職員室で

翌日、制服が届いたなら行けとせっつかれ僕は久しぶりに学校に行くことになった。……なんかこの言い方だと引きこもってたやつみたいだな。


僕は一応目立たないように魔法で変装している。『隠形』でも良かったのだけど、遠莉と絵美と話しながらの登校していたので二人を虚空に話しかける変な人にしないためにもこうするしかなかった。かなり早い時間を選んで登校しているので通り過ぎるのはウォーキングをしている人やランニングをしている人ばかりだ。


お母さんから学校に連絡はしてもらったので、学校側も僕が帰ってきていることは知っているはずだけど、今の僕は女の子なのでそこのところは自分の口から説明する必要がある。やっぱり先生の口からみんなに説明してもらった方が混乱が少ないだろう。騒がれはするだろうけど。職員室にいくと担任の広町三葉先生はすぐに見つけられた。


「広町先生、お久しぶりです」

「え?あなた、もしかして和希君?」

「はい。そうですけど」


広町先生の目がこれでもかというくらいに真ん丸に見開かれる。


「あのー、男子三日会わざれば刮目してみよと言いますが……女の子になることはないんじゃないですか?」


僕だって好きで女体でいるわけではないんだけど。ていうか、このカツラかぶってると蒸し暑いな!


「めちゃめちゃ汗かいてますけど、大丈夫ですか?クーラーは効いてると思うんですけど」

「すみません、登校中目立たないようにカツラをかぶってたのでそれで蒸してるんです。今取ります」


僕がカツラを取ると白くて長い髪がカツラの拘束から解放された。あー暑かった。僕が額の汗を拭っているのを広町先生はポカンとした表情でみていたのだが……


「ど」

「ど?」

「どーして私のクラスには面倒な連中しかいないんですかー!白い髪に美少女でおっぱい大きいなんて目立ちまくるに決まってるじゃないですかー!」


突如発狂し始めた広町先生を周囲の先生たちはかわいそうなものを見る目で見つめている。


「よっ!次期校長!抱え込んでる面倒事の質も量も桁違いだな!」


広町先生の向かいに座る傘崎先生が茶々を入れる。


「私は次期校長じゃありませーん!大学を出たばっかりの何処にでもいる新米教師ですー!」


「どこがだ!」という職員室の総ツッコミが聞こえてきた気がしたのだけれど、多分気のせいだろう。でも、なんだか広町先生がかわいそうに見えてきたので何かあったら優しくしてあげようと思った。

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