最強の助っ人
「ねえ、化田くん、買い出しに行ってくれない?」
俺が内装の仕事をひと段落つけて休んでいると最上さんが僕の方にやってきてから言った。最上さんは父親が暴力団の幹部で、母親は高校時代にヤンキーの頭を張っていたというなかなか血の気の多い家族構成らしいが、最上さん自身はかなりおっとりとした性格で男子に人気が高い。ただし、親があれのため誰もコナをかけようとする人はいないけど。
「いいよ、何がいるの?」
特にやることもなかったので僕は了承した。今は授業中なので本来学校の外に出ることはできないけど、この文化祭期間だけは例外でちゃんとした理由があって先生に申請すれば学校の外に出ることができる。買い出しはそのもっともたる理由の一つだ。
「今、フルーツポンチの試作をしてるんだけど、炭酸とか果物の缶詰が欲しいかな」
「わかったよ。ちょっと先生に言って行ってくる」
僕が行こうとすると同じ内装担当の輝哉から声をかけられた。
「どうしたの?」
「買い物に行くんだろ?大きめの木の板と釘とアイスが欲しい」
「アイスは要らんだろ」
アイスだけは絶対に私欲だろ。僕は絶対に買ってこないからな。
「いるだろ!こんなに暑いんだぜ!みんなをねぎらうためにも……ほら、和希なら「アイテムボックス」だっけ?それで隠せるだろ?」
買ってきちゃダメってことはちゃんと理解しているらしい。
「もし仮にできたとしても、ごみが出るから確実にばれるだろ」
「は?そんなの和希が隠してくれよ」
……僕の「アイテムボックス」にみんなが食べたアイスのごみを匿えと?
「絶対に嫌だ」
ただ、確か大きめの木の板なら「アイテムボックス」の中に入っていたはずだ。
「「アイテムボックス」」
最近僕も隠すのが面倒くさくなってクラスのみんなの前では平気で使っているため、僕がスキルや魔法を使っても誰も何も言わない。
僕は「アイテムボックス」から大きめの木の板を選択するとその場で実体化させた。
「おお!凄い!でも、なんでこんなものを入れてるの?」
「僕も知らない」
本当に、なんでこんなものが「アイテムボックス」の中に入ってるんだろうね。まあいいや、さっさと買い出しにいこう。職員室で先生に「買い物してきます」と言うとあっさり許可してくれた。もうちょっと厳しめなのかなと思っていたけど、結構甘めみたいだ。
急いだところで特に何かあるわけでもないので、僕はのんびり歩いて最寄りのスーパーに向かった。果物の缶詰数種類と炭酸を一ケースを買う。結構涼しくなってきたし気にすることはないだろうけど、僕はフリーズで凍らせるとそれらを「アイテムボックス」の中に放り込んだ。
次はホームセンターに行って釘を買う。ホームセンターに入って釘を探していると、布や綿を大量にかごに入れたリリーと遭遇した。
「リリー?」
「あ、カズキ!こんなところで何をしてるの?学校じゃなかったっけ?」
「事情があって買い物してるんだよ。リリーこそ何を?」
「お人形さんの材料を買いに来たの!こっちは便利でいいわね!向こうだと魔物とかの毛やら皮やらを加工するとこから始めてたから大変だったのよね」
待ってくれ、あの可愛らしい見た目の人形の正体はそんなにグロかったのか!?
「これでたくさんお人形さんを作れるわ!」
「た、楽しそうで何よりだよ」
そういえばリリーに手伝いを頼もうか?流川さんたち衣装組は人手が足りないってぼやいてたし、リリーは僕ら勇者パーティーの衣服の作成や修理もやってくれていたのだ。たぶんリリーなら即戦力になってくれるはずだ。
「ねえ、リリー、ちょっと僕らを手伝ってくれない?」
「いいけど、何をするの?」
「メイド服作り」
「やりたい!」
リリーは急いでかごの中のものを購入するとそれらを全て「アイテムボックス」の中に収納した。学校側はリリーの助っ人参加をまたもあっさり許可してくれた。
「おーい、買い出しいったついでに助っ人つれてきたよ」
「助っ人?」
聡太に怪訝な顔をされた。しまった、携帯持ってたんだし聡太に連絡を取っておいた方がよかったかも。
「衣装チームが死にかけてたでしょ?その助っ人」
「それは助かるわ!このままじゃ私たち死んじゃうわ」
「リリー=スケランツァです。カズキの彼女をやってます。よろしくお願いします」
『ちょっと集合』
リリーが爆弾を落としたせいで僕は男子ほとんどの手によって教室から引きずり出された。
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