秋の雨にアップルティー

 さっきまでお日様が照っていたというのに、いつの間にか雨が降り出した。サァ、と静かな音が、水の匂いとともに窓の向こうから入り込んでくる。

 なんとなく外を眺めていると、お茶を淹れていたアミが窓を閉め始めた。

「奥様、寒くありませんか?」

 振り返った彼女は、気遣わしそうに声をかけてくれる。

「いいえ、大丈夫。でも、ありがとう」

「すぐに温かいお茶をお出ししますね」

 そう言って、ポットからティーカップに紅茶を注いでくれる。きれいな赤い水面から白い湯気が立ち上った。

 取手を摘み、紅茶を口に含む。リンゴの香りが付いたお茶は甘く、思わず笑みが零れてしまう。

「美味しいわ」

 そう言ってあげると、アミは嬉しそうに笑った。

 紅茶をもう一口含んで、窓の外に目を向ける。赤や黄色にと鮮やかな秋の色を見せてくれている庭に、雨は静かに降り注ぐ。この時期の雨は特に冷たい。ふと、出掛ている夫のことが気になった。

 彼はもうすぐ帰ってくるはずだ。

 雨に打たれていないといいのだけれど。

「ねえ、アミ」

「はい、奥様」

 よくできたメイドの彼女に、主人のためのお茶を頼む。彼女は快く頷いてくれた。

 そうして主人のことを考え始めると、急に彼が恋しくてたまらなくなってしまう。早く帰ってこないか、と思いつながら、甘く温かいお茶を口に含んだ。



―・―・―・―・―・―

即興小説トレーニング

お題:紅茶とにわか雨

制限時間:15分

挑戦時完成度:完成

※投稿に際し、誤字を修正。

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