十一月の5つのお題140

 診断メーカー「5つのお題でやってみましょう」より、十一月にTwitter上で掲載した140字小説です。

 お題は「ひとりぼっち/泡のバスタイム/眠れない夜/自傷行為/誰も居ない空間」。



●ひとりぼっち

「あの子、いつもひとりぼっちだね」

 私の向かいに座った〝親友〟は、教室の入口の席で一人でお弁当を食べている生徒に憐れみの目を向けた。

「友達いないのかなぁ」

 可哀想、とだけ言って、親友はその後も私を相手にお喋りを続けた。

 お弁当を食べ終えたあの子は本を取り出した。いいなぁ。羨ましい。



●泡のバスタイム

 濡れるのが大嫌いな我が子。浅い側溝に落ちたときの慌てぶりは、今でも話題になるほどだ。

 そんな子でも、お風呂は好き。バスタブの中で膝まで浸かっても、泡だらけで満足そうに目を細めている。シャワーがかかっても大丈夫。

 灰色だった毛並みは金色に。

 今からまたしばらく美人、いや美犬さんだね。



●眠れない夜

「もう。寝ないといけないのに」

 明日はデート。万全の状態で望まなければいけない。だから、寝不足になってはいけないないのに。

 胸はとにかく高鳴って。頭の中は妄想だらけ。目は冴えてとても眠れやしない。

「あーもう、今すぐ会いたい!」

 布団の中で悶える。いっそ夢の中でいいから会えないかな。



●自傷行為

 痛いのは嫌い。血を流すのは怖い。見せびらかしたいわけじゃない。訴えたいわけでもない。

 それでも私の手は、カッターナイフを求める。

 怖々と肌に刃を滑らせて、浮かび上がる赤い筋に安堵する。

 ただ傷が欲しいだけだとは誰も信じてはくれない。そうしないといられない衝動を誰も理解してくれない。



●誰も居ない空間

 伽藍としたその部屋にあなたの痕跡を求める。何も載っていない机。布団のなくなったベッド。温もりを求めてあちこち触れてみるが、どれも冷たい反応ばかり。残り香さえ捉えられない。

 ああ、あなたは完全に居なくなってしまったのだ。

 寒く広い空間の中、孤独を噛み締めた口元から温かいものが流れた。

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