不当な裁判

「さて被告人、何か言うことはあるかね?」


なんで僕は今こんなことに巻き込まれているのだろう。とりあえず僕を不当なる正義のもとに死刑に処そうという思惑の元始まった謎の裁判に僕の味方は一人としていない。


「裁判長、被告人に質問させてください」

「許す」


許可を出された光星は真面目ぶって咳払いした。


「被告人、あなたはどこであのような美女と出会ったのですか?」

「なあ、逃げてもいい?」


ぶっちゃけ、今日は大河がいないのでこの場にいる全員を殴り倒して病院送りにしてやってもいい。


「そうだ!リリーさんとどこまでいったんだ?教えてくれよ、俺たち友達だろ?」


人の情事を聞こうとするやつを友達にした覚えはないな。というか人の情事の話を聞いて何か満たされるのか?もしそうだとしたらめちゃくちゃ気持ち悪いんだが。


「なあ、乳首のい……」


僕は孔明が最後の一文字を言い終わる前に思わず拳で顔面を撃ち抜いてしまった。でも、人の彼女の乳首の色を聞こうとしてきた孔明が悪いんだし、僕は悪くないよねぇ?


「やりあがったぞ!和希がやりあがった!」

「出会え出会えー!」

「かかってこいやー!」


僕はそう叫ぶと僕を取り囲む男子全員に襲い掛かった。


***


「えーと、化田くん、何か弁明してください。何があったんですか?」

「弁明する気はありません。僕は反省も後悔もしていません。ええ、だってあいつらが悪いですもん」

「あいつらが悪いですか……」


先生は僕の言葉を聞いてこめかみをピクピクとさせる。僕は今職員室に呼び出されて広町先生から説教を受けている。


「半分以上の生徒が男子が鼻血を出したり鼻の骨にひびが入ったりしていても彼らが悪いというんですね?」

「もちろんです。僕は十分手加減しましたもん。もろすぎるのが悪いんです」

「もろすぎるも何も、殴る方が悪いですよ?それに相馬さんみたいなことを言わないでください」


こめかみをピクピクさせたかと思えば今度は頭に手を当ててため息をつく。さては先生疲れているな?


「クラスで数少ない常識枠……常識枠……常識枠?化田くんは常識枠になるんでしょうか?」


寧ろ僕が常識枠じゃなかったら何になるんだろう?


「とりあえず化田君の主張はわかりました。明日彼らにも話を聞いてみます。今日はとりあえず帰っていいですよ?」


後日、孔明が僕に聞いたことを包み隠すことなく先生に言ってくれたおかげで僕は一応情状酌量の余地ありとのことで僕は厳重注意ということでなぜか許された。

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