32 ゲームの製作者
俺とラザードは、アマンダと
「はじめまして、皆さん。アマンダ、君の事もよく知っています」
「どういうことですか?」
「僕は言うなれば予言者。未来の可能性を見た時に、アマンダのことも、ね」
「予言者……? あなた、もしかして予言者クリストファーですか!?」
「知っているの、アマンダ?」
「ヤマトが初めて転移してきた時の場所と時間を予言したのがクリストファー」
「ははっ、それは私があなたの世界で残してきた最後の仕事ですね」
促され、俺たちはとりあえずベンチに座った。
「僕は元々はカレンの世界の人間なのですよ」
「えっ!?」
思わぬ情報に、カレンは驚く。
「僕には、未来を見る力があった。古代兵器ゼーデルガイナーを巡って起こる争いの未来を見ました。カレン、あなたはその可能性の中では中心人物だったのですよ」
「でも、現実はそうならなかった。そうだね?」
クリストファーの言葉にラザードが返した。
「ヤマトさんの最初の転移の場所と時間とか、確度の高い未来も見えるのですが、僕の見る未来のほとんどは可能性に過ぎない。必ずそうなるとは限らないのです」
クリストファーは笑った。
「確かに、結構、違ってましたよ……?」
「ロベルトもアマンダも、俺の知っている物語の登場人物とは別人でした……」
「物語は僕一人で作ったわけではない。大枠は僕が作りましたが、細かい性格設定とかは他のスタッフが好き放題いじくっていた。ギャルゲーだからとか乙女ゲームだからとか、そんなことを言っていましたね」
「な、なるほど……、登場人物が
そのせいで俺がどんなに苦労したことか! バカスタッフめ!
「別人って、私たちが出てくる物語って、どういうのなの?」
「俺も気になる、かな?」
「い、いや、当事者たちは見ない方がいい、多分!」
アマンダ、ロベルト、俺が順に言った。
「さて、お分かりの通り、僕はロベルトとアマンダの世界の未来の可能性も見てしまいましてね。なかなか面白い世界だと感銘を受けたことで、私はそちらに転移することになりました」
「なるほど、確かにそれは転移条件になるかもしれぬな」
クリストファーとラザードが言った。
「最後に、あの世界にこの日本から誰かが転移する未来を見て、その情報を残した後、私はこの世界に転移しました」
「そして、いずれ転移する者のために、二つの物語を作った、と」
「そうです。結果、僕の見た未来の可能性のいずれからも大きく外れていますが、それも世界の意志だったのかもしれません。僕の見た世界救済の可能性は恐らく実現確率が低かった。三つの世界が絡み合った今の方が、よっぽど可能性があると思います」
確かに、現実のロベルトとヒロインたちが相思相愛になるのは、難しかっただろう。頑張った俺がそう思うんだから間違いない!
「
「だったら、
「ミキのことをサポートするため、とかじゃない?」
美樹にアマンダが言った。
「う、うん……。確かに私一人だったら詰んでたかもしれない。翔には助けられたわ」
「レスリー様は、世界が滅びを拒もうとしている、って言ってたわ。だから、カケルをサポートに付けたんじゃないかしら」
美樹の言葉にカレンが続いた。
「最近はもう未来を見ることもなくなった。だから、この先、勝利に辿り着けるか、それをお伝えすることはできません。ですが、君たちならやってくれると、そう信じています」
クリストファーがそう言って情報共有は終わった。
ラザードは、俺たちをラザード精神クリニック近くのホテルに案内した。通常の転移の場合、ここまでサポートする事はないらしいが、今回は世界の存続がかかっているので、かなり予算を取ってきているということだった。
男子部屋、女子部屋を用意してくれ、さらに、どれだけお金を使っても構わないという大盤振る舞いだった。
「じゃあ、レストランは一番高いコース、行っちゃう?」
「いいね、こんな機会だしね!」
俺と美樹はそう言い、全員で大浴場で風呂を済ませてからレストランに向かった。
「うわ、美味しい!」
「ほ、ホントだな!」
「っ……!?」
アマンダ、ロベルト、カレンが凄い顔で料理を頬張っていく。俺と美樹も夢中で食べた。本来、高校生がおいそれと頼めるコースではないのだから。
男子部屋に戻り、備え付けの歯ブラシで歯磨きをしていると、ロベルトが
「くそっ、準備良いな、ロベルト」
「二度目の失敗はしないさ」
「あー、ベラの宿に置いてきちまったい!」
朝食の最中に転移してしまったから、俺のトゥーザーは宿の部屋に置いてあったはずだ。そういえばショットガンもだ。俺の荷物は、寮に運んでくれているのだろうか。
歯磨きを終え、ロベルトと雑談しながらベッドでダラダラ過ごしていると、女子勢がやってきた。決めるべき事はもう話し合っていたので、談笑タイムになった。修学旅行の一部のようで楽しかった。そこに美樹がいたのも嬉しかったし……。
「ところでさ」
しばらく談笑した後、アマンダが不意にニヤつきながら喋り出した。
「何か言う事があるんじゃないの、ロベルト、カレン?」
「「えっ!?」」
ロベルトとカレンは同時に大きな声を出した。お互いに顔を見合わせ、赤くなっている。
「え……。ちょ……、もしかして……」
俺が
「ええええーーーー!?」
俺は思わず叫んでしまった。
「ホント、時間の問題だったね」
美樹が言った。いやでも、改めて報告されると本当にビックリだ。ギャルゲーの主人公と乙女ゲームの主人公がねぇ……。
「……何なら、もう一部屋借りる?」
「やめい!」
俺の言葉に美樹が突っ込み、頭を引っ
その後、しばらくロベルトとカレンは俺たちの話の肴になるのだった。
◇
翌朝。
俺たちはラザード精神クリニック地下の施設に移動した。
「ショットガンとゴム弾を用意しているよ」
「ありがとう、ラザードさん。前の奴はベラの宿に置いてきてしまったので」
俺は久しぶりにケビンの訓練を受けたが、途中で切り上げられた。きっとすぐに転移してしまうので、最小限で良いだろうという判断だ。
訓練を終えて全員で一休みしていると、転移の時が訪れた。
「ラザードさん、行ってきます!」
「ああ、頼むぞ!」
俺はショットガンを含む荷物を持ち、転移に備えた。
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