第12話 みんなの力
コレだから、モテない非リア充な女はダメなんだよ。
免疫がないから、ちょっとした言葉に引っかかって…恥ずかし過ぎる!!
私は頭を左右に振った。
雑念よ!飛んでいけ!私は勇者様一筋なんだから!他の、しかも年下にドキドキしてる場合じゃない!
翌日、私たちは学校の周辺で聞き込みを再開した。
通り過ぎる生徒たちにいろいろ聞いてみたが、ながらスマホで歩いていたり、友達とおしゃべりしていたりで、目撃情報がほとんど出てこなかった。
わかりやすく肩を落とすヒロくんの背中をポン!と軽く叩いて笑顔を見せた。
「二手に分かれようか、私あっちにいる人に聞いてくる」
そう言って反対側の歩道に歩いて行った。
警察だって、なかなか証拠が見つからないのに、素人の私たちでは所詮無理があるんだろうか…ヒロくんを励ましたものの、私の方が本当はうまくいかないかもって思って不安になってる。弱気になっちゃダメだ。
それからも、何人かに聞き込みをして回った。
「真琴さーん!」
ヒロくんが手を振りながら、私を手招きしている。駆け寄ってみると、
「彼女」と言ってヒロくんが両手で指し示した。彼の横に髪の長い可愛いらしい女の子が顔を赤らめて立っていた。
「彼女?えーーー!彼女いたの?」
「そんなに驚きます?」
ヒロくんが膨れっ面をしてみせた。
あ…あざと可愛い!なんてこった。ヒロくんは中学デビューしたばかりで、もう彼女をゲットしていたのか…あー、なぜか微妙に負けた気がする。
「真琴さん!そこじゃなくて!彼女、僕のクラス委員なんだけど、有力な情報が…。僕も彼氏として、いじめを受けてた事、恥ずかしくて言えてなかったんです…でも、事件の日!本当は高杉先生と今度の校外学習の事で、クラス委員や役員たちと会議の予定があったそうなんです。」
ふむふむ。詳しく話を聞いてみると、本来あった会議の予定を急遽キャンセルして、どうやらヒロくんの救出に向かったらしい。
しかし、いつもの冷静さを欠いた父の態度がとても気になったと言う。
しかも、後になって会議の議事録のために用意したボイスレコーダーが無くなった事に気がついたそうだ。あらゆるところを探したそうだが、見つからなくて。もしかしたら、父に渡した書類袋の中に、書類と一緒に間違って入っているのではないかと言うのだ。
「確かではないんですけど、他にどこにも見当たらなくて…あと考えられるところと言えば、そこくらいなんです。で、先生に確認しようと思ってたのに、ずっと欠席されてたのでとても気になっていて…ヒロくんもあれ以来元気がなかったから…本当はすごい心配してたんです…ありがとうね。ヒロくん、話してくれて…。」
そう言って真っ赤になって、上目遣いでヒロくんを見つめた。そんな彼女に、ヒロくんもメロメロのようだ。私の目の前で、イチャイチャし始めた。
「うううう〜ん」
私は分かりやすく咳払いをすると、
「と言うことは、父のカバンに入ってる可能性があるのね。」
2人は慌ててイチャイチャするのをやめた。
「はい!そうなんです。」
******
翌日、ヒロくんの学校に向かうと大勢の人だかりが出来ていた。
「真琴さーーーーん!」
人だかりの中から、声が聞こえた。
大きく横にブンブンと手を振っていたのは、ヒロくんだった。
「どうでしたか?」
ヒロくんは期待いっぱいな顔で私を見つめた。
「残念だけど、なかったわ。」
私は落胆の様子を隠せなかった。
「そうですか…」
ヒロくんも同じだった。
「で?どうしたの?なんの集まり?」
なんとなくみんなの視線を一身に集めているようで、視線が痛かった。私なんかどこかおかしいかな?
「実は昨日クラスのみんなに話をきいてもらったんです。そしたら、高杉先生の名誉回復のためならって、みんな集まってくれたんです。」
「そうです!高杉先生は疑われるような人ではないです!真琴さんもお辛いですよね。」
「そうだよ。あんなに良い先生はいないよ。俺たちみんな助けてもらって来たんだ。今度は俺たちが先生を助けたいんだ!」
みんなが口々にそう話した。
私はうっすら涙を浮かべた。父さん!信用無くしてなんかいないよ.みんな、父さんのことちゃんと信頼して慕ってくれてるよ。父さん!
「みんな!ありがとう!」
するとヒロくんの彼女が突然、
「現場へ行ってみませんか?」
明るく、両手でガッツポーズを作った。
「それは、もう行ったよ…」
ヒロくんが低いトーンで応えた。
「んー、でも確かにもう一度行ってみよう!犯人は現場に戻るって言うでしょ?」
「真琴さん!なんか、全然意味合い違いませんか?」
「ものは試しよ!行ってみよう!」
「そこまでの道もみんなで手分けして探せば、いろいろ目につくかもしれないし!」
みんながそう言ってくれた。
******
現場の周り、そして現場をみんなで手分けして、何か手掛かりがないか探して回った。
「やっぱり何もないわね。」
私はため息をつきながら、額の汗を拭った。
「あったとしても、警察が押収してるでしょうしね。」
ヒロくんの冷静な言葉が胸をチクッと刺した。
「他にどこか見落としてない?」
私は他のみんなの方に振り返った。
「おい!片桐!この下、なんかあるぞ?」
「え?」
「なんかこの物置の下に何か見えるんだけど…」
そこは、ブロックの上に物置が置かれていたので、下に隙間ができていた。
「スマホのライトつけてくれる?」
「本当だ!なんかある!」
ガタイのいい男の子が寝そべって手を伸ばしたが届かない。
ヒロくんが資材置き場から、細い棒切れを引っ張り出してきた。そして、物置の下からその何かを掻き出してみた。
「あ!」
みんなの声が揃った!
「ボイスレコーダー?!」
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