5 楽しいたのしい学院生活
どうやら、うまくいっているのは王子の婚約者でおジャマ要員の公爵令嬢が動いているかららしい。らしいというのは、隠してもない悪意を向けてくる女子生徒たちの噂する声が耳に入ってきたから。
なんで? 彼女も転生者とか? でも、なーんか様子がおかしいのよね。
それより、王子と恋仲になったけど……おジャマ要員的には婚約者いらないのかな? 普通、「あんた何様よ⁉」とか「身分も釣り合わないのに、婚約者でもない人にベタベタと」とか言ってきそうなんだけど。
そんなことを考えていたからなのか。
初めて見た公爵令嬢とその他大勢を見て
……せっかくだから、足ひっかけられた! とか言って、隣でコケてみる? いじめにたえるヒロインっぽく。あれだけ取り巻きいたら、誰かのせいにはできるでしょ?
思ったら即行動。ヒロインだからいけるでしょ? って思いが強いから。
そして、取り巻きよりすこし前方を歩く公爵令嬢が真横に来た瞬間……
ドテンッ!
あれ?
確かに、すっ転んだけど……おジャマ要員の足にぶつかった。よね? え?
本気で顔面から転倒し、痛い鼻をおさえなが状況確認していたら、思わぬ方から声がした。
「あら。猫でも走っていたかしら」
クスクスと聞こえる笑い声の合間から降ってきたのは、公爵令嬢本人の嫌味。
あれ? わたし、本気でいじめられてる? もしかして、これはラッキーな状況なんじゃない⁉︎ 乗るしかないわ‼
「ひっひどいですぅ~。マルティナさまぁ」
「「「……」」」
な、なんで周りのやつら、無言なのよ⁉ って、おジャマ要員はもう行こうとしてるし! え、無視なの? スルーなの? ん? いじめなら、これでいい? まあ、いっか。泣きマネしてたら、そのうち王子サマが来るでしょ。
そんなことを考えていると、「みなさん、次の講義に遅れますわよ」とだいぶ離れたところから紅の髪が風にゆれるのと同時に流れてきた。歩くの速くない?
汚いものでも見るような目でわたしを見ていたその他大勢は、その声とともに去っていく。
残ったのは、泣きマネするわたし。
あれ? 王子遅くない?
それ以来。
マルティナを見つけては、突っかかりに行き。本当に足をひっかけられ。
王子の目を盗んでわざわざ一人になり、いじめを待つ。すると、バシャッと頭上から水が落ちてきたり。すれ違いざまに肩をぶつけられ、尻もちをついた先の泥をかぶったり。
体を張るわたしを、取り巻きにやらせているマルティナが堂々と見物していた。隠れもせずに。
……ガチで、いじめを楽しんでいるように見えるのよ。あの顔。
王子は助けてくれないし――目を盗んでわざわざ一人になってるわたしも悪いけど。
ヒロインって、ここまで本当に体を張る必要あったっけ?
だんだん不安になってきたわたしは、なるべく一人にならないようにしてみたんだけど……。
気づいたら、一人にさせられているのよ。
そして。
絶対、いるのよ。マルティナ。
怖すぎて、ヒロインムーヴもやめたわ。
やめたのに、やらされるのよ。
だから、王子に泣きついたのよ。
「マルティナが怖い」って。
それを聞いた王子は、「このままアイツを悪に仕立てあげて、糾弾しよう」って言いだしたの。
それなら、このままヒロインとして断罪できるからゲーム通りでいいんじゃない? って、思って。王子の話に乗ったの。
それがまた、いけなかったみたい。
二人とも、マルティナの本当の怖さをわかっていなかったみたいで。
……ガチで、酷いめにあいかけたわ。
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