♯2 だから返品しないでっ!
「ところでお兄ちゃんはなんで奴隷買おうと思ったの? 一発逆転なら別に冒険者とかでもよくない? せっかくの異世界だし」
「……」
「ねぇねぇ、書類ばっかり書いてないで教えてよー」
「……」
「なんで無視するの? ねぇねぇ」
奴隷の妹が俺に寄りかかり、書類を書く邪魔をしてくる。
「うぜぇぇえええええええ! 今集中して書いてるんだから邪魔するなっ!」
「だから、そんな書類書いても無駄だって。無駄無駄、無駄なことはやめて私と遊ぼ?」
「……お前、一応俺の奴隷だよな? ちょっと自由過ぎない?」
「だって、お兄ちゃんの奴隷だし。どうせお兄ちゃんのことだから私のことどうのこうのなんてできないでしょ?」
なめられてる! こいつ完全に俺のこと舐めくさってる!
「ねぇねぇ、宿屋の従業員さん。そんなことやめて、私と遊ぼうよ」
「うるさい、8日以内に書類を完成させて司祭様のところに行かないといけないから忙しいんだ」
「なんでそんなに一生懸命になるかなぁ。それで、なんで奴隷買おうとしてたか教えてよ」
「……」
「えーー! また無視する!」
「実の妹に言えるか馬鹿っ!」
「実の妹じゃないもん、今は血のつながりないもん」
「つ、都合のいいやつ……!」
「いいから早く教えてよ」
「……仕方ない、いいか耳をかっぽじってよく聞けよ」
「ふむふむ」
「……それはな」
「この異世界でハーレムを作るためだ!!!」
開き直って声高らかに宣言してやった!
よく考えたらこいつに何を言ってもノーダメだし何も気にする必要はなかった!
「……」
「……」
「うわぁ……」
「……ガチで引いてるんじゃねーよ、自分から聞いといて」
「お、お兄ちゃん頭大丈夫? お医者さん行こ?」
奴隷の妹がすごく優しい声色で俺に声をかける。
「お前に心配されてるのが一番ムカつく」
「だってハーレムだよ? あの
妹にボロカスに言われる俺。
「……今、一刻も早くお前を手放すことを心に誓ったわ」
「だから! そんなお兄ちゃんのそばにいられるのはこの私だけとは思わない!?」
「誰がお前みたいなちんちくりんと一緒にいられるか!」
「そのちんちくりんを良いって買ったの誰だっけ?」
「……」
「もしかしてお兄ちゃんってロリ……」
「お前もう黙れっ!!」
「よくいるよねー、大きいのが好きとかいって実は……みたいな逆ムッツリ」
「奴隷のくせに奴隷のくせに!」
「はい、
ムカムカムカムカ!
ダメだダメだ! こいつと一緒にいると一向に書類が進まない!
どこか別のところで書くことにしよう!!
「あれ? お兄ちゃんどこいくの?」
「ちょっと町の図書館に行って書類書いてくる。お前うるさいし」
「ま、待ってよ! じゃあ私も一緒に行くよ!」
「そのボロ切れの服で一緒に歩けるかっ!」
「じゃ、じゃあ私に服を買ってよ! そうだそうだ! お買い物に行こ? これから一緒に生活するんだからいいでしょ?」
「……金がない」
「えっ?」
「奴隷を買うのに全財産使ったから金がない」
「……お兄ちゃんってアホなの?」
むかちーん!
「……じゃあ行ってくる!」
「ま、待って! 待ってってば! 私のこと置いてかないでよ! お願いだから置いてかないで! なんでも言う事聞くから!」
「……今何でもって言った?」
「う、うん」
「本当に何でも?」
「うん……。け、けどエッチなことはほどほどにしてね……」
「じゃあ、俺が帰ってくるまでそこで待ってろ」
「ひどいっ!!!」
※※※
「よしっ、やっぱりあいつがいないと結構進むな。あとは印鑑押して、司祭様のとこに持っていくだけだ」
日は落ちて、辺りはもう真っ暗になっていた。
「ただいまーって、あれ? 部屋の
自分の部屋の前に立つがどこか異様な雰囲気を感じる……。
嫌な予感がするが、意を決して扉をガチャっとあけてみた。
「お兄ちゃんが置いてったお兄ちゃんが置いてったお兄ちゃんが置いてったお兄ちゃんが置いてったお兄ちゃんが置いてったお兄ちゃんが置いてったお兄ちゃんが置いてったお兄ちゃんが置いてったお兄ちゃんが置いてったお兄ちゃんが置いてったお兄ちゃんが」
ひぃいいいいい!!
「お兄ちゃんが置いてったお兄ちゃんが置いてったお兄ちゃんが置いてったお兄ちゃんが置いてっ」
「やばいやばいやばい! 早く目を覚ませ!」
ばちーんっ! と妹のほっぺたを叩く!
「いったーーー!」
「しょ、正気になったか!?」
「あれ? お兄ちゃんがいる……」
「……これ何の真似? 普通にお前やべぇやつなんだけど……」
「お兄ちゃんが私のことを置いてくから呪いを込めてた」
「怖い怖い怖い、早くクーリングオフしないと呪い殺される」
「だから、私のこと返品しないでって言ってるでしょ!」
「こんな姿を見せられたら
「……それでその書類は書き終わっちゃったの?」
「おう、ばっちり! あとは印鑑押すだけ!」
「……そうなんだ」
妹がつまらなそうに唇を尖らせる。
「じゃそろそろご飯食べようよお兄ちゃん。私お腹すいたよ」
「金がないからそんなものはない」
「えっ!?」
「だから金がないからそんなものはない」
「うそうそうそ! じゃあ食事はどうするつもりだったの!?」
「三日後に給料だからそれまで公園の水で我慢するつもりだった。腹減ったなら公園に行くぞ」
「そんなぁ! 奴隷にも人権があるんだよ? そんな非人道的行為が許されるはずないよっ!」
「ふーん、じゃあ俺一人で行くからいいや」
「えーーー! 待って待って! なんでそうやってすぐ私のこと置いてこうとするの!?」
「だって、お前公園の水は嫌なんだろ?」
「嫌とは言ってない! 私も公園のおいしい水を飲みに行きます! 行きますので置いてかないで!」
俺がそう言って外に出ると、ボロ切れ一枚に身を包んだ妹が俺のあとを必死に追いかけてきた。
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