9 いざ行かん!魔王のもとへ
ミアを連れて帰るのにも一苦労するかと思っていましたが。まさか、ギャラリーがいたおかげで帰りやすくなるとは。
私が「帰る」と一言いうと、王族に取り入りたかった家々の生徒たちがドッと彼らに押し寄せたのです。
さて。
帰宅後の私は、現在自室にて支度をしております。
ええ。もちろん、魔王様のもとへ行くための支度です。
「イバン。これだけでいいかしら?」
「そうですね……少し足りない気もしますが、何とかなるでしょう」
「いや、イバン。お嬢様に何仕込んでるのよ⁉」
イバンは、我が家の従者です。私が乗る馬車の馭者をよくしてくれます、主に護衛のためですが。
彼は細身ですが体術を得意としているので、体術だけなら王宮の騎士団長にも負けないとか。まあ、暗殺が専門らしいので――絞め落とせば無敵だそうです。
そんな彼に、魔王城までで必要になりそうなモノを見繕ってもらっているところです。
ミアが止めようとしていますが。
私についてくるなら……ミア、あなたにも必要なんだけれど?
「姫さま⁉ 出て行くって本当ですか?」
「そんなぁ……」
「ひめさま……」
あら。ドタバタと部屋の外がうるさいと思っていたら、みんな持ち場から離れてきたのですか。流石、我が家の使用人。耳がはやいですこと。
みんなが『姫』呼びなのは、私これでも一応継承権を持っているからですの。一位はもちろん、先程までキャンキャン言っていた駄け――
そう。お父様って、実は王弟なんですの。
だから、
使用人たちも大切な我が領の領民。彼らと離れるのはさみしいですが……永久に会えないわけではないので、一時の別れだと自分自身にも言い聞かせます。
そこへ、支度を終えたイバンとヘトヘトのミアに呼ばれました。
「お嬢様。支度は整いました」
「……いつでも、ご出立おともイタシマス……」
心なしか、ミアの魂が抜けていくように見えるのは気のせいかしら?
「みんなさん、私は立派な悪役になってきますからね‼」
「「「「姫さま! いってらっしゃいませ」」」」
使用人たちとあいさつをかわし、お父様の待つ執務室へと向かいます。
あとは、お父様とヘラルドお兄様へのご挨拶だけ。あ、母は私が三つのときには病で亡くなりましたの。それに関してのさみしさは、一度も持ったことがありません。これも大切に育ててくださったお父様とヘラルドお兄様、使用人や領民たちのおかげですわ。
さあ、ご挨拶をして。彼らと私(の退屈しのぎ)のために、魔王様のもとへ行きましょう!
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