29 揃える

 リサとリトルトーキョーで買い物をした。

 祭りのイベントに備えるため、グッズをそろえたんだ。


 たいていのものは通販にしたけど、これだけは肌触りとか柔らかさとか確かめたくて。


「お祭、会社の社長さんともくるの?」

「あぁ。おまえと来る前の日にな」


 何も祭りは一日じゃない。社長と来てカノジョと来ないんじゃさすがに気まずすぎるだろう。


「よっぽど好きなのね」


 リサはブラウンの髪を揺らして笑った。

 同い年で、ずっと「かわいい」って思ってたけど、こうやって見ると大人の色気っていうか、……、年相応の魅力が身についたよな。


 もう十年近く付き合ってるもんな。そりゃ変わるよな。

 それだけおれも老けた……、いや、ここは、大人の渋さが身についたってことにしておこうか。


「祭りってなんか心はやるだろ?」

「ううん、祭りじゃなくて、社長さんのことよ」


 へっ?

 ちょっとフリーズしてしまった。

 そんなおれにリサはまた笑う。


「ゲイとかそういう意味じゃなくて、人として、よ」


 や、そりゃそうだろ。恋愛じゃおれは女の子にしか興味ない。

 ってかリサがいうほどに、おれリカルドの事、好きなのか?

 今回のことだって単に堅物なリカルドをちょっと戸惑わせてやりたいだけなんだけど。


「別にそこまで好きってわけでもないよ」

「わざわざイベントのためのグッズまで買いそろえてまで連れ出そうとしてるのに?」


 あ、わかった。

 これ、やきもちだなっ。

 やっぱかわいいぞおまえ。


「おれはおまえ一筋だぞ」


 ぎゅっと肩を抱くとリサの頬が赤くなった。


「もう、だから、そういう意味じゃなくて」


 とか言いながら照れてるリサに、気分上々だ。

 よーし、今日のデートは奮発するぞ。

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