第7話 告白
私、どうしたの?何、血迷ってるの?
今、先生に何言おうとした?
ダメダメ。今はまだ絶対にダメ!
私が生徒である以上、先生は絶対に私を受け入れてくれない。なのに、何、雰囲気に飲まれてるの?
この勝負絶対に負けたくない、焦っちゃダメ。
そう自分に言い聞かせていると、部屋のドアが開いた。
「真琴ー。お見舞いにきたよー。」
「よっ!高杉!」
ドアから、かおりと佐野くんが顔を出した。
「じゃ、俺は先に帰るな。高杉。明日は来いよ。」
そう言うと先生は帰って行った
私が、はあーと大きなため息をつくと、
「なになに?密室で先生となにかあった?」かおりが興味津々で聞いてきた。
「そんなはずないよ。」
私はがっくりと俯きながら答えた。
「そりゃ、そうだよなー。高杉と先生が何かあるわけないじゃん。先生と生徒なんだしな。」と佐野くんが早口で言った。
「それも、そっか。でも、思ったより元気そうでよかった。真琴が休むの初めてだし、居なくて寂しかったよー。」
そう言うかおりのセリフに驚いた。
「え?私が居なくて?寂しかったの?」
と驚いて聞くと、
「そりゃ、そうでしょう。学校なんて、友達がいなかったら、勉強ばっかりでつまんないよ。」
そんな事を生まれて初めて言われた私は、
「かおり!ありがとう!」と言って、抱きついた。
「え?ああ、どういたしまして。」
かおりは私の行動に真っ赤になって照れていた。
「あーじゃあ、私ちょっと用があるから、先に帰るね。真琴、明日学校で。」
急に棒読みのセリフみたいに、挨拶をするとサッサとかおりは帰って行った。
私が何だか妙な違和感を感じていると、しばらく沈黙していた佐野くんが、急に大きな声で言った。
「高杉。」
「はっ…はい。」
「俺、お前のことが好きだ!入学式の時から…無表情なお前が、たまに笑う顔がドキッとして…俺、もっともっと毎日お前のこと、笑顔にしてやりたいと思ったんだ。そんなお前の側に居たいんだ。」
予想してなかった展開にめちゃくちゃ驚いたのに、私の脳内は別の事を思い出していた。
そう言えば、先生にも同じ事言われたな。先生も佐野くんと同じような気持ちで言ってくれたの?
「高杉?聞いてる?」
「え?あ、ごめん。突然の事で驚いて…」
「そっか、そうだよな。返事は急がないから、俺と付き合う事、考えてみてくれ。」
「わ、わかった。」
「じゃ、お大事に。これ、今日のノートな。これは、かおりと交代で書いたんだ。」
「そうなんだ。ごめんね。ありがとう。」
そう言って、照れながら慌てて帰る佐野くんをベットから見送った。
何だか、急にいろんなことがありすぎて、ちょっと混乱してる。
もしかして、先生。私に少しは脈がある?だよね?だって、お姉ちゃんのことは否定してたのに、私のこと可愛いって、ドキッとするって。
きゃーーー。これは、そろそろファイナルステージかも?と私は落ち込んでいたのも忘れて浮かれていた。
先生への気持ちが膨らむばかりで、私は不誠実にも、佐野くんからの告白をその時はあまり深刻に受け止めきれていなかった。
だって、答えは決まってるから。
******
数日たったある日の放課後、正門にとてもスタイルの良い大人の雰囲気の女性が立っていた。
白いパンツスーツが似合っていて、とてもカッコいい。
他の女子高生が、そこを通りかかると、
「水野先生いらっしゃるかしら?ちょっと呼んできて欲しいんだけど。沙織って言えばわかるわ。」と言ってサングラスを片手で外した。
「は、はい。わかりました。」
すごい美人で、モデルみたいにかっこいい!あまりの迫力に女生徒は圧倒されていた。
しばらくして呼び出された水野先生が校舎から走ってきた。
周りはみんな少し離れて群れになって、その様子を伺っていた。
「何?何?なんの騒ぎ?」
騒ぎを聞きつけ、私もかおりと駆けつけた。
すると、2人は深刻な様子でヒソヒソと話し始めた。しばらくすると、水野先生が急に駐車場に向かって走り出したと思ったら、その女の人を助手席に乗せて、車で走り去ってしまった。
「わあーー。何、今の?」
「ヒューヒュー。」
正門周りはすごい騒ぎとなった。
その翌日は、もちろん水野先生の噂で持ちきりだ。
「たしかに髪は長かったけど、前の噂とはどちらかと言うと正反対よね?」
「髪が長くて、ナチュラルメイクの似合う清楚系の知的な女性でしょ?でも、今回はどちらかと言うと、髪は長かったけど、しっかりメイクのカッコいい系の女性でしょ?ちょっと年上っぽかったよね?」
「女子高生に興味ないとか言って、年上好みだったの?いやー。」
「どっちが本命?先生、もしかして二股?もっといやー。」と、口々に噂が飛び交った。
ファイナルステージかと思いきや、ここに来てまさかのラスボス?
はあー、どうしたらいいの?
私は困惑した。やっぱり私じゃ、ダメかも。このまま戦わずして、途中棄権?
するとそこへ、佐野くんが
「おはよう。」と声をかけてきた。
あれ以来、まともに顔を合わせるのは久しぶりだ。しばらく、佐野くんは照れてる様子だったし、私も少し避けてたところがあったから。
「おはよう。」
「水野先生の噂で持ちきりだな。」
「そうだね。正門前で派手にやってたもんね。」とぎこちなく笑うと、
「俺、やっぱり早まったかな。高杉に、そんな顔させたかったわけじゃないのに。」
「え?」
「気まづいよな。」
「いや…そう言うわけじゃあ…」と言葉を濁すと、
「一回だけ、一回だけ、俺にチャンスをくれないか?キチンとデートしよう。それで、俺の事ちゃんと見てくれ。」
真剣な顔をして見つめられ、断われず、
「わかった。」と言ってしまった。
結局その日、水野先生は欠席だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます