三月の5つのお題140

 診断メーカー「5つのお題でやってみましょう」より、三月にTwitter上で掲載した140字小説です。

 お題は「夜明けの散歩道/白い肌/首輪/発狂/道連れにしてあげる」。


●夜明けの散歩道

 あまりにも早くに目が覚めた。再び寝る気にはなれず、かといって特にすることもなかったので、外に出ることにした。

 薄闇に沈む町。白む空に星が消える。

 ぬるい風が吹いたと思ったら、あっという間に地平から日の光が差し込んだ。

 新しい一日の始まりを目撃した散歩道。

 今日も良い日になるといい。



●白い肌

 もともと抜けるような白い肌だと思っていたが、雨に濡れるとまた格別だった。水分を含んだ肌は艷やかかつ滑らかで、陶磁器を彷彿とさせた。

 思わず触れそうになった指先を引っ込める。彼女はどこか壊れ物のようだった。

「寒いね」

 口元から漏れた白くか細い溜息が彼女が生身であることを知らしめた。



●首輪

 服を着せるという手もあったかもしれない。けれど、それよりも〝らしい〟おしゃれは首輪だと私は結論づけた。

 これまでなんの飾り気もなかった古い青の首輪。

 今日からは新しいものになる。

 白く細い首によく映える、赤く太いベルト。飾りのリボンがとてもチャーミング。

 やはり犬のおしゃれは首輪だ。



●発狂

 赤黒い闇の中、ぼうと佇む白い人影がある。それが最愛の人の姿と知って駆け寄った。

 呼びかけても無反応なその人。抱きつこうとした瞬間、私を躱すかのように背中から倒れこんだ。

 後頭部から血溜まりが広がる。その人は無表情に血の涙を流す。

 どうしてこんなことに。訳も分からず、私は叫んだ。



●道連れにしてあげる

 相手の喉元を掴み、欄干から身を乗り出す。眼の前に広がるのは暗い海。今から私はこの人と一緒に海の泡になって消える。消えたい。そうするしかない。

「離せ!」

 叫んでいるけれど、どうして言うことを聞いてあげないといけないの?

 全ては貴方が私を選ばなかったから。だから私は貴方を連れて行く。

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