらい所を走っている。
目が覚める前は決まって捕まって包丁で刺されたところである。
足に鉛が着いたように重たく感じる。
肺に酸素が入らずに苦しい。
怖い怖い!誰か助けてくれ!
「はぁ…はぁっ…うわ!」
俺は足がもつれて無様に転んでしまう。
その拍子で俺は追いかけてくるモノの顔を見てしまった。
荒い息に充血した目。
体は全身真っ黒なせいで真っ赤な血のように赤く染まっている白目が目立つ。
人間だと思えず俺は腰が抜けて立ち上がれない体をずるずると引きずって逃げようとする。
「アァ…ア」
「ひっ!」
俺の足をそいつは掴んできた。
そして引っ張って自身の場所に連れて行こうとする。
「やめろよ!離せ!」
ジタバタともがいても離れない。
包丁が目の前に見えて俺は抵抗ができなくなった。
体が強張って動かなくなる。
「殺さないでくれ!頼むから!」
包丁を俺の足にピトリと付ける。
冷たい刃物感触で吐きそうになる。
やめろやめろやめろ!
「あ、ああ…」
これが絶望なのか?
誰も助けに来ない夢の中だから?
夢の中なら刺されてすぐ起きる…もう辛いのは一瞬だけ我慢すればいいのではないだろうか。
「は、はは…」
心が壊れていく。
俺はただ目の前で自身の体が痛めつけられるのをあきらめるしかないのか。
「夢なら覚めてくれよ⋯」
俺は目をつぶり早くこの悪夢のような時間が過ぎることを祈る。
「随分とまぁ弱ってるのな」
俺以外の女の子の声がした、聞き覚えのある声。
刃物が足から離れていくのが分かる。
何が起きてるか分からず混乱する。
「そのまま目閉じてた方が良いんじゃない?怖いんでしょ?」
「あ、でも⋯」
「手震えてるじゃんやめときな強がりは」
手を握って俺を安心させるかのように優しく言う。
俺はその言葉に安心した。
聞き覚えのある声だからだろうか?
「なぁどこかで会ったこと⋯」
「この状況でナンパ?」
「ち、ちが⋯」
「冗談だよ。そのまま目つぶって羊でも数えててよ」
「何するつもりなんだお前⋯逃げようこのままだったら俺たち殺されるんだぞ」
俺の言葉に笑い声を返してきた。
こいつ頭おかしいだろこんな状況で笑って殺されるかもしれないのに。
「ふふっ…逃げれると思う?ここは悪夢の中だよ?目が覚めるまで逃げられない」
「目が覚めるまで逃げれば良いだろ!」
「目が覚めるまでは嫌よ学校あるんだから」
「夢の中なら寝てるんだから関係ないだろ」
「私は起きてるんだから関係大アリよ」
女はムスッと頬を膨らませて俺を見た。
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