「空色の言の葉」応募作

七月の空色140

ぺんぎん系Vtuber 天野蒼空さんの募集に応募した140字小説です。

七月のお題三つ分。



●天の川

 天の川から、カササギが下りてきた。

「橋渡ししなくていいの?」と尋ねたら、そっぽを向いて飛んでいった。

 去った鳥の視線の先を追う。道の向こうに男の人が立っていた。

 喧嘩中の彼だ。

 窓の笹の願い事は『仲直りできますように』。

 あのカササギは、私たちの橋渡しもしてくれたのか。



●ハイビスカス

 また一つ恋が終わった。落ち込む私に庭いじりしていた母が笑う。

「終わったことよ。忘れてしまいなさい」

 そうして海風に揺れる赤い花を摘み取った。

 母は、私が失恋するたびに花を摘んでくれた。

 そうして最後に残ったハイビスカスは、陽の光の下でいっそう美しく咲き誇り、花嫁の私の髪を飾った。



●海

 目の前に現れた灰色の海に、僕は旅の終わりを悟った。故郷から逃げ出して幾星霜。これまでの苦難が波に洗われていく。

「ここまでか……」

 地の果てで、波で膝を濡らす僕に、隣の友人は異を唱えた。

「なに言ってんだよ。まだこれからだろ」

 彼の眼は、水平線の向こうに広がる世界を見据えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る