第9話 不安の種

「大丈夫ですか?」


 座り込んでいる冒険者の方に手を差し伸べる。

 しかし、冒険者と言えばゴツゴツした装備をして筋肉隆々のイメージだったが、この人はすごく中性的な見た目で細身だ。


「あ、あ…」


 怪我はないようだが、さし伸ばした手にを掴むことはなく声を吃らせる。


 ふむ、仕方ないだろう。体を危険に晒していたのだ。

 次に脳天に矢が刺さってる男の冒険者の方に行く。


 …死んでいるようだ。


 人の死を間近に見るのは初めてだ。

 …いきなり不快感が襲い、喉から異物がせり上がってくる。


「…軟弱なやつじゃな」


 その周りには俺が殺した賊が転がっている。

 人を殺すとはこの人の未来を奪い取ってしまう、という事だ。

 いくら悪党とは言え、その事実は変わらない。

 この不快な気持ちは中々慣れないんだろうな。

 否、慣れては行けないんだろう。

 しかし、俺が助けなければここに生きて「大丈夫ですか?」


 座り込んでいる冒険者の方に手を差し伸べる。

 しかし、冒険者と言えばゴツゴツした装備をして筋肉隆々のイメージだったが、この人はすごく中性的な見た目で細身だ。


「あ、あ…」


 怪我はないようだが、さし伸ばした手にを掴むことはなく声を吃らせる。

 仕方ないだろう。

 体を危険に晒していたのだ。

 次に脳天に矢が刺さってる男の冒険者の方に行く。


 …死んでいるようだ。


 人の死をまじかに見るのは初めてだ。

 …いきなり不快感が襲い、喉から異物がせり上がってくる。


「…軟弱なやつじゃな」


 その周りには俺が殺した賊が転がっている。

 人を殺すとはこの人の未来を奪い取ってしまう、という事だ。

 いくら悪党とは言え、その事実は変わらない。

 この不快な気持ちは中々慣れないんだろうな。


 否、慣れては行けないんだろう。

 しかし、俺が助けなければここに生きている人達は死んでいた訳だ。

 あの距離で一触即発の状態だ、加減などしてる暇は無かった。

 これ以上人を殺さない為にも、力を付けなくては行けないな。


「ノルザさん、この近くに街は?」


「あ、えっと、ここからかなり…」


 ならば、この商人が起きるのを待つしかないな。

 かなり距離があるなら俺達がおぶって行くのは現実的じゃない。

 馬は当然の如く殺されているから、この荷車も捨てるしかないな。


 ―――


 商人のグリッドに言葉をかけて、荷車から飛び降りる。

 気休めにもならないが、ないよりはましだろう。

 賊は恐らく奇襲の弓矢や、包囲の方法などを見るに手練だ。

 五対一、絶対的な不利で勝てるわけも無い。

 だが、ただやられる訳には行かない。

 決意し、盗賊に飛びかかろうとした瞬間、賊に何かが物凄い勢いで突進し、頭を貫く。

 何が起こってるのか理解が出来ない。


 次々と倒れていく賊。

 一人、二人と倒れていき最終的には賊は何にやられているかも分からず全員が死んだ。


 自然災害か?魔物の仕業か?

 しかしこうなれば、次は私の番か…。と覚悟したが、何も飛んで来ず、平原の暖かい風が頬を撫でる。

 風が吹いてきた方向を見ると、誰かがこっちに向かってきているのが分かった。




 その三人組は奇妙なパーティだった。

 そのうち二人は子供で、もう一人は、貴族のような高級そうな服を着た赤色の髪の女の人。

 恐らくこの子供たちの護衛であろう。

 そして、その護衛途中で賊を倒してくれた。

 なんと感謝すればいいだろうか。


「大丈夫ですか?」


 なんて考えをまとめようとしていたら、男の子に手を差し伸べられた。

 考えの途中に喋りかけられたものだから、思わず声が吃ってしまう。

 手を取らないと感じた男の子は次に、もう一人の冒険者のナーダの方に向かう。

 そして、人の死を初めて間近に見たのだろう。男の子は吐いてしまった。

 一方の女の子の方は顔を歪めることも無く男の子を見据える。

 ネジが飛んでいるのか、それとも人の死を間近に見てきたのか、感情が表に出ていない。


「ノルザさんこの近くに集落は?」

「あ、えっと、ここからかなり…」


 赤い髪の女、ノルザさんはそう言うと言葉を弱めてしまう。


「では、この商人の人が起きるまで待ちましょう」


 そう毅然と言葉を発する男の子は既に先程の戻してしまった弱々しい姿は無かった。

 とても素晴らしい心を持っているようだ。


 ―――


 商人はその後、直ぐに起きて、俺じゃなくノルザにありがとうありがとうと何回も感謝していた。

 恐らく見た目や服装、年齢などでさっきの魔法を使ったのが、ノルザさんだと思っているのだろう。

 ノルザさんは否定しようとしたが、俺が口に指を持ってきて、シーとサインすると、かなり引き攣った顔でどういたしましてと返していた。

 こんな少年が賊を倒したのか!となれば面倒臭いことこの上ない。

 だが、高級そうな魔法使いっぽい服を着ているノルザさんならば、貴族の子供を護衛中などと誤魔化して面倒事を避けれるだろう。

 一方、冒険者はやっと気力が復活したのか、商人同様、ノルザに感謝をしている。

 しかし、あの冒険者、体格とは似合わない大剣を持っているな。

 重くないのだろうか?


「それでは、行きましょうか」


「はい、ではお二人とも歩けますか?」


 商人と冒険者は、はい、と返事をする。

 商人には悪いが、荷物は置いて行ってもらうことにした。


 総人数五人となったパーティーで近くの街に寄るために歩き始める。

 そして、ノルザさんは商人と冒険者の話し相手となっている。

 その会話に聞き耳を立てていたので、二人がどうゆう経緯でこんな場面に陥ったのか分かった。

 商人、グリッドは最近商人になったようで、ノウハウは兄に教わったようだが、才能がなかったらしく仕事が上手くいかないと悩んでいたところに、高額で荷物を僻地に送る依頼を受けたようだ。

 そして、その護衛を任されたのが体躯に似合わない剣を持っている冒険者、ユニットだそうだ。

 確かにこんな所に荷物を運ぶ依頼をした人は誰か気になるな。

 五.六時間程かかるが、母さんが幻惑魔法を掛けた森も遠くはない。

 少し不安を覚えるが、二人からは特には怪しい雰囲気は感じないため、依頼主の方を気にかけた方が良さそうだ。

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