8 新しいゲーム

「まっ待ってくれ‼」

「この子なんて廃嫡にするから‼ 出ていかないでおくれ‼」



 おおかた、警備兵が学院に連絡を入れたのでしょう。その学院のトップから王宮に話が行き、陛下がたがこんな学院の最上階へいらしたのですね。ゼーゼーハアハア苦しそうですが。王子殿下が来るのも遅かったので、わりと時間的余裕はあったかと思いますわ。

 あ、お年なのを忘れていましたわ。


 

其方そなたの望みが王妃の座なら、婚約者を第二王子に」

「――⁉ 父上⁉」



 お年なのにがんばられて……スペアまで、無事お生まれになったのはすごいと思いますが。それとこれとは別です。


 

「お断りします」

「「「⁉」」」

「だって、あんなをお持ちの方と、国なんて支えられませんわ」

「「「イかれた性癖?」」」

「あら、ご存じありませんの? あの方、私を見つけては『その華奢きゃしゃ御御足おみあしで踏みつけてください』や『その折れてしまいそうな細腕で張り倒してほしい』等と、毎回毎回飽きることなく仰ってきて……正直、気持ち悪いですわ」

「「「……」」」



 決して、自分のことを棚に上げているわけではないのですよ?

 


「でっでは! 別の好いた者がいるのなら、地位がないものでも婚姻を認める‼ 土地が欲しいというのなら、領地を! とととにかく! この国に残ってくれ‼」

「宝石でもドレスでも愛人でも用意させるから‼」



 少々、必死すぎませんか? あなたがたの当初の目的は、フェリクス殿下バカ息子との婚姻だったはずでは?

 彼らが私の疑問に答えるはずもないので、もちろん私の答えも決まっております。


 

「お断りします」

「「「‼」」」

「そもそもですね。私、欲しいものはすでに手に入れていますので。全くもって困ってはいませんし。第一、私この国は我が家と領地領民以外は要りませんの。自分たちで何もせず、見栄しか張らないこの国王族なんて――大嫌いですのよ」



 そんな大袈裟に膝から崩れなくても、よいのでは? それよりも、なぜ自分達優位でことが進むと思うので……ああ、だからお父様が重たい腰を上げられたのですね。やっと、納得しましたわ。

 ならば。私もお父様と同じまではいかなくても、お力添えできるように新しいことを始めましょうか。何がいいかしら……。



「そうです! 私、いいことを思いつきましたわ」

「いいこと?」

「えぇ。私、この世の魔王なる者に嫁ぐことにいたします」

「「「は?」」」

「そうすれば、あなた方など目では無いでしょう? 全てを潰して差し上げますわ。飽きずにすみますし、フフ」



 内乱で領民たちを巻き込みたくないですし。外からなら、調整しやすいでしょう。それに、外から潰すことさえできれば――お父様とヘラルドお兄様なら中から再建しやすいでしょうし。

 そうと決まれば、こんなところで油をうってる暇などありませんわ‼︎ さっさとミアを連れて帰りましょう!



「ミア! 帰るわよ」

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