(2)
朝、目覚めても、ぜんぜんスッキリしない。
目覚めるたびスタートに戻るのは、一生終わらないすごろくをしてるみたい。
武田君と協力して、クラスメートのみんなの行動を自宅まで追跡するという無茶苦茶なことをして、今日で15日目――。
つまり、15回も、5月12日を繰り返している。
その結果、分かったのはクラスメートが学校から自宅に行くまで、事件や事故に巻き込まれた人はいないということ。
もちろん何もないことは、喜ぶべきことなんだけど……。
「はぁ……」
ため息をすると幸せが逃げる。分かってるけど、仕方ない。
今の状況をたとえれば、暗闇の中で明かりもつけずに手足をジタバタと無闇に動かしているようなもの。
憂鬱でなかなかベッドから起き上がれなかった。
今日もまた5月12日が繰り返されるって思うと、起きたくない。
授業にしたって、内容は全部覚えてる。
真面目に授業を受けてノートを取っても、翌日には何事もなかったようにまっさらになってしまう。
今日1日くらい休んでもいいよね……。
私は頭まで布団をかぶった。
夢を見た。
それは幼い頃の断片。
私は家の近所の住宅街にいた。
綺麗な夕焼けを、ぼーっと見つめる。
その時、嫌な予感がして後ろを振り返った――。
数百メートル後ろに黒い点が見えた。
黒い点はみるみる大きくなっていき、住宅街を飲み込んでいく。
「!?」
私は走った。
それでも真っ黒い世界はどんどん近づいてくる。
走りすぎて息が苦しい。
胸が焼けるように熱かった。
「あ……っ!」
石につまずき、転んでしまう。
逃げなきゃいけないのに、腕と足に力が入らなくって起きられない。
私は真っ黒い世界に飲み込まれる――。
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