第6話 別れ

 エリーゼが、朝食を持ってきてくれる。

 最近はフェルが何処かに行ってるので、フェルの席にはノルザさんが座っている。


 そして、運ばれてきたのは、肉だ。

 俺はこの世界に来て卵やパンを食べてこなかったので、この朝食に肉を食う生活は慣れてしまった。

 まぁ、この世界に来て鍛錬の時間が一日の半分を占めてるから、沢山食わないとやって行けないからありがたいのだけど。


「さっ、食べましょ」


 エリーゼの言葉と共にフォークを持って肉を食べ始める。


 うん、いつもの味だ。美味しい。

 しかし、これでエリーゼが作るご飯がしばらく食べられないとなると、悲しいものがあるな。


「あ、そう言えばフェルも学校に通っても大丈夫?」


「ん?あぁ、大丈夫よ。そう言うと思ってちゃんとノルザに言っておいたの。ノアはフェルと出会ってかなり成長したし、これからもフェルから色々学んで強くなって欲しいしね」


 流石は、我が母親だ。

 ノルザもうんうん、と頷いている。


「それで、話題に出るフェルとは誰なのですか?まさかノア様の弟妹ですか?」


「あぁ、フェルはフェンリルだよ」


 グライドが、言うの忘れてたなぁと付け足して、なんでもないかのように話した。

 外部の人間にフェンリルの事を言っても大丈夫なのか?


「はは、フェンリルですか。言えない事情があるのならこれ以上は詮索はしませんよ」


 こりゃ、ノルザさんは信じてないな。

 なにか隠してると思われたようだ。

 それから、適当な雑談をした後に朝食は終了した。


 ―――


 さて、今日でしばらくこの家ともおさらばだ。

 この世界には転移魔法というとんでもなく便利な魔法があるらしいので、思ったよりも早く帰れそうだが、それを習得するのに時間がかかるし、何よりこの世界の学校に馴染まないといけないから長くても数年はかかりそうな予感がする。


「では、行ってきますね」


「えぇ、頑張ってね」

「おう!頑張れよ!!」


「今度父さんに会った時には負けを覚悟しといてくださいね」


 父さんは笑いながら返事をした。

 学校に通わせてもらうのだ。

 必ず父さんより強くならないと。


 そして、母さんの方を向いて…。


「転移魔法を早く習得して、母さんの料理食べに来ますね」


 母さんも同じく笑う。

 …覚えたら毎朝エリーゼの料理を食べに、転移魔法でここに来るのもありかもしれない。


「では、ノア様、フェル様行きましょうか」


 馬車が無いのが申し訳ないですが…、と言うノルザだが、俺は日々体力を付ける鍛錬も怠らなかったから大丈夫だろう。


「行ってきます!」


 そう2人に言うと、2人は手を振って見送ってくれた。


 ―――


 歩いて一時間弱経ったが、まだ森を抜ける様子は無さそうだ。


「ノア様はおふたりの過去を教えてもらいましたか?」



 暫く沈黙が続いていたが、唐突にノルザが話しかけてくる。

 ふむ、二人の過去…か。


 ー出発の2時間程前ー






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